未登記建物の相続登記

未登記建物の相続登記

遺産の中に「未登記の建物」があった場合、どのように名義変更登記したらよいでしょうか。

未登記建物とは

未登記の建物とは、実際には存在してはいるけれども法務局(登記所)に登記されていない建物のことを言います。
最近の建物は、ほとんど登記されていますので、いざ、何か登記をするときに、困ること、どうしようかと考えることはありません。ですが、昔建築された建物、例えば、50年前に建築された建物は、登記されていないことがあります。

また、建物を建築した人、被相続人は自分が建てた建物を登記したのかどうか、ある程度分かっていると思いますが、その相続人にとっては、被相続人の建物が登記されているのかどうか、特に、建物がいくつかある場合は、そのどれが登記されているのかどうかわかりにくい場合があります。
また、未登記建物を登記する必要がある場合、昔建てられた建物であり、建てた本人にしか分からないことなので、その当時の書類がない場合があります。

未登記の建物を被相続人から相続人への名義変更登記を考える前に、まず、建物の登記について基本的なところから説明します。
借地権の相続の方法については、こちらを参考してください。

建物の登記記録(登記簿)に記載される事項

そこでまず、現在、登記所のコンピューターに管理、記録されている、建物の登記記録情報は、次の3つで構成されています。

  1. 建物の表題部
     「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」「建築年月日」「登記した日」が記載されます。
  2. 「甲区欄」:建物の「所有権に関する事項」が記載
     これは、主に「所有者が記載されている」部分です。
  3. 「乙区欄」:建物の「所有権以外の権利に関する事項」が記載
     これは、「抵当権などが記載されている」部分です。

このうち、1)の表題部が登記所の登記記録情報にない場合が、登記されていない、未登記だ、ということになります。
建物が登記されていれば、登記所では、登記事項証明書(登記簿謄本)を発行してくれます。
登記所に行って、この土地の上に立っている建物の登記事項証明書を発行してください、と言って申請した場合、登記所の人が、この土地の上に登記された建物はありませんよ、と言われれば、その建物が登記されていないことになります。

この下に、法務局の証明文が書かれたものが「登記事項証明書」です。通常、1通当たり600円。

建築した建物を登記しないとどうなるのか

不動産登記法:第47条では、
新築した建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。と規定しています。
さらに、第164条では、
申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。と規定しています。

ですから、建物を建築した場合は、1)の建物の表題部の登記、すなわち、これを建物表題登記と呼んでいますが、この登記を最低限する必要があります。
建物表題登記をしないことで、罰金のような過料に処せられるかどうかは、実際、何とも言えません。
50年くらい前は、建物の登記をしないからといって、過料に処せられなかったということです。
今後、実際に過料に処されるかどうかは、法務局の出方次第となるでしょう。また、令和6年から相続登記の義務化が開始されますので、未登記の建物といえども、これを登記しない場合、過料に処せられることになります。

会社の登記でも、登記事項に変更があった場合には、2週間以内に登記しなければならないと定められています。これが、例えば、半年以上登記しない場合には、過料に処せられます。裁判所からいくら納めなさいと通知が来ます。会社の登記の場合は、よくあることです。

未登記建物の固定資産税

ところで、市区町村は、建物が建築されたかどうかを、常に把握しています。
普通の建物を建築するときは、必ず、建築確認申請を市区町村にします。
これは、こういう建物を建築しますが、いいですか、という内容の申請をします。
そうすると、市区町村は、この建物を調査しますので、建物が建築されたかどうかが分かるからです。
建物が完成すれば、市区町村は固定資産税を課税します。
固定資産税は、建物が登記されていても、登記されていなくても、市区町村は課税します。これは当然といれば当然のことです。

それでは、そもそも、建物を建築した人は、なぜ、登記をしなかったのでしょうか。
一番の理由は、建物を自己資金で建築したので登記しなかったということでしょう。
これは、例えば自分の敷地に、自己資金で建築したので、建築した建物は、当然、自分の所有物だという意識が強かったので、特に、登記する必要もないと思ったからでしょう。

