兄弟姉妹の相続放棄後の相続登記。手順と必要書類を解説!登記費用もご紹介

  1. 相続放棄があったときの法定相続登記(兄弟姉妹)の方法
    1. 法定相続人を確定する。
      1. 被相続人長女の法定相続人は
      2. 被相続人二男の相続人は
    2. 相続登記の方法:数次相続の法定相続分で登記
    3. 相続登記の手順:数次相続の法定相続分で登記
      1. 法定相続分の確定
        1. (1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
        2. (2)被相続人二男について二女名義とする相続登記
      2. 必要書類の取得、相続放棄申述受理証明書の取得
          1. 被相続人長女についての相続登記(相続人は兄弟姉妹)
          2. 被相続人二男についての相続登記(相続人は兄弟姉妹)
          3. その他の必要書類
      3. 相続関係説明図の作成
        1. (1)相続関係説明図:被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
        2. (2)相続関係説明図:被相続人二男について二女名義とする相続登記
      4. 登記申請書の作成:数次相続の法定相続分で登記
        1. (1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
        2. (2)登記申請書:被相続人二男について二女名義とする相続登記
    4. 相続登記完了後の登記記録(登記簿)
    5. 当司法書士事務所の登記費用:相続登記費用
    6. まとめ:相続放棄があったときの法定相続登記(兄弟姉妹)の方法
  2. 相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成については、当司法書士事務所にご相談ください。

相続放棄があったときの法定相続登記(兄弟姉妹)の方法

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

【相続登記事例】
土地・建物は、被相続人長女名義です。被相続人長女には配偶者も子もおりません。
相続人は、被相続人長女の兄弟姉妹の長男、二女、二男で、長男は、被相続人長女について相続放棄(家庭裁判所の相続放棄申述申立て)をしました。
被相続人長女の死亡後、二男が死亡し、二男の配偶者と子が、二男(父)について相続放棄(家庭裁判所の相続放棄申述申立て)をしました。その後、長男は、二男について相続放棄(家庭裁判所の相続放棄申述申立て)をしました。
この場合、相続登記をするには、どういう書類が必要で、どういう登記の方法をすればよいのか教えてください。また、この登記を司法書士に依頼する場合の費用についても教えてください。
固定資産評価価格は、土地が800万円、建物が200万円です。
被相続人長女名義の土地建物
被相続人長女名義の土地建物
相続関係図:兄弟姉妹が相続放棄
相続関係図:兄弟姉妹が相続放棄
登記記録(登記簿):名義人長女
登記記録(登記簿):名義人長女

法定相続人を確定する。

事例の場合、被相続人長女には配偶者も子もいなかったことから、兄弟姉妹が法定相続人となります。父母、祖父母は、すでに死亡しています。

法定相続人の順番
法定相続人の順番

被相続人長女の法定相続人は

被相続人長女の法定相続人は、長女の兄弟姉妹の長男、二女、二男。長男が相続放棄をしたので、最終的な法定相続人は、二女と二男。

民法(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

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被相続人二男の相続人は

被相続人二男の相続人は、二男の配偶者と子。配偶者と子が相続放棄をしたので、相続人は、兄弟姉妹の長男と二女。さらに、二男の相続人となった長男が相続放棄をしたので、最終的な法定相続人は、二女のみ。

相続登記の方法:数次相続の法定相続分で登記

事例の場合、相続放棄によって、法定相続人は二女のみのため、長女名義の土地・建物を、最終的に二女名義とするには、死亡した順番(長女→二男)に、すべて法定相続分で(数次相続)登記し、次のように登記します。これらをまとめて同時に登記申請します。

(1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
(2)被相続人二男について二女名義とする相続登記

相続登記の手順:数次相続の法定相続分で登記

事例の場合、次の手順で相続登記申請の準備をします。
(1)法定相続分の確定
(2)必要書類の取得、相続放棄申述受理証明書の取得
(3)相続関係説明図の作成
(4)登記申請書の作成

