相続登記とは(意味):申請人・必要書類・税金

相続登記とは(意味): 申請人・必要書類・登録免許税

「相続登記」(不動産名義変更)という場合、「相続の開始による登記」を意味します。
相続の名義変更の「原因」によって、登記の方法や税金が異なります。

「登記の目的」と名義変更する「権利の種類」

「相続の開始」による所有権登記は、所有権保存であったり、所有権移転(共有持分の場合は持分全部移転)の場合もあります。また、不動産が所有権のときもあれば、賃借権や地上権の場合もあります。

所有権の登記の場合、「保存」と「移転」の違いは、登記上、所有権の登記をはじめてする場合が「保存」で、2番目以降にする場合が「移転」です。どちらも「所有権」の登記をすることにおいては同じです。実際は、「移転」登記が圧倒的に多いです。

「相続登記」というとき、登記する原因が通常、「相続」「遺贈」「遺産分割」で、この理由によって、誰から誰に所有権を移転登記するということになります。

「登記原因」で申請人・必要書類・税金が異なる

「相続の開始による登記」の理由、すなわち登記の「原因」には、次のものがあります。

  1. 通常の法定相続分での登記遺産分割(協議・調停)による登記遺言書による登記の場合の「相続
  2. 遺言書による法定相続人(含む)以外の人に登記する場合の「遺贈
  3. 法定相続分で登記した後にする「遺産分割
  4. 相続分を譲渡する場合の「相続分の贈与」または「相続分の売買

これらの登記申請書に記載する「原因」では、それぞれ申請人・必要書類・登録免許税(ほかの税金)が異なります。

「原因」が「相続」

法定相続分での登記:原因は「相続」

法定相続分で登記する場合の「原因」は「相続」です。

  • 申請人:法定相続人全員(相続放棄した人を除く)での単独申請(一人でも申請ができる。(保存行為))
        法定相続人の法定相続分全部の登記をしなければなりません。
        法定相続分の一部を登記することができません。
  • 必要書類:相続登記の必要書類ケース3:法定相続分で相続登記(必要書類)でご確認ください。
  • 登録免許税(ほかの税金)
    登録免許税:固定資産税の評価価格の1000分の4=0・4%
          評価価格が1,000万円であれば、40,000円
    不動産取得税(都道府県税):非課税
遺産分割(協議・調停)による登記:原因は「相続」

遺産分割(協議または調停)が成立した場合、法定相続分での登記をすることなく、遺産分割(協議または調停)で「不動産を取得した相続人名義」に直接、登記をすることができます。この場合の「原因」は「相続」です。
遺産分割(協議または調停)が成立した場合、法定相続分を超える部分について、これを登記しなければ、超える部分について第三者に対抗できません。(自分の権利を主張できません。)

  • 申請人:遺産分割(協議または調停)で「実際に不動産を取得した相続人」が単独申請
        「実際に不動産を取得した相続人」が2人以上いる場合、全員の登記をしなければなりません。一部の人のみ登記することができません。
  • 必要書類:相続登記の必要書類ケース2:通常の遺産分割協議で相続登記(必要書類)ご確認ください。
  • 登録免許税(ほかの税金)
    登録免許税:固定資産税の評価価格の1000分の4=0・4%
          評価価格が1,000万円であれば、40,000円
    不動産取得税(都道府県税):非課税
遺言書による登記(相続人に「相続させる」の場合):原因は「相続」

遺言書に基づいて登記をする場合(相続人に「相続させる」)、法定相続分での登記をすることなく、遺言書で「不動産を取得した相続人名義」に直接、登記をすることができます。この場合の「原因」は「相続」です。
遺言書があった場合、法定相続分を超える部分について、これを登記しなければ、超える部分について第三者に対抗できません。(自分の権利を主張できません。)

相続人Aに「相続させる」という遺言の文言のときは、「原因」は「相続」で、この文言のときは、相続人Aが単独で登記申請できます。
遺言執行者がいる場合は、次のとおりです。

  • 相続法改正前(2019年(令和1年)7月1日より前)に作成された遺言書の場合、相続人Aの単独申請となり、遺言執行者がいても遺言執行者は申請人となれません。
    遺言執行者が申請できるのは、相続人から委任を受けた場合で、この場合は代理人として申請することはできます。
  • 相続法改正以降(2019年(令和1年)7月1日以降)に作成された遺言書の場合、遺言執行者がいる場合、遺言執行者は申請人となることができます。この場合、相続人Aも単独で申請できます。

