限定承認と不動産相続登記、預貯金の相続手続、(根)抵当権の抹消登記

限定承認と不動産相続登記、預貯金の相続手続、(根)抵当権の抹消登記

【相続登記相談】
限定承認の申立をしようとしています。
相続財産は、不動産と預貯金3金融機関です。
相続債務はあるようですが、現在、請求されておりません。その後、相続債務を請求された場合は、どうしたらよいですか。
このような相続財産の場合、どういう方法で、いつの時点で、相続登記と預貯金の相続手続を行えばよいでしょうか。

限定承認申立ての方法

限定承認申立ての方法は、相続の限定承認の申述(申立方法)を参考にしてください。

被相続人と相続人(申立人)の除籍謄本、戸籍謄本、戸籍の附票など戸籍関係書類の取得

限定承認申立てでは、被相続人と相続人(申立人)の除籍謄本、戸籍謄本、戸籍の附票など戸籍関係書類を家庭裁判所に提出しますが、これらの原本を返却しない家庭裁判所(東京家庭裁判所)と原本還付の方法で返却する家庭裁判所がありますので、原本還付ができるかどうかを家庭裁判所にご確認ください。

戸籍関係書類の原本還付を認めない家庭裁判所(東京家庭裁判所)の場合は、限定承認申述が受理された後、相続登記や預貯金の相続手続をしますので、除籍謄本、戸籍謄本、戸籍の附票などを各2通準備する必要があります。
あるいは、これらを各1通用意して、限定承認申立ての前に、法定相続情報一覧図の証明書を取得するという方法もあります。ただし、この取得には、2週間ほどかかるため、限定承認申立ての最終期限を確認した上で、日数に余裕をもたせて取得するのがよいでしょう。

不動産相続登記と預貯金の相続手続をするタイミングは

不動産相続登記と預貯金の相続手続をするタイミングは、限定承認申述が受理された日以降であれば、行うことができます。これは、限定承認申述受理通知書に記載されている日付(受理日)で確認します。

【限定承認申述受理通知書】

限定承認申述受理通知書に記載されている日付(受理日)より前に、不動産相続登記と預貯金の相続手続をした場合、単純承認とみなされますので、注意が必要です。
限定承認申述が受理された日以降であれば、申立人は、限定承認したことが確定されますので、不動産相続登記と預貯金の相続手続をすることができます。

限定承認申述が受理された日以降に、不動産相続登記と預貯金の相続手続をする

限定承認申述が受理された日(受理日)以降、官報に限定承認が受理された旨の公告をします。
この公告の日から2か月後に、相続債務があれば、精算行為をすることになります。

公告の日から2か月経過後、相続債務があれば、相続財産の精算行為を行うことになりますので、相続債務を支払うためにも、不動産相続登記と預貯金の相続手続をしておく必要があります。

相続債務がある場合

債権者から相続債務の申出があった場合、この申出の時期が、債権者が権利を行使することができる日から5年(原則)を経過しているときは、相続債務は、時効で消滅することになります。この場合、申出をした債権者には、相続債務が時効で消滅した旨を伝えます(援用します)。この援用をすることで相続債務は、時効で消滅します。
ただし、「債権者が権利を行使することができる日から5年(原則)」の間に、裁判上の請求や債務の承認などがあった場合には、債務が時効で消滅しませんので、注意が必要です。

相続不動産の抵当権抹消登記について

前述しました「相続債務が時効により消滅した場合、相続不動産に、この元の債権を担保するために抵当権が登記されている場合には、これを抹消登記する必要があります。

相続債務が時効で消滅すれば、抵当権の効力も消滅します(抵当権の付従性)。この場合、登記されている抵当権者に対して、債務が時効で消滅したので、抵当権を抹消登記するように請求することができます(抵当権抹消登記請求権)。
この場合、抵当権者が抹消登記に応じてくれれば、抵当権者から抹消登記に必要な書類を受領して、抹消登記を申請することができます(共同申請)。

なお、抵当権抹消登記をする前に、相続人への名義変更(相続登記)をして、「所有者」として登記しておく必要があります。

抵当権者が抹消登記に応じてくれない場合は、抵当権抹消登記の裁判をし、確定判決(確定証明書付)をもって、「所有者」が抵当権者の協力を得ることなく、単独で抹消登記をすることができます(単独申請)。

相続不動産の根抵当権抹消登記について

前述しました「相続債務が時効により消滅した場合、相続不動産に、この元の債権を担保するために根抵当権が登記されている場合には、これを抹消登記する必要があります。

この根抵当権の抹消登記は、所有者(抹消の権利者)と根抵当権者(抹消の義務者)で登記申請することになります(共同申請)。
したがいまして、所有者(抹消の権利者)として相手方根抵当権者と交渉するには、まず、不動産の相続登記をしておく必要があります。
不動産の名義人(所有者)として登記された後に、根抵当権者に対して、根抵当権を抹消することに協力するように要請します。
根抵当権者に対する協力要請は、基本的には、所有者自身で行います。所有者自身でできない場合は、弁護士に依頼します。(この件につき、司法書士は、基本的には、代理人となることができません。)

もし、根抵当権者が抹消登記に応じない場合は、根抵当権抹消登記の裁判をすることになります。
根抵当権抹消登記の裁判では、元本確定登記(裁判の前に元本確定請求をする。)と、債権の消滅時効による債務の不存在で根抵当権の抹消登記請求権を行使することになります。
この場合、確定判決(確定証明書付)をもって、「所有者」が抵当権者の協力を得ることなく、単独で抹消登記をすることができます(単独申請)。

民法(根抵当権の元本の確定請求)
第三百九十八条の十九 根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
 根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
 前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。

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