相続登記のための遺言書作成【事前準備・事例】

相続登記のための遺言書作成【事前準備・事例】

将来、相続登記を行うことを想定して、遺言書を作成しようとするとき、まずは、相続登記をする不動産に問題がないかどうかを確認します。この確認をしないで遺言書を作成した場合、相続開始後、いざ相続登記をしようとするとき、名義変更登記をする前に「別の登記手続」をしなければできない状況であれば、相続人や受遺者が戸惑うことにもなりかねません。

特に、ご自分で作成する自筆証書遺言書では、司法書士など専門家に遺言書の作成を相談することなく、作成する場合は、注意した方がよいでしょう。

そこで、遺言書を作成する場合、どういう手順で、どういう書類を用意したらよいのか、どのくらい費用がかかるのかを、まずは検討します。

【事例】
『相談時点での現状』
●遺言者の財産は、次のとおりです。
 ①不動産:土地と建物(評価価格):約1,500万円
 ②預貯金:約200万円
●財産を引き継ぐ人は、推定相続人ではない第三者。
●遺言者には、兄弟姉妹がいる。
●遺言書の作成内容は、「○○に遺贈する。」

土地と建物を調査する

土地と建物の名義人(所有者)が遺言者なのかを確認します。
このことは、まずは、公図(登記所に保管)や登記記録(登記簿)で確認します。

公図(登記所に保管)や登記記録(登記簿)で確認したところ、判明した事実は次のとおりです。
 ●土地の名義人(所有者)の登記されている住所が、現在の住所と相違する。
 ●土地の「地目」が「畑」
 ●建物が未登記で、登記されていない。
 「名寄帳」を取得して、土地と建物を確認します。名寄帳の建物には「家屋番号」が記載されていませんので、これで建物が未登記であることを確認できます。

このような現状のままで、遺言書を作成した場合、相続の開始後、相続登記(遺贈で登記)をするには、次の手続が必要となります。
●土地について、「所有者の住所変更登記」と「宅地に地目変更」
●建物について、「建物表題登記」と「所有権保存登記」

住所変更登記は、「相続」で登記する場合と「遺贈」で登記する場合とでは異なります。
「相続」で登記する場合は、相続人の単独申請となりますので、被相続人(遺言者)の住所が「登記されている住所」と「死亡時の住所」が異なっていても「住所変更登記」をする必要がありません。ただし、住所変更を証明する書類(住民票や戸籍の附票など)が必要です。
「遺贈」で登記する場合は、権利者(受遺者)と義務者(遺言執行者または相続人全員)との共同申請となりますので、「住所変更登記」が必要となります。

遺言書作成時点でこれらの登記をしていない場合、相続開始後、これらの登記をした後に「遺贈の登記」をすることになります。
そうしますと、相続開始後、これらの登記に要する時間と費用がかかることになります。

土地と建物について登記をしておく

そこで、遺言書を作成する前に、これらの登記をしておけば、相続開始後、スムーズに「受遺者(遺贈を受ける人)」名義に遺贈の登記をすることができます。
したがいまして、これらの登記の完了後に、遺言書を作成します。

遺言書の作成前に、
土地について、「所有者の住所変更登記」と「宅地に地目変更」
建物について、「建物表題登記」と「所有権保存登記」

まず、土地について「宅地に地目変更」と、建物が未登記であるので「建物表題登記」をします。
これらの登記は「土地家屋調査士」に代行してもらいます。司法書士は、これらの登記を代行することができません。
「宅地に地目変更」しますので、土地家屋調査士に「農地法第4条の届出」をしてもらい、農地法第4条受理通知書を取得してもらいます。これを地目変更登記に使用します。

これらの登記が完了した後、土地について「所有者の住所変更登記」と、建物について「所有権保存登記」をします。これらの登記は、司法書士が代行します。

遺言書を作成

遺言書は、どういう形式のもので作成したらよいのか

次に、遺言書を作成することになりますが、遺言書を作成する場合、作成の方法が、通常、3種類あります。(秘密証書遺言書もありますが、ここでは省きます。)

公正証書遺言書(公証人役場で作成する。)
自筆証書遺言書(登記所保管制度を利用する。)
自筆証書遺言書(登記所保管制度を利用しない。)
詳しくは、それぞれのページを参考にしてください。

ここでは、公証人役場で作成する公正証書遺言書を選択します。
今回の遺言書作成では、遺言者の推定相続人が兄弟姉妹だけであり、特に、推定相続人ではない第三者に「遺贈する」場合ですので、相続開始後、スムーズに遺贈の登記ができる公正証書遺言書を選択します。

登記所保管制度を利用する自筆証書遺言と登記所保管制度を利用しない自筆証書遺言の場合は、遺留分を有しない兄弟姉妹にも、遺言書について通知(登記所・家庭裁判所から)されます。
公正証書遺言書では、この通知がありませんので、公正証書遺言書を選択します。

公証人役場に提出する書類

公証人役場には、次の書類を提出します。
① 遺言書(原案)
② 遺言者の印鑑証明書
③ 受遺者の住民票
④ 預金の通帳写し(公証人役場の手数料は、財産の総額で計算するため)
⑤ 土地建物の名寄帳(公証人役場の手数料は、財産の総額で計算するため)

遺言書の内容

次に遺言書の内容について検討します。
遺言者は、兄弟姉妹には相続させたくないので、すべての財産を推定相続人ではない第三者に遺贈する、という形をとります。
遺言書の内容は、次のような文言とします。

第1条
 遺言者は、遺言者の有する全ての財産を、○○○○(生年月日:〇年〇月〇日、住所:○○)に遺贈する。
第2条
 遺言者は、本遺言の執行者として、前記○○○○を指定する。
第3条
 1 遺言執行者は、本遺言を執行するため、他の相続人の印鑑証明書付き同意書その他の同意又は承諾を要することなく、不動産の名義変更登記手続き、預貯金の解約、払戻し、名義書換請求等をする権限、遺言者が契約する貸金庫があるときは、貸金庫を開扉し、格納物を取り出し、同契約を解約する権限、その他本遺言を執行するために必要な一切の権限を有する。  
 2 遺言執行者は、必要があるときは、この遺言執行の事務を委任することができるものとする。

以上で、遺言書の作成が完了します。

遺言書作成までにかかった費用

遺言書作成までにかかった費用(実費と報酬)は、次のとおりです。

【土地と建物の登記】
●土地の「地目変更」と建物の「建物表題登記」約10万円
●土地の「住所変更」と建物の「所有権保存登記」:約5万円
【公正証書遺言書作成】
●当司法書士事務所の「遺言書作成サポート」報酬:約4万円
●公証人役場の手数料:約45,000円
           公証人の手数料は、遺言者の財産の総額で計算される。
合計金額:約235,000円

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