相続した土地を分割したいとき(方法)
土地を分割して相続する場合の登記方法は、
相続が開始して、例えば600平方メートルの土地(1筆)があり、被相続人の子法定相続人4人(A・B・C・D)でこれを4つ(4筆)に分割して相続したいという場合の登記は、どのようにするのでしょうか。
被相続人名義の土地(1番1 600㎡):1筆 |
1筆を4筆に分けて(分筆)、相続人A・B・C・Dの単独所有としたい。
土地(1番1:150㎡)所有者:相続人A | 土地(1番2:150㎡)所有者:相続人B |
土地(1番3:150㎡)所有者:相続人C | 土地(1番4:150㎡)所有者:相続人D |
土地を4つに分割するので、土地分筆登記をする必要があります。
相続登記(不動産名義変更)も必要があります。
この2つの登記をどういう順番で登記したらよいでしょうか。
第1の方法:①相続登記(法定相続分で)→②分筆登記→③遺産分割で移転登記
第1の方法は、普通考える方法で、最初に①相続登記をして、次に、土地の②分筆登記をし、最後に③遺産分割で単独所有とする方法です。
土地を分割することの合意がなかなかできない場合など、法定相続人の間での話し合いが成立するまで時間がかかる場合は、この方法をとることもあります。
最初に、相続登記する方法では、「相続」を登記原因として4人の子共有名義に、法定相続分(各持分4分の1)で相続登記します。
被相続人名義の土地(1番1 600㎡):1筆 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D |
次に、土地を4つに分割する土地分筆登記をします。
土地を4つに分筆すると、登記記録には、4つの土地すべて同じ内容の登記事項が記載されます。
すなわち、子4人の持分4分の1ずつが、共有者として4つの土地に記載されます。
土地(1番1:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D | 土地(1番2:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D |
土地(1番3:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D | 土地(1番4:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D |
これをそれぞれ単独所有(単独所有とする遺産分割)とするには、例えば、子Aの単独所有とするには、子BCDの持分をAに移転します。同じように、B、C、Dについても持分移転登記をします。
この登記の原因は、「遺産分割」になります。
この場合、遺産分割協議書を作成して、「Aが1番1の土地を取得する。」、「Bが1番2の土地を取得する。」、「Cが1番3の土地を取得する。」、「Dが1番4の土地を取得する。」という内容で作成します。
土地(1番1:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D ↓ B・C・D持分全部移転(3/4を移転) Aが持分3/4を取得 所有者A:1/4+3/4=4/4=1 | 土地(1番2:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D ↓ A・C・D持分全部移転(3/4を移転) Bが持分3/4を取得 所有者B:1/4+3/4=4/4=1 |
土地(1番3:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D ↓ A・B・D持分全部移転(3/4を移転) Cが持分3/4を取得 所有者C:1/4+3/4=4/4=1 | 土地(1番4:150㎡)共有者 持分1/4相続人A・持分1/4相続人B 持分1/4相続人C・持分1/4相続人D ↓ A・B・C持分全部移転(3/4を移転) Dが持分3/4を取得 所有者D:1/4+3/4=4/4=1 |
登記の順番を、土地の分筆登記→相続登記とする場合、分筆登記が完了してから相続登記を申請します。これらを同時に申請することができません。
これは、分筆登記の確定日が登記の申請日ではなく、登記官の調査完了の日(登記申請日の後の日)と定められているからです。これに対して、相続登記は権利の登記の部類に属しているため、登記申請の日が理論上、登記完了の日となっています。
第2の方法:①分筆登記→②相続登記(遺産分割で)
第2の方法は、最初に土地の①分筆登記をして、次に、②相続登記(遺産分割で)をするという方法です。
法定相続人の間での話し合い(遺産分割協議)がまとまるのであれば、「法定相続分による相続登記」をすることなく、①の分筆登記をした後、②の遺産分割による移転登記(登記原因は「相続」)をすることができます。
最初の分筆登記の段階では、まだ被相続人名義のままで、4つに分筆登記します。
この場合、相続証明書(被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄本など)を付けて、土地家屋調査士が、土地の分筆登記を申請します。
