複数の不動産が異なる持分で登記されている時の相続登記申請書の作成方法
複数の不動産が異なる持分で登記されている場合、相続登記申請書は、1件で作成するのか、複数作成するのか、という問題です。
【大原則】
登記申請書の作成・申請では、「登記の目的」「原因」「申請人」が同一である場合、不動産が複数ある場合であっても、不動産ごとに別々に申請書を作成することなく、複数の不動産をまとめて1件で作成・申請できるのが大原則です。
【事例】
被相続人所有の土地・建物が次のように、複数の不動産が異なる持分で登記されている場合です。
A土地(敷地):所有権全部 B土地(私道・公衆用道路):持分10分の1 C土地(ゴミ置場):持分20分の1 D建物:持分2分の1
この場合、「申請人」=「不動産を取得した相続人」が同一(複数でも可)であることが前提です。
「不動産を取得した相続人」が同一でない時は、不動産ごとに申請書を作成する必要があります。これは、「申請人」が異なるからです。
敷地の登記記録情報
私道(公衆用道路)の登記記録情報
ゴミ置場の登記記録情報
建物の登記記録情報
【相続登記申請書の作成方法】
(1)ABCDの不動産を1件で申請書を作成する方法
(2)ABCDの不動産を、それぞれ別々に不動産ごとに申請書を作成する方法
【司法書士が相続登記申請書を作成する場合(通常)】
(2)ABCDの不動産を、それぞれ別々に不動産ごとに申請書を作成します。
【理由】
(1)ABCDの不動産を1件で申請書を作成する方法
この方法ですと、不動産ごとに「登記の目的」と「持分」が異なるため、法務局の担当官が登記記録に記載するとき、誤記する可能性が高くなるからです。
特に、不動産ごとに持分が異なるため、法務局の担当官が登記記録に記載するとき、不動産ごとに持分を確認して、申請書に記載されている持分を登記記録に転記する際、持分を取り違えることによって誤記する可能性が高くなるからです。
まず、申請人が相続登記申請書を作成するときも、誤記する可能性があります。また、法務局の担当官が誤記した場合、「職権更正」などで、登記記録の記載を訂正してもらう必要が生じてしまいます。
(2)ABCDの不動産を、それぞれ別々に不動産ごとに申請書を作成する方法
この方法ですと、申請書を不動産ごとに作成する必要がありますが(多少の手間)、作成段階で誤記する可能性が低く、法務局の担当官も登記記録に転記する際、誤記する可能性が低くなります。
複数の不動産が異なる持分で登記されている時の相続登記申請書の作成方法
それでは、次の(1)(2)で相続登記申請書の作成をしてみます。
(1)ABCDの不動産を1件で申請書を作成する方法
(2)ABCDの不動産を、それぞれ別々に不動産ごとに申請書を作成する方法
基本的な申請書作成方法は、相続登記申請書の書き方を参考にしてください。
遺産分割協議書には、次のように記載されています。(事例)
遺産分割協議書(一部省略) 相続人○○は、次の不動産を取得する。 A土地(敷地):所有権全部(評価価格:1,000万円) B土地(私道・公衆用道路):持分10分の1(持分の評価価格:30万円) C土地(ゴミ置場):持分20分の1(持分の評価価格:10万円) D建物:持分2分の1(持分の評価価格:100万円)
(1)ABCDの不動産を1件で相続登記申請書を作成する方法
登記申請書(一部省略) 登記の目的 所有権移転(後記不動産の表示に記載のとおり) 原 因 令和○年〇月〇日相続 相 続 人 (被相続人 ○○) (住所)○○○○ 持分後記不動産の表示に記載のとおり (氏名)○○ 添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報 評価証明情報 課税価格 金1,100万円 登録免許税 金44,000円 一部の土地(〇市〇町〇番〇(B土地)、〇番〇(C土地))について租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税 不動産の表示 (A土地:敷地) 所 在 〇市〇町 地 番 ○番○ 地 目 宅地 地 積 ○○・○○平方メートル この価格 金1,000万円 登記の目的 所有権移転 (B土地:公衆用道路) 所 在 〇市〇町 地 番 ○番○ 地 目 公衆用道路 地 積 ○○平方メートル 持分10分の1の価格 金30万円 登記の目的 ○○持分全部移転 持分10分の1 (C土地:ゴミ置場) 所 在 〇市〇町 地 番 ○番○ 地 目 雑種地 地 積 ○○平方メートル 持分20分の1の価格 金10万円 登記の目的 ○○持分全部移転 持分20分の1 (D建物) 所 在 〇市〇町 ○○番地○ 家屋番号 ○○番○ 種 類 居宅 構 造 木造スレート葺2階建 床 面 積 1階 ○○・○○平方メートル 2階 ○○・○○平方メートル 持分2分の1の価格 金100万円 登記の目的 ○○持分全部移転 持分2分の1
(2)ABCDの不動産を、それぞれ別々に不動産ごとに相続登記申請書を作成する方法
不動産ごとに相続登記申請書を4件作成します。
(1/4) 登記申請書(一部省略) 登記の目的 所有権移転 原 因 令和○年〇月〇日相続 相 続 人 (被相続人 ○○) (住所)○○○○ (氏名)○○ 添付情報 登記原因証明情報 住所証明情報 評価証明情報 課税価格 金1,000万円 登録免許税 金40,000円 不動産の表示 (A土地:敷地) 所 在 〇市〇町 地 番 ○番○ 地 目 宅地 地 積 ○○・○○平方メートル
(2/4) 登記申請書(一部省略) 登記の目的 ○○持分全部移転 原 因 令和○年〇月〇日相続 相 続 人 (被相続人 ○○) (住所)○○○○ 持分10分の1 (氏名)○○ 添付情報 登記原因証明情報(前件添付) 住所証明情報(前件添付) 評価証明情報 課税価格 金0円 登録免許税 金0円 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税 不動産の表示 (B土地:公衆用道路) 所 在 〇市〇町 地 番 ○番○ 地 目 公衆用道路 地 積 ○○平方メートル
(3/4) 登記申請書(一部省略) 登記の目的 ○○持分全部移転 原 因 令和○年〇月〇日相続 相 続 人 (被相続人 ○○) (住所)○○○○ 持分20分の1 (氏名)○○ 添付情報 登記原因証明情報(前件添付) 住所証明情報(前件添付) 評価証明情報 課税価格 金0円 登録免許税 金0円 租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税 不動産の表示 (C土地:ゴミ置場) 所 在 〇市〇町 地 番 ○番○ 地 目 雑種地 地 積 ○○平方メートル
(4/4) 登記申請書(一部省略) 登記の目的 ○○持分全部移転 原 因 令和○年〇月〇日相続 相 続 人 (被相続人 ○○) (住所)○○○○ 持分2分の1 (氏名)○○ 添付情報 登記原因証明情報(前件添付) 住所証明情報(前件添付) 評価証明情報 課税価格 金100万円 登録免許税 金4,000円 不動産の表示 (D建物) 所 在 〇市〇町 ○○番地○ 家屋番号 ○○番○ 種 類 居宅 構 造 木造スレート葺2階建 床 面 積 1階 ○○・○○平方メートル 2階 ○○・○○平方メートル
まとめ:複数の不動産が、異なる持分で登記されているとき
複数の不動産が異なる持分で登記されている場合に、相続登記申請書を作成するときは、申請書を複数枚作成する必要はありますが、異なる持分の不動産ごとに申請書を作成した方がよいでしょう。この場合、共通している「添付情報」があれば、「前件添付」と記載すれば問題ありません。
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