台湾籍の方の相続:金融機関から「念書」や「誓約書」の提出を求められたとき

台湾籍の方の相続:金融機関から「念書」や「誓約書」の提出を求められたとき

被相続人が日本人の場合に、法務局には「上申書」を提出

不動産の相続登記において、手続先の法務局に対し「上申書」を提出することがあります。
この上申書を提出する目的は、日本人が被相続人の場合、除籍謄本など戸籍の一部が存在しないため、「被相続人の出生から死亡までの除籍謄本など」を提出できないときに法務局に提出します。

これは、相続登記では、法定相続分による登記遺産分割協議書による登記では、「被相続人の出生から死亡までの除籍謄本など」で、法定相続人が誰であるかを証明し、被相続人の法定相続人を確定する必要があるからです。
そこで、「被相続人の出生から死亡までの除籍謄本など」を提出できない場合に、被相続人の法定相続人を確定できないため、除籍謄本など戸籍の一部が存在しないこと、他に相続人がいないことを上申書に記載することによって、法定相続人が誰であるかを補完します。

この上申書には、例えば、次のような内容を記載します。

上申書(一部省略)
下記、相続による所有権移転登記を申請するに当たり、被相続人○○に関する除籍謄本、改製原戸籍謄本の一部が戦災による焼失のため添付することができません。
被相続人○○の法定相続人が○○及び○○のみであり、他に相続人がいないことに相違ないことを上申いたします。

日本の戸籍では、「戸籍の一部が戦災による焼失のため」などの理由により、役所が除籍謄本などを発行できない場合は、これを発行できない旨の理由を付して証明書を発行してくれますので、「発行できない旨の証明書」と「上申書」の両方をセットで法務局に提出します。これで法務局は、登記を完了させてくれます。

被相続人が日本人の場合の「上申書」の内容は、前述のとおり、事細かに記載する必要はなく、①戸籍の一部を提出できない理由と②他に相続人がいないことを記載するれば、問題ありません。

「被相続人の出生から死亡までの除籍謄本など」を提出できないとき、相続登記の場合は、法定相続分による登記では、この「上申書」を作成し、法務局に提出します。遺産分割協議書による登記では、上申書を作成しなくても、遺産分割協議書に次の文言を記載すれば、「上申書」を提出することと同じことになりますので、「上申書」を作成、提出する必要がありません。

遺産分割協議書(一部省略)
被相続人○○(〇年〇月〇日生)の〇年〇月〇日日死亡により開始した相続につき、同人の相続人全員において遺産分割協議を行った結果、下記のとおり決定した。なお、同人の相続人は、(配偶者)○○、(長男)○○、(二男)○○、(長女)○○であり、他に相続人はいない。

以上は、不動産の相続登記における「上申書」ですが、これは、預貯金などの相続手続でも同様に、手続先の金融機関などに「誓約書」などのタイトルで、相続登記の「上申書」と同様の内容で作成し、提出すれば、問題なく、預貯金などの相続手続が完了します。
遺産分割協議書による手続の場合も、「誓約書」などを作成しなくても、遺産分割協議書に「他に相続人がいないこと」を記載すれば、相続手続が完了します。

被相続人が台湾籍の方の場合も、法務局には「上申書」を提出

被相続人が台湾籍の方の場合も、台湾での戸籍の一部がないため、被相続人の法定相続人を確定できないときは、法務局に「上申書」を提出します。

被相続人が台湾籍の方の場合、戸籍の一部がないことの証明書を台湾の役所は発行しませんので、この場合の上申書には、被相続人が日本人の場合と比較して、より詳細な事情を上申書に記載する必要があります。

通常、法務局でも金融機関でも、上申書(金融機関の場合は誓約書)に①戸籍の一部を提出できない詳細な理由と②他に相続人がいないことを記載すれば、相続手続を完了させてくれます。
次を参考にしてください。
相続登記と相続人が外国人(台湾の方)

金融機関から「念書」や「誓約書」の提出を求められたとき

前述のように、通常、法務局でも金融機関でも、上申書(金融機関の場合は誓約書)に①戸籍の一部を提出できない詳細な理由と②他に相続人がいないことを記載すれば、相続手続を完了させてくれますが、金融機関によっては、詳細な内容を記載した「誓約書」を提出しているにもかかわらず、さらに、「念書」や「誓約書」の提出を求める金融機関(埼玉りそな銀行)もあります。

次の内容の文書の提出を再度、求められる場合があります。

念書(一部省略)
貴行 支店取引の   は、 年 月 日に死去いたしました。
つきましては、私ども以外に相続人は存在しておりませんので    の
相続人として、貴行所定の「相続手続依頼書」を提出し、相続の手続を依頼いたします。
本取扱いにつき、万ー後日紛議が生じましても私どもが責任を負い、貴行には一切損害・迷惑をおかけいたしません。

このような場合は、次の書面を作成し、再度の「念書」の提出には応じられない旨を記載して、金融機関に提出します。

「念書」を返却する理由について(一部省略)
次の理由により「念書」を返却します。
すでに提出済みの「上申書兼誓約書」には、次の内容を記載しております。
「被相続人の相続人は次の〇名であり、下記内容が真実であり、下記の理由により他に相続人のいないことを上申、誓約いたすとともに、各手続先に対しご迷惑をおかけすることなく、万が一、異議等があった場合には、私らで対処いたすことを誓約いたします。」

 貴行より送付された「念書」には、次の内容が記載されています。
「つきましては、私ども以外に相続人は存在しておりませんので    の相続人として、貴行所定の「相続手続依頼書」を提出し、相続の手続を依頼いたします。
本取扱いにつき、万ー後日紛議が生じましても私どもが責任を負い、貴行には一切損害・迷惑をおかけいたしません。」

以上の内容から、すでに提出済みの「上申書兼誓約書」と貴行より送付された「念書」の内容に大きな違いはなく、内容としては同じことを意味しています。
すでに提出済みの「上申書兼誓約書」のほかに、貴行指定の「念書」を提出させることは、相続人に対して過度な負担を強いることとなります。
今回の相続手続では、台湾での戸籍の取得、外国人登録原票証明書の取得など、相続人にとっては、日本人の相続手続とは比較にならないほどの苦労や負担をしています。
また、すでに、不動産の相続登記では、「上申書兼誓約書」を〇地方法務局〇支局に提出しており、登記が完了しております。〇地方法務局〇支局からは、「上申書兼誓約書」のほかに、「念書」なるものは要求されておりませんでした。
よって、もし、さらに「念書」の提出を要求するのであれば、①「上申書兼誓約書」のほかに「念書」を提出しなければならない理由を示していただき、②貴行の責任ある方の正式な文書で要求することを希望します。

この内容の文書を提出したところ、預金手続きは問題なく完了しました。(2023年埼玉りそな銀行)

相続登記や預貯金(預金・貯金)の相続手続については、当司法書士事務所にご相談ください。

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