遺産が多数ある場合の相続登記・預貯金など相続手続の方法・手順・費用(具体例で解説)
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
【相続登記相談】
この度、父の遺産相続手続を行うことになりました。父の遺産と相続人については、次のとおりです。
遺産
① 不動産:大阪市中央区の土地・建物、評価価格 合計3,000万円
② 不動産:横浜市中区のマンション、評価価格 合計1,000万円
③ 預貯金:金融機関4件
④ 株 式:証券会社1件
相続人
配偶者母と、子2名:長男、二男(私)
この場合、不動産の相続登記と預貯金などの相続手続について、どのような書類を集めて、どのような手順で進めればよいのか、費用がどのくらいかかるのかという点について教えてください。
相続登記・預貯金の相続手続で必要な書類
事例の場合、まずは、相続登記(預貯金の相続手続)で必要な次の書類を集めます。
被相続人(父)について
- 父の「出生から死亡までの」除籍戸籍謄本 各1通
これらの取得については、「広域交付」の方法で取得します。 - 父の住民票除票(本籍・筆頭者記載) 1通
- 固定資産税納税通知書・課税明細書(場合によっては評価証明書)
- 不動産権利証(登記済権利証・登記識別情報通知)(場合によっては法務局に提出)
- 金融機関の通帳
- 証券会社からの通知書に記載されている株式の内容書面
- 各相続人の預金口座に振り込むための通帳コピー
法定相続人(配偶者母、子2名:長男・二男)
相続登記・預貯金など相続手続の順番
最初に、不動産の相続登記をし(例えば、大阪市の土地・建物)、その際、法定相続情報証明書を取得します。
法定相続情報証明書の取得方法については、次を参考にしてください。
「法定相続情報一覧図の写し」の証明書(取得方法)
法定相続情報証明書を取得するメリットとその取得方法・手順を詳しく解説
次に、横浜市のマンションの相続登記をします。
その後、預貯金4件・株式1件の手続をします。
これらを最短で行う場合、印鑑証明書を各相続人5通ほど用意し、遺産分割協議書も5通ほど作成し、法定相続情報証明書取得を5通ほど取得します。
相続手続の手順:遺産が多数ある場合の相続登記ほか相続手続
次の手順で相続登記・預貯金相続手続などを行います。
- 前記相続登記など必要書類を用意します。
- 次の書類を作成します。
① 遺産分割協議書
② 委任状:相続手続を司法書士などに委任する場合(司法書士が作成)
③ 法定相続情報証明書取得のための申出書・一覧図 - 次の書類に署名捺印(実印)
① 遺産分割協議書
② 委任状:相続手続を司法書士などに委任する場合(司法書士が作成)
③ 法定相続情報証明書取得のための申出書 - 相続登記申請(法務局に書類を提出)をします。
相続関係説明図を作成し併せて提出します。
この際、法定相続情報証明書類一式を法務局に提出します。
登記の完了まで、法務局1か所につき約2週間から3週間かかります。 - 完了しましたら、もう1か所の法務局に相続登記を申請します。完了まで約2週間から3週間かかります。
2か所目の法務局では、法定相続情報証明書を使用します。
前記次の書類は、提出する必要がありません。
父の「出生から死亡までの」除籍戸籍謄本
父の住民票除票(本籍・筆頭者記載)
法定相続人の戸籍謄本
法定相続人の住民票 - 預貯金と株式の相続手続
不動産の相続登記が完了しましたら、預貯金と株式の相続手続を行います。
預貯金と株式の相続手続は、基本的に、郵送で行います。
このため、金融機関や証券会社に、前もって連絡し、相続手続に必要な書類を郵送してもらいます。
金融機関によっては、必要書類を2度郵送することが必要な金融機関もあります。(三井住友銀行)
また、相続税の申告(納税)が必要な場合、残高証明書を請求します。残高証明書は、金融機関の窓口(事前の予約が必要)でのみ行う金融機関と、郵送で請求できる金融機関があります。事前に確認するとよいでしょう。
個別の金融機関・証券会社の手続については、預貯金(預金・貯金)の相続手続の方法(主な金融機関ごと)を参考にしてください。
完了までの期間
金融機関:1カ所につき完了まで約3週間
証券会社:1カ所につき完了まで約2か月かかる場合があります。(預貯金よりも時間がかかります。)
相続登記費用と、預貯金・株式の相続手続費用
