相続登記申(法定相続・遺産分割協議)請の登記原因証明情報
平成17年3月7日施行された改正不動産登記法によって、登記申請の添付書類の呼び名とその内容が変わりました。
登記原因証明情報の「情報」という言葉は、オンラインで登記申請をすることを前提に、オンラインで情報を送信するということから「情報」という言葉を使います。
改正前は、書類を提出する、登記所に持っていくことから「書」という言葉を使っていました。
登記原因証明情報は、一部を除いて、ほぼすべての権利に関する登記で、登記の原因となる証明情報を提供しなければならなくなりました。
相続登記(不動産名義変更)の場合、改正前は、「相続を証する書面」という言葉を使っていましたが、他の登記と同様に、「登記原因証明情報」という言葉に変わりました。したがって、「相続を証する書面」一式が「登記原因証明情報」ということになります。相続登記の場合は、他の登記と異なり、特別に「登記原因証明情報」という書面を作成しません。(ただし、遺贈では登記原因証明情報という書面を作成する場合もあります。)
売買、贈与、交換などの所有権移転登記の場合、改正前は、必ずしも「原因証書」を添付する必要がありませんでしたが、改正後は、所有権移転登記の原因を証明する書類の提供が必要になります。
これは、確かにその登記が実体を伴っている、ということを申請人において証明する必要があるということです。
相続登記申請における登記原因証明情報には、相続関係説明図と遺産分割協議書があります。
厳密には、この場合の登記原因証明情報は、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本一式と法定相続人全員の戸籍証明書(戸籍謄本)です。
遺産分割協議による相続の場合は、このほかに遺産分割協議書が必要です。
相続関係説明図は、被相続人(登記名義人で死亡した人)と法定相続人との関係を図にして表示したものです。
この相続関係説明図を作成、添付することによって、登記完了後に戸籍謄本や除籍謄本などの相続証明書を登記所から返却してもらうことができます。
もっとも、相続登記申請をオンラインでするときは、必ず、相続関係説明図を添付する必要があり、これをPDFファイルにして添付、送信します。
法定相続分による相続登記の場合は、相続関係説明図(厳密には、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本一式と法定相続人全員の戸籍証明書)が登記原因証明情報になります。
遺産分割協議による相続登記の場合は、相続関係説明図(厳密には、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本一式と法定相続人全員の戸籍証明書)のほかに、遺産分割協議書が登記原因証明情報になります。遺産分割協議書には、印鑑証明書を付けることになっています。
したがって、遺産分割協議による相続登記の場合は、相続関係説明図(厳密には、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本一式と法定相続人全員の戸籍証明書)、遺産分割協議書が登記原因証明情報になります。
遺産分割協議による相続登記申請をオンラインでするときも、相続関係説明図をPDFファイルにして添付、送信します。
オンライン申請の導入当初、遺産分割による相続登記を申請する場合、相続関係説明図のほかに遺産分割協議書をPDFファイルにして添付、送信することとされていました。
現在は(平成26年頃より)、遺産分割による相続登記の場合であっても、法定相続による登記と同様に、相続関係説明図のみをPDFファイルにして添付、送信することになっています。
相続登記の登記原因証明情報のまとめ
法定相続分による相続登記(法定相続)
A 登記原因証明情報
(1)被相続人の出生から死亡までの除籍謄本一式
(2)法定相続人全員の戸籍証明書(戸籍謄本)
または
B 登記原因証明情報
(1)相続関係説明図
相続関係説明図を提出する場合であっても、上記(1)除籍謄本一式と(2)戸籍証明書を提出します。相続関係説明図を作成することにより、上記(1)除籍謄本一式と(2)戸籍証明書を登記所は返却してくれます。
このほかに、被相続人・相続人に関する書類として、次の書類を登記所に提出します。
(1)被相続人の住民票の除票(本籍・筆頭者の記載が必要)(登記上の住所と死亡時の住所を関連付けます。)
(2)相続人の住民票(登記名義人となる相続人の住所証明書として提出します。)
遺産分割協議による相続登記
A 登記原因証明情報
(1)被相続人の出生から死亡までの除籍謄本一式
(2)法定相続人全員の戸籍証明書(戸籍謄本)
(3)遺産分割協議書
または
B 登記原因証明情報
(1)相続関係説明図
相続関係説明図を提出する場合であっても、上記(1)除籍謄本一式、(2)戸籍証明書と(遺産分割協議書)を提出します。相続関係説明図を作成することにより、上記(1)除籍謄本一式と(2)戸籍証明書を登記所は返却してくれます。
このほかに、被相続人・相続人に関する書類として、次の書類を登記所に提出します。
(1)被相続人の住民票の除票(本籍・筆頭者の記載が必要)(登記上の住所と死亡時の住所を関連付けます。)
(2)相続人の住民票(登記名義人となる相続人の住所証明書として提出します。)
(3)法定相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印した印影と一致していることが必要)
上記の登記原因証明情報では、法定相続人のうち「相続放棄(家庭裁判所の手続き)」をしている相続人がいる場合、家庭裁判所発行の「相続放棄申述受理通知書」が必要となります。
被相続人の住民票の除票は、戸籍の附票(住所が記載されている。)でも代用できます。この書類で、登記上の住所と死亡時の住所を関連付けます。これは、登記上の名義人が、今回申請する被相続人と同一人物であることを証明するためです。もし、登記上の氏名が死亡時に変更している場合、氏名が変更していることも証明する必要があります。
その他、相続登記の「登記原因証明情報」:相続登記のケースごとの具体的な書類を参考にしてください。