申請方法は、次のとおりです。

「原因」が「遺贈」(「遺贈する」の場合)

法定相続人以外の人(受遺者)名義に登記する場合(「遺贈する」の場合)

遺言書に基づいて登記をする場合(「遺贈する」) 、「不動産を取得した相続人以外の第三者(受遺者)」に直接、登記をすることができます。この場合の登記「原因」は「遺贈」です。
遺言書があった場合、相続人以外の第三者(受遺者)は、これを登記しなければ、ほかの第三者に対抗できません。(自分の権利を主張できません。)

法定相続分で登記した後に、遺産分割(協議・調停)が成立して登記:「原因」は「遺産分割」

法定相続分での登記をした後、遺産分割(協議または調停)が成立した場合、「不動産を取得した相続人」に登記をします。この場合の「原因」は「遺産分割」です。
遺産分割(協議または調停)が成立した場合、「不動産を取得した相続人」 は、これを登記しなければ、法定相続分を超える部分について第三者に対抗できません。(自分の権利を主張できません。)

  • 申請人:遺産分割(協議または調停)で「実際に不動産を取得した相続人」と「権利を失う相続人」での共同申請
        「権利者」:「実際に不動産を取得した相続人」
        「義務者」:「権利を失う相続人」
  • 必要書類:法定相続登記後に遺産分割協議(調停)が成立した時の登記の方法でご確認ください。
  • 登録免許税(ほかの税金)
    登録免許税:固定資産税の「取得した持分」の評価価格の1000分の4=0・4%
          「取得した持分」の評価価格が500万円であれば、20,000円
    不動産取得税(都道府県税):非課税

「相続分の譲渡」で登記する場合

民法(相続分の取戻権)
第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

民法 | e-Gov法令検索

相続分の譲渡は、遺産分割の前に、ほかの相続人または相続人以外の第三者に、相続分を譲渡することをいいます。相続分譲渡の理由が、贈与(無償譲渡・金銭の支払いを伴わない)の場合と売買(有償譲渡・金銭の支払いを伴う)の場合があります。
この場合、相続分を包括して譲渡することになりますので、譲渡された人は、遺産分割協議(または調停)に参加することになります。

「相続分の譲渡」で登記をしなければならない場合
  • 相続の「同順位の者同士」で「相続分の譲渡」があった場合:登記する必要なし。
    「同順位の者同士」とは、相続人が子(兄弟姉妹)3人であれば、この子(兄弟姉妹)同士で相続分の譲渡を行う場合です。
  • 相続の「順位が異なる者同士」で、または「相続人以外の第三者」の者に対して、「相続分の譲渡」があった場合:登記する必要がある。
    「順位が異なる者同士」とは、数次相続の場合です。数次相続の場合、相続の順位の異なる者同士で遺産分割(協議または調停)をすることになるからです。
    この場合、次の二つの登記をします。
    (1)法定相続分での登記
    (2)「相続分の贈与(または売買)」

この相続関係図で、被相続人に対して、「第1の相続」の相続人がCと(亡)D。(亡)D(第2の相続)の相続人がFとG。
FとGで相続分の譲渡するのは、同順位の者同士であるので問題ありません。
これが、CがFに、GがCに譲渡するのは「異なる順位の者同士」であるので、(1)法定相続分での登記と(2)相続分の贈与(または売買)の登記が必要です。
登記が必要な場合、「贈与」であれば「譲渡された人」が贈与税の対象となり、「売買」であれば「譲渡した人」が譲渡所得税の対象となります。安易に考えてはいけない相続分譲渡を参考にしてください。

(2)「相続分の贈与(または売買)」

  • 申請人:「相続分の贈与(または売買)」で「相続分の譲受人」と「相続分の譲渡人」での共同申請
        「権利者」:「相続分の譲受人」
        「義務者」:「相続分の譲渡人」
  • 必要書類
    「権利者」:「相続分の譲受人」は、住民票
    「義務者」:「相続分の譲渡人」は、(登記識別情報通知)・相続分譲渡証書(登記原因証明情報)・
           印鑑証明書・評価証明書
  • 登録免許税:固定資産税の「取得した相続持分」の評価価格の1000分の20=2%
          「取得した相続持分」の評価価格が500万円であれば、100,000円

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