過去に作成した遺産分割協議書で相続登記、相続人の住所と押印した実印が異なる時の方法
【相続登記事例】 10年前に遺産分割協議書を作成して、相続登記と預貯金など相続手続を行いました。 相続財産うち一部の土地の相続登記をしていなかったため、今回、相続登記をしようとしています。 ところが、相続人のうち一名が、過去に作成した住所と実印が異なります。 どうしたらよいですか。
【過去に作成した遺産分割協議書】
遺産分割協議書 被相続人 ○○○○(昭和〇年〇月〇日生)の平成〇年〇月〇日死亡による相続が開始したため、その相続人全員において遺産分割協議をした結果、次のとおり決定した。 相続人A○○○○は、次の不動産を取得する。 所 在 諏訪郡○○ 地 番 100番1 地 目 山林 地 積 1000平方メートル (その他の相続財産は省略) 上記の協議が成立したことを証するため、この遺産分割協議書を作成し、各自署名捺印する。 平成〇年〇月〇日 相続人A (住所)横浜市中区関内100番1号 (住所は同じ。) (氏名) ○○○○ (実印) (実印は同じ。) 相続人B (住所)横浜市南区桜ケ丘1丁目1番1号 (住所が異なる。) (氏名) ○○○○ (実印) (実印が異なる。)
過去の印鑑証明書があるとき
遺産分割協議書には、相続人の実印で押印することから、相続人の印鑑証明書が必要です。
過去に作成した遺産分割協議書に、相続人の過去の印鑑証明書があるときは、これを使用することができます。相続登記では、相続人の印鑑証明書の有効期限はありません。(有効期限何か月という規定がないため)
したがいまして、相続人が過去に取得した印鑑証明書があれば、これを使用する、登記申請書に添付して法務局に提出することができます。
次のページを参考にしてください。
過去に作成された古い遺産分割協議書で相続登記ができるのか(相続登記相談)
過去に作成された遺産分割協議書で被相続人(登記名義人)父・母の相続登記の方法(事例)
過去の印鑑証明書がないとき
過去に作成した遺産分割協議書に、相続人の過去の印鑑証明書がないときは、ない相続人の印鑑証明書を取得する必要があります。
過去に作成した遺産分割協議書に記載されている住所と押印された印影と、新たに取得した印鑑証明書の住所と実印が同じであるときは、これで登記申請できます。新たに取得した印鑑証明書に記載されている住所と実印が同じであることを確認する必要があります。
過去に作成した遺産分割協議書に記載された住所と実印が、現在の印鑑証明書の住所と実印が異なるとき
過去に作成した遺産分割協議書に記載されている住所と押印された印影と、新たに取得した印鑑証明書の住所と実印が異なるときは、これで登記申請できません。
これは、住所と実印が異なることから、遺産分割協議書に署名押印した相続人と印鑑証明書に記載された人が別人とみなされるからです。
そこで、遺産分割協議書に記載されている住所と印鑑証明書に記載された住所の経過を証明するために、住民票などを取得して、同一人物であることを証明する必要があります。氏名が変わっているときも同様です。
過去の遺産分割協議書に記載されている相続人Bの住所と実印が、現在の印鑑証明書と異なるとき
上記の遺産分割協議書に基づいて、10年後、相続登記をしようとするときに、相続人Bのその当時の印鑑証明書がなく、現在の住所と実印が異なるときは、次の書類を別途、用意します。
① Bの印鑑証明書
② Bの住民票など(住所の経過を証明するため、住民票除票や戸籍の附票を取得する場合もあります。)
③ 相続人Bが署名、実印で押印する遺産分割協議証明書を作成します。
この遺産分割協議書に相続人Bのみが住所・氏名を記入し、実印で押印します。
見本は、次のとおりです。
遺産分割協議証明書 被相続人 ○○○○(昭和〇年〇月〇日生)の平成〇年〇月〇日死亡により開始した相続につき、同人の相続人全員において協議が成立した平成〇年〇月〇日付遺産分割協議書の下記内容に相違ありません。なお、相続人は、次のとおりです。(長女)A、(二女)B。 相続人A○○○○は、次の不動産を取得する。 所 在 諏訪郡○○ 地 番 100番1 地 目 山林 地 積 1000平方メートル 令和〇年〇月〇日 相続人B (住所)横浜市磯子区栄2丁目3番1号 (氏名) ○○○○ (実印)
(以上、2023年、長野地方法務局諏訪支局で登記完了)
まとめ:過去に作成した遺産分割協議書で相続登記をするとき
過去に作成した遺産分割協議書で相続登記をするとき、過去に使用した印鑑証明書も紛失などしないように保管しておくのがよいでしょう。もし、過去の印鑑証明書を紛失などしてない場合は、改めて印鑑証明書を取得することになります。将来、場合によっては、相続人から印鑑証明書を取得できない場合も想定されることから、相続登記など相続手続が完了した後でも、遺産分割協議書・印鑑証明書を含めて、相続手続書類を大切に保管しておくのがよいでしょう。
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