また、分筆図面(地積測量図)の付いた遺産分割協議書を提出しても、遺産分割協議書なしの分筆図面(地積測量図)だけでもどちらでも問題ありません。
土地(1番1:150㎡)所有者:被相続人名義 | 土地(1番2:150㎡)所有者:被相続人名義 |
土地(1番3:150㎡)所有者:被相続人名義 | 土地(1番4:150㎡)所有者:被相続人名義 |
次に、土地を4つに分筆登記した後に、子ABCDそれぞれ単独名義(単独名義とする遺産分割)に相続登記をします。
登記の原因を「相続」として被相続人名義から各土地を各相続人名義とする登記をします。
この場合、遺産分割協議書を作成して、「Aが1番1の土地を取得する。」、「Bが1番2の土地を取得する。」、「Cが1番3の土地を取得する。」、「Dが1番4の土地を取得する。」という内容で作成します。
土地(1番1:150㎡)所有者:相続人A | 土地(1番2:150㎡)所有者:相続人B |
土地(1番3:150㎡)所有者:相続人C | 土地(1番4:150㎡)所有者:相続人D |
第2の方法の方が登記事項が分かりやすい
第1の方法では登記を3回(分筆登記を含めて)、第2の方法では登記を2回することになります。結局、登記の手間と時間、費用の問題で、第2の方法を採るのが一般的です。
また、第1の方法では、最終的に相続人の単独所有となりますが、登記事項の内容が多少複雑になりますので、登記事項の内容が分かりにくいかもしれません。
第2の方法では、それぞれの土地が被相続人名義から各相続人名義へと変わったことが一目瞭然となりますので、分かりやすいでしょう。
第2の方法の方が登記費用が安い
土地の固定資産税の「評価価格」:6,000万円として計算します。
分筆登記は、土地家屋調査士という国家資格登録者が代理して登記します。
分筆登記の費用(土地家屋調査士に支払う手数料)は、土地の大きさ、形状によって異なりますが、最低でも20万円くらいかかるのが普通です。上記の事例の場合のように土地の地積(面積)が大きい場合、50万円以上かかるかもしれません。
第1の方法の登記費用
- 相続登記(登記原因「相続」による法定相続分での登記)
相続登記費用
登録免許税:6,000万円(評価価格)×0・4%(税率)=240,000円
司法書士報酬:60,000円(約) - 分筆登記:500,000円(このくらいかかるかもしれません。)
4筆に分筆すると、1筆当たり1,500万円(評価価格)(6,000万円×1/4=1,500万円) - 登記原因を「遺産分割」で登記
登録免許税
(1)A単独所有とするために
B・C・D持分全部移転(合計3/4を移転)
1,500万円×3/4=1,125万円
1,125万円×0・4%(税率)=45,000円
(2)B単独所有とするために
A・C・D持分全部移転(合計3/4を移転)
1,125万円×0・4%(税率)=45,000円
(3)C単独所有とするために
A・B・D持分全部移転(合計3/4を移転)
1,125万円×0・4%(税率)=45,000円
(4)D単独所有とするために
A・B・C持分全部移転(合計3/4を移転)
1,125万円×0・4%(税率)=45,000円
司法書士報酬:60,000円
以上の登記費用の合計は、
- 相続登記(登記原因「相続」による法定相続分での登記):300,000円
- 分筆登記:500,000円
- 登記原因を「遺産分割」で登記:240,000円
合計:104万円(約)
第2の方法の登記費用
- 分筆登記:500,000円
4筆に分筆すると、1筆当たり1,500万円(評価価格)(6,000万円×1/4=1,500万円) - 登記原因を「相続」で登記(遺産分割)
登録免許税
(1)A単独所有とするために
1,500万円×0・4%(税率)=60,000円
(2)B単独所有とするために
1,500万円×0・4%(税率)=60,000円
(3)C単独所有とするために
1,500万円×0・4%(税率)=60,000円
(4)D単独所有とするために
1,500万円×0・4%(税率)=60,000円
司法書士報酬:60,000円
以上の登記費用の合計は、
- 分筆登記:500,000円
- 登記原因を「相続」で登記(遺産分割):300,000円
合計:80万円(約)
土地家屋調査士の職務は、土地分筆の場合、①土地の測量と②分筆登記申請の両方です。土地家屋調査士は、測量士と同じで測量機器を使って土地を測量します。測量士ができることは土地の測量だけで「分筆登記」の代行ができません。土地の分筆登記まで行う場合(想定している場合)、土地の測量も含めて土地家屋調査士に依頼した方がよいでしょう。その方が分筆登記が確実で費用も安くなると思われます。
また、分筆登記まで行うことを想定している場合、隣接所有者の承諾や公道との境界画定などの作業が伴うことがあります。このような場合、測量士は通常、この作業を行いませんので(土地の測量だけ)、最初から土地家屋調査士に依頼した方がよいでしょう。
相続登記の場合の代位による分筆登記(他の共有者が協力しないときの方法)を参考にしてください。