国籍離脱した元日本人(登記名義人・被相続人)の相続登記の方法

国籍離脱した元日本人(登記名義人・被相続人)の相続登記の方法

【事例】
被相続人・登記名義人は、国籍離脱した元日本人。離脱後の国籍はアメリカ。日本で死亡。
被相続人には、配偶者も子もいない。
相続人は、兄弟姉妹。兄弟姉妹は全員死亡しているので、その甥・姪(数次相続と代襲相続)

【元日本人の生活の拠点の経緯】

日本で出生
👇
30歳頃、アメリカに居住
👇
50歳頃、アメリカ国籍を取得後、日本国籍を離脱
👇
55歳頃、日本に居住
👇
70歳で日本で死亡

【遺産】
不動産 土地:300㎡

【事例の場合の問題点】
(1)国籍離脱した被相続人日本人について用意する書類
(2)甥姪が相続する数次相続登記の方法

(1)国籍離脱した被相続人元日本人の相続登記で用意する書類

【国籍離脱した被相続人元日本人についての必要書類】

  1. 出生から国籍離脱するまでの除籍謄本
     配偶者と子がいないことを証明します。
  2. 被相続人の親の出生から死亡時までの除籍謄本
     親が死亡していることと兄弟姉妹が誰であるかを証明します。
  3. 死亡時の「外国人登録原票記載事項証明書」(コンピューター移行後)
     死亡した日付と死亡時の住所を証明します。また、「外国人登録原票記載事項証明書」には、国籍が記載されているので、これを証明します。
  4. 国籍離脱後、日本に在住してから死亡時の「外国人登録原票の写しの証明書」(コンピューター移行前)
     コンピューター移行前の「外国人登録原票の写しの証明書」で家族構成を証明します。
  5. 上申書:ほかに相続人がいないこと
     国籍離脱後死亡までの戸籍が存在していないので、国籍離脱後、結婚したのか、子がいたのか(養子縁組をしたのか)、不明であるため、これらの事情がなかったことを説明し、ほかに相続人がいないことを上申します。
  6. パスポートの写し
     国籍がどこなのかを補完的に証明します。
  7. 健康保険証の写し
     死亡時まで日本に在住していたことを補完的に証明します。

(2)甥姪が相続する数次相続登記の方法

【相続人の数次相続登記の必要書類】

  1. 死亡した兄弟姉妹の出生から死亡時までの除籍謄本
     兄弟姉妹が全員死亡していること、兄弟姉妹の子(甥姪)が誰であるかを証明します。
  2. 数次相続で死亡した兄弟姉妹の住民票除票
     数次相続で一旦相続する兄弟姉妹の死亡時の住民票除票が必要です。
  3. 遺産分割協議書(2通作成する。)
     数次相続で一旦、兄弟姉妹が相続取得する遺産分割協議書を作成します。
     甥姪が相続する遺産分割協議書を作成します。
     数次相続の遺産分割協議書の作成方法は、こちら→「第2の相続」の相続人が不動産を取得する場合を参考にしてください。
  4. 甥姪の戸籍謄本・印鑑証明書
  5. 甥姪で不動産を実際、相続取得する人の住民票
     登記名義人となる甥姪の住民票が必要です。
  6. その他、相続登記の必要書類を参考にしてください。

「外国人登録原票の写しの証明書」が必要な理由

コンピューター移行前の「外国人登録原票の写しの証明書」で家族構成を証明します。
これは、コンピューター移行前の「外国人登録原票の写しの証明書」には、本人のことだけではなく、本人を含めた家族の氏名、配偶者か子かの事項が記載されているからです。

国籍を離脱した元日本人は、外国人の扱いとなりますので、その当時は、「外国人登録原票」があり、住民票の代わりに、これに元日本人の氏名・住所・生年月日・家族構成などが記載されていました。
この証明書に家族構成が記載されており、被相続人元日本人が日本に入国し、死亡時までの家族構成を確認できることから、被相続人元日本人に配偶者と子がいたかどうかを推測できることになります。
「外国人登録原票」は、戸籍に関する書類(戸籍謄本・除籍謄本)と異なり、相続人を法律上証明するものではありませんが、相続人を補完的に推測できる書類として、コンピューター移行前の「外国人登録原票の写しの証明書」があるのであれば、これを登記所に提出します。

「外国人登録原票の写しの証明書」の交付を請求できる人は、基本的に、被相続人元日本人本人の直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹です。
事例の場合、本人の兄弟姉妹は全員死亡しているので、これを事実上、取得できません。
兄弟姉妹の甥姪は、「外国人登録原票の写しの証明書」を取得できないことになっています。
この点については、出入国在留管理庁総務課情報システム管理室出入国情報開示係に電話して確認済みです。
以上の点については、出入国在留管理庁のホームページ「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求について」を参照してください。

もっとも、本人の兄弟姉妹が一人でも生存している場合は、「外国人登録原票の写しの証明書」を取得して、登記所に提出することになります。
(以上、2022年さいたま地方法務局 東松山支局で登記完了)

相続登記(外国人の相続登記)については、当司法書士事務所にご相談ください。

相続登記(外国人の相続登記)について、当司法書士事務所にお気軽にお問い合わせください。
tel:045-222-8559 お問合わせ・ご相談・お見積り依頼フォーム

「相続登記相談事例など」に戻る

タイトルとURLをコピーしました