次の場合は、建物の登記をします。

  • 自己資金ではなく、金融機関からの借り入れで建築した場合は、金融機関は建物に抵当権を設定しますので、建物を登記する必要があります。
  • 借地上に、自己資金で建築した場合は、建物を登記しないときは、借地権を第三者に主張できない、ということもあるので、必ず、建物の登記をする必要があります。
  • 建売の建物を売買、購入する場合、購入した建物は登記します。
    これは、建物を建築したのは建売業者で、一義的には建物の所有者は建売業者です。この建売業者から土地も含めて建物を購入することになるので、土地も建物も両方とも登記することになります。これは、購入した人が、土地と建物の所有権を確保するために必要なことです。

建物の登記の基本

そこで、建物が建築された場合には、
まず1)の表題部の登記をします。
表題部には、建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積が記載され、建物がどういう建物なのかを登記します。
この登記を代理申請できるのは、国家資格登録者の土地家屋調査士が行います。
この登記は、建物の所有者が自分で登記することは可能です。ですが、建物の図面を書くことなど難しいこともありますので、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
土地家屋調査士に依頼すると、普通の建物で約10万円かかります。

建物表題登記に必要な基本書類は、次のとおりです。
(1)建築確認通知書(検査済証)
(2)建築業者の工事完了引渡証明書・印鑑証明書・会社登記事項証明書
昔建築した建物では、これらの書類がないかもしれません。このような場合は、
 請負契約書、電気水道の払込領収書、評価証明書(固定資産税課税台帳登録事項証明書)などによって、所有権があることを証明します。

この表題部の登記をすることによって、登記された、ということになります。未登記ではなくなります。
建物の場合は、最低限、この登記をする必要があります。
前に話しました、登記の3つの構成のうち、2)の所有権に関する事項の登記は、1)の表題部の登記、すなわち、建物表題登記の後で、登記します。
2)の所有権の登記、すなわち、所有権保存の登記をすることによって、現在では登記識別情報通知という、いわゆる権利証が登記所より発行されます。

未登記建物の相続登記の方法

未登記建物というと、建物の登記そのものがされていない場合(表題部そのものがない)と建物の表題の登記はされているが所有権の登記がされていない場合(甲区:所有権に関する事項欄がない)があります。

登記は、所有権の登記をしてはじめて権利証(登記済権利証または登記識別情報)ができ、売却や担保設定をすることができます。

登記記録(登記簿)がない場合、その後の取引では権利を取得した人に移転登記ができない、ということになります。したがって、登記をする必要があります。

建物の登記記録が存在しないときは、まず、「建物表題登記」をして建物の表題部分の登記簿(登記記録)を作ります。その後に、「所有権保存登記」をします。これにより権利証(登記識別情報)が交付されます。

建物所有者が亡くなり、建物の登記がされていなかった場合は、直接、相続人名義で建物表題登記や所有権保存登記をすることができます。
未登記建物の「建物表題登記」と「所有権保存登記」の方法は、建物の相続登記を参考にしてください。
このとき、相続人名義で登記しますので、前述の建物表題登記に必要な書類のほかに、戸籍謄本などの相続登記に必要な書類を用意する必要があります。

建物表題登記をするときは、相続証明書のほかに、前述の亡くなった方(被相続人)が建物を建築したときに建築会社から受領した建築確認通知書、工事完了引渡証明書と印鑑証明書を用意します。
これらがないときは、請負契約書、電気・水道の払込領収書、評価証明書など被相続人に所有権があったことを証明する書類が必要になります。

未登記建物であっても、現に存在する建物には固定資産税が課税されます。固定資産税を支払いたくないからという理由で、建築した建物の登記をしない、と決めても意味がありません。
「建物表題登記」は表題登記の専門家の「土地家屋調査士」が行い、所有権保存登記は権利登記の専門家の司法書士が行います。

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