遺産分割調停をする前に、できるだけ遺産分割協議で解決できることを検討(私見)

遺産分割調停をする前に、できるだけ遺産分割協議で解決できることを検討(私見)

遺産分割調停とは、被相続人の遺産について、基本的には、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)が上手くいかない場合に、家庭裁判所で遺産分割の話し合いをすることを言います。
詳しくは、相続登記のための遺産分割調停申立方法と問題点を参考にしてください。
このページでも説明していますように、遺産分割調停を申立てる場合、次の問題点があります。

遺産分割調停の問題点

  1. 遺産分割調停は、相続人全員で行わなければならない。
    知らない相続人を含めて相続人が20人いれば、この20人で遺産分割調停をする必要があります
  2. 相続分譲渡を選択する場合は、注意が必要
    相続人の中で、家庭裁判所に行くのが面倒なので、自分の相続分を他の相続人に無償譲渡する場合も考えられますが、資産価値の高い不動産の場合、贈与税の対象となります。
    安易に考えてはいけない相続分の譲渡(注意点)を参考にしてください。
  3. 遺産分割調停を申立てるための書類の準備を申立人がすべて行う必要があること
    家庭裁判所に提出する書類の収集と申立書などの作成が大変である。
  4. 申立から調停成立までの期間は、約6か月。場合によっては、約1年。
    家庭裁判所での遺産分割調停の手順を参考にしてください。
  5. 遺産分割の方法は、基本的に、法定相続分を基準に話し合われる。
    遺産分割方法の話し合いを参考にしてください。
  6. 調停が不成立の場合、審判に移行して、再び、遺産分割の審理が行われるので、さらに、解決までの期間が延びることになる。
    遺産分割調停や審判で解決する期間が延びるほど、相続税の申告・納税の問題が生ずることになる。遺産分割の協議や調停が長引くと相続税の問題を参考にしてください。

遺産分割は、できるだけ遺産分割協議で解決

遺産分割調停では、前述しましたように、問題点が多いので、可能な限り遺産分割協議で解決するようにします。単に、遺産分割協議が上手くいかないからと言って、遺産分調停があるので、これで解決すればよい、と考えるのではなく、できるだけ、遺産分割協議で解決するには、どうしたらよいかを様々検討するようにした方がよいでしょう。

遺産分割協議で解決した方がよい事例:相続人が多数いる場合

資産価値が低く、知らない相続人を含めて、相続人が多数いる場合

事例
不動産の評価価格:200万円
知らない相続人を含めた相続人の人数:20人(法定相続分に相当する金額:一人当たり10万円)

祖父母名義の不動産を孫など親族が管理している場合、管理者としての責任(道義的責任)から、祖父母名義の不動産を早期に相続登記したいと考え、知らない相続人を含めて、相続人全員に相続登記の協力を求めることは、よくあることです。

「知らない相続人」は、資産価値が低い場合、「わざわざ、家庭裁判所には行かない。面倒だ。」で調停は成立しない、審判となると、解決まで時間がかかることになります。
結局、法定相続分を基準に、換価分割をするか、代償分割となります。
一人の相続人が資産価値の低い不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払うという遺産分割調停(審判)の結果となります。

そうであるならば、遺産分割調停ではなく、遺産分割協議で解決しても同じことと言えます。さらに言えば、やり方によっては、裁判上の代償金の額よりも低く抑えて、遺産分割協議が成立する可能性もあります。
疎遠な・面識のない・知らない相続人への相続登記等の協力要請文書(手紙文例)を参考にしてください。

上記の事例で言えば、不動産の評価価格:200万円、知らない相続人を含めた相続人の人数:20人の場合、一人当たりの法定相続分に相当する金額は、10万円です。ですが、もし、不動産を管理している相続人の一人が他の相続人に対して一人当たり10万円を支払うことになれば、管理している相続人が、苦労して相続登記をする意味がありません。これを遺産分割調停で解決しようとすれば、不動産を管理している相続人が申立人となれば、他の相続人に対して一人当たり10万円を支払うことになるので、この相続人にとっては、何の得にもならないことになります。

この事例の場合で、遺産分調停の申立を司法書士に依頼(申立書の作成依頼)をすることになれば、約10万円を支払うことになりますし、これを弁護士に依頼することになれば、着手金を含めて約50万円以上を支払うことになります。

このような場合、遺産分割協議で解決することにより、他の相続人に対して代償金としててでなく「協力金名目」で支払うことにすれば、支払う金額を低く抑えることができます。

また、特に資産価値の低い不動産を所有していたところで、固定資産税の支払いを毎年行うことになりますので、「協力金名目」で支払うこともなく、単に、名義変更(相続登記)の協力を求めるということも考えられます。

実例(2023年)
相続人の人数:20人、資産価値:200万円、「協力金名目」の支払い:あり、相続登記完了までの月数:6か月、相続登記完了に要した費用(合計):20万円(戸籍除籍謄本などの収集(相続人調査)、各相続人への文書の送付を含む)。

資産価値が高いが、知らない相続人を含めて、相続人が多数いる場合

事例
不動産の評価価格:3,000万円
知らない相続人を含めた相続人の人数:10人(法定相続分に相当する金額:一人当たり300万円)

この事例の場合、資産価値が高いので、知らない相続人を含めた相続人に対して支払う金額を、ある程度決めておいた方がよいでしょう。代償金として、このくらいなら支払ってもよいと思う金額です。

このように資産価値の高い不動産の場合も、まずは、遺産分割協議で解決できるように検討します。
知らない相続人を含めた相続人の人数が10人の場合、法定相続分に相当する金額は一人当たり300万円ですが、不動産を管理している相続人が、遺産分調停の申立人となれば、金銭的には、調停に要する費用を負担することになりますし、この人は、他の相続人が受け取ることになる300万円よりも、結果的には低い金額を手にすることになります。場合によっては、不動産を売却しなければ、他の相続人に金銭の支払いができない場合も考えられます。

この事例で、遺産分調停を行った場合、申立人が代償分割の代償金として支払うことができなければ、換価分割で、不動産を売却して、金銭で分配することになります。

そうならないためには、遺産分割調停ではなく、遺産分割協議で他の相続人に支払うことになる金額を低めに抑えて他の相続人と交渉することがよいでしょう。
この場合、手間暇はかかりますが、直接、他の相続人に面会して交渉する方が解決しやすくなります。

この方法で、どうしても遺産分割協議で解決できないようであれば、遺産分調停によることになります。

公正証書遺言書の作成

前述しましたように、資産価値の低いものであれ、高いものであれ、知らない相続人がいるいないにかかわらず、遺産分割調停までしなければ、相続人の誰が相続するのかが確定しないようでは、当の相続人が苦労することになります。
このようなことにならないためには、公正証書遺言書を作成することにより、相続人間の争いや、知らない相続人の問題を回避することができます。
遺言書の作成は、公正証書遺言書で作成するのがベストな方法です。

相続登記については、当司法書士事務所にご相談ください。

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