抵当権抹消登記と相続登記の未登記:相続登記相談

抵当権抹消登記と相続登記をしていなかった場合の登記の方法

【相続登記相談事例】
10年ほど前、名義人の父が死亡し、現在に至るまで、不動産に登記されている(住宅ローンの)抵当権の抹消登記をしておりません。抵当権抹消登記に必要な書類が見当たりません。また、被相続人父名義から相続人への名義変更もしておりません。
そろそろ、これらの登記手続をしなければいけないと思っております。
相続登記を長らくしていなかった理由は、弟との関係が良好でないためです。
これらの手続をするには、どのようにしたらよいですか。
【相続人関係】
被相続人:父
相続人:母、私(長男)、二男(弟)
【相続財産】
母と私(長男)が住んでいる土地・建物
名義人:被相続人父単独所有

不動産に登記されている(住宅ローンの)抵当権の抹消の方法

相続財産の土地・建物が被相続人父の単独名義ですので、抵当権抹消登記だけ、先に登記することができません。なぜなら、相続登記をしないで抹消登記を申請する場合、申請人(権利者)は、被相続人父となりますが、この場合、父は死亡していますので、申請書に押印できません。抹消登記の申請を司法書士に委任する場合であっても、父は死亡しているため、司法書士に委任するという行為(委任の意思)そのものができないからです。
これが、例えば、土地・建物の名義人が、被相続人父と母の共有であれば、共有者の母が「民法の保存行為」として申請(委任)することができますので、土地と建物が被相続人父と母の共有の場合は、相続登記をすることなく、抹消登記を申請することができます。
土地が被相続人父単独名義、建物が父母共有名義の場合は、土地と建物に抵当権が登記されているため、建物が共有名義であっても、土地が単独名義のため、抹消登記だけを先に登記することができず、土地・建物の相続登記を先にすることになります。
名義人が死亡したときの抵当権抹消登記(方法)を参考にしてください。

抹消登記書類の再発行

事例では、抹消登記書類が見当たらない、ということですので、このままでは、抹消登記をすることができませんので、住宅ローンの金融機関で抹消登記書類を再発行してもらうことになります。
この場合、相続登記をしないで、抹消登記書類の再発行を金融機関に申出る場合は、現在の名義人(相続人)が明確ではないので、相続登記が完了した後に、抹消登記書類の再発行を申出た方がよいでしょう。
金融機関によっては、相続登記をしてから(相続登記が完了してから)、抹消登記書類の再発行を申出てください、という金融機関もあります。住宅ローン完済後抹消登記されていない抵当権を参考にしてください。
なお、抵当権が登記されたままの状態であっても、相続登記をすることに問題ありません。相続登記をすることができます。そこで、まずは、相続登記をすることから始めます。

相続登記

事例の場合、被相続人父名義の土地・建物に、母と長男が住んでいますので、この二人の名義に相続登記をすることを考えると思います。ですが、相談内容から、二男との関係が良好でないため相続登記をしていなかったということですので、母名義を入れないで、長男単独名義で相続登記をした方がよいでしょう。

これは、もし、母名義を入れる場合は、将来、同じように二男との相続関係が生じますので、これを回避するために長男単独名義とするのがよいでしょう。

相続登記に必要な書類

長男単独名義で相続登記をする際に必要な書類は、遺産分割協議書による相続登記を参考にしてください。
長男単独名義で相続登記をするには、遺産分割協議書を作成して、これに相続人全員で署名、実印で押印することが必要です。さらに、二男からも印鑑証明書をもらう必要があります。
ですので、このような二男の協力が必要ですので、二男とスムーズに交渉ができるようにする
必要があります。

代償分割による相続登記

二男との関係が良好でないようですので、長男としては、自分単独名義とするために、二男に金銭を渡すことを検討した方がよいでしょう。
この場合、遺産分割協議書には、名義を長男とする代わりに、二男に代償金としていくら支払うと記載して、二男に代償金を支払うようにします。(これを代償分割といいます。)

この代償金の額については、二男との話し合いにもよりますが、多少多めにすれば、二男も納得する可能性が高くなります。

遺産分割調停の申立て

長男が提示した代償金の額を、二男が納得しないで相続登記ができない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てるほかありません。
遺産分割調停は、遺産分割調停の申立て方法を参考にしてください。
遺産分割調停では、申立人の長男の調停案を基にする場合、結局、代償金の額をいくらにするかということになります。この場合、基本的には、二男の法定相続分に相当する額を代償金の額とすることとなります。
このように、二男の法定相続分に相当する額を代償金の額とすることから、遺産分割調停の前段階の遺産分割協議では、二男への代償金を多少多めに提示した方がよいという理由です。

相続登記については、当司法書士事務所にご相談ください。

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