当司法書士事務所に依頼する場合の相続登記費用と、預貯金・株式の相続手続費用です。
事例の相続手続すべてを当司法書士事務所に依頼される場合の費用は、次のとおりです。
不動産の相続登記を依頼され、預貯金と株式の相続手続は、ご自分で手続をされることも考えられます。
登記費用(仮)
実費:162,463円(仮・登録免許税など)+5,000円(除籍謄本など)
報酬:255,000円+25,500円(消費税)
合計:447,963円(仮)
事例の場合、御見積書は、次のとおりです。
相続登記・預貯金・株式 | 司法書士報酬(円) | 登録免許税など実費(円) |
---|---|---|
相続登記:大阪 | ||
所有権移転登記申請:土地・建物 | 55,000 | 120,000 |
登記事項確認:事前 | 662 | |
登記事項証明書:完了 | 980 | |
遺産分割協議書作成込み 相続関係説明図作成込み | ||
法定相続情報証明書取得 | 10,000 | 0 |
相続登記:横浜 | ||
所有権移転登記申請:建物・敷地権 | 30,000 | 40,000 |
登記事項確認:事前 | 331 | |
登記事項証明書:完了 | 480 | |
預貯金相続手続 | ||
金融機関1カ所:3万円×4 | 120,000 | |
株式相続手続 | ||
証券会社1カ所:4万円×1 | 40,000 | |
費用の小計 | 255,000 | 162,463 |
その他実費:除籍謄本など | 5,000 | |
消費税 | 25,500 | |
費用の合計 | 447,963 |
個別の費用の内訳
事例の場合の個別の費用について説明します。
実費
- 登録免許税
- 登記情報(登記事項確認)・登記事項証明書
- その他実費:除籍謄本など実費
- 大阪市中央区の土地・建物:相続登記
登録免許税計算
土地評価価格:2,500万円(仮) ①
建物評価価格:500万円(仮) ②
①+②=3,000万円
3,000万円×0・4%=120,000円(仮 登録免許税)
登記事項確認:331円×2=662円
登記事項証明書:完了:490円×2=980円 - 横浜市中区のマンション:相続登記
登録免許税計算
建物評価価格:300万円(仮) ①
土地評価価格:700万円(仮) ②
①+②=1,000万円
1,000万円×0・4%=40,000円(仮 登録免許税)
登記事項確認:331円×1=331円
登記事項証明書:完了:490円×1=490円 - 相続税の申告が必要な場合で、残高証明書を取得する場合、金融機関への手数料が追加となります。
報酬
遺産相続にかかる報酬については、 【遺産相続手続費用】相続登記と預貯金相続手続の費用(報酬)は、いくらが適正価格なのか?を参考にしてください。
- 相続登記:法務局1カ所目(例えば、大阪法務局)
基本報酬:55,000円(遺産分割協議書作成を含む) - 相続登記:法務局2カ所目(例えば、横浜地方法務局)
追加報酬:30,000円
遺産分割協議書の作成報酬は、基本報酬:55,000円に含まれます。 - 預貯金の相続手続
預貯金の相続手続の報酬は、金融機関1カ所当たり30,000円(税抜き)。
預貯金4件を依頼されたとして計算します。 - 株式の相続手続
株式の相続手続の報酬は、証券会社1カ所当たり40,000円(税抜き)。
証券会社1件を依頼されたとして計算します。 - 法定相続情報証明書取得
法定相続情報証明書の取得報酬は、10,000円(税抜き)。
→ 不動産のみの手続の場合、10,000円(税抜き)の追加となります。
預金の相続手続を依頼される場合は、報酬:0円です。
以上これらに消費税10%がプラスされます。
まとめ:遺産が多数ある場合の相続登記・預貯金など相続手続の方法・手順・費用
遺産が不動産、預貯金、株式など多数ある場合、不動産の相続登記、預貯金、株式のなど相続手続では、まずは、除籍戸籍謄本など必要書類を収集し、その後、遺産分割協議書など書類の作成をします。
これらが終了しましたら、不動産の相続登記、預貯金、株式など相続手続を行います。
遺産が多数ある場合は、手続の順番をよく検討した方がよいでしょう。
また、遺産が多数あるため、それぞれ手続の進捗を確認できるように、遺産の一覧表を作成するようにするとよいでしょう。
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