法定相続分の確定

事例では、すべて法定相続分で登記しますので、まずは、それぞれの登記の法定相続分を確定する必要があります。

(1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記

最初の登記で、(亡)二男はすでに死亡していますが、死者名義で登記することになります。
死者名義の相続登記(不動産名義変更):死者名義の相続登記ができるのか?を参考にしてください。

相続人の法定相続分は、兄弟姉妹二女と(亡)二男2名の法定相続分にしたがって、次のように計算します。
   二女:2分の1
(亡)二男:2分の1

民法(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

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(2)被相続人二男について二女名義とする相続登記

被相続人二男の法定相続分が2分の1であるため、この持分を二女が相続することになります。
二男の配偶者と子が相続放棄をし、この相続放棄で、二男の相続人となった兄の長男も相続放棄をしています。

最終的な二女の持分(所有権)の確認
(1)(2)の相続登記をすることで、二女が単独名義人となることを確認します。
(1)の相続登記:二女持分2分の1、(亡)二男持分2分の1
(2)の相続登記:二女持分2分の1
二女:1/2+1/2=2/2=1

必要書類の取得、相続放棄申述受理証明書の取得

(1)(2)の相続登記で必要となる書類を取得します。基本的に必要となる書類は、次のとおりです。

被相続人長女についての相続登記(相続人は兄弟姉妹)
  1. 長女の除籍謄本など(長女の出生から死亡まで)
    住民票の除票(本籍記載必須) 1通(または戸籍の附票(本籍記載必須)
    登記名義人長女と被相続人長女が同一人物であることを証明する必要があります。
    ただし、保存期間の経過によって取得できない場合があります。この場合、法務局に「長女名義の権利証」などを提出します。
  2. 父母の除籍謄本など(父母の出生から死亡まで)
    これにより、長女の兄弟姉妹が、長男、二女、二男のほかにいないこと、父母がすでに死亡していることを証明します。
  3. 祖父母の除籍謄本
    祖父母がすでに死亡していることを証明します。
  4. 長男の戸籍謄本、相続放棄申述受理証明書
    長男が相続放棄しているので、これを証明します。
    相続人の二女が、放棄した長男の利害関係人として、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を申請します。
  5. 二女の戸籍謄本と住民票
    相続人であることを証明します。名義人となるため住民票が必要です。
  6. 二男の戸籍謄本と住民票除票
    相続人であること、長女の後に死亡していることを証明します。名義人(死者名義)となるため住民票が必要です。
被相続人二男についての相続登記(相続人は兄弟姉妹)

(被相続人長女についての相続登記で使用する書類と重複する場合は、各1通で足りる。)

  1. 二男の除籍謄本など(二男の出生から死亡まで)
    二男に配偶者と子がいることを証明します。ほかに子がいないことを証明します。
    住民票の除票(本籍記載必須) 1通(または戸籍の附票(本籍記載必須)
  2. 父母の除籍謄本など(父母の出生から死亡まで)
    これにより、二男の兄弟姉妹が、長女、長男、二女のほかにいないこと、父母がすでに死亡していることを証明します。
  3. 祖父母の除籍謄本
    祖父母がすでに死亡していることを証明します。
  4. 長男の戸籍謄本、相続放棄申述受理証明書
    長男が相続放棄しているので、これを証明します。
    相続人の二女が、放棄した長男の利害関係人として、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を申請します。
  5. 二女の戸籍謄本と住民票
    相続人であることを証明します。名義人となるため住民票が必要です。
  6. 配偶者と子の戸籍謄本、相続放棄申述受理証明書
    配偶者と子が相続放棄しているので、これを証明します。
    相続人の二女が、(亡)二男の配偶者と子の利害関係人として、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を申請します。
相続放棄申述受理証明書
相続放棄申述受理証明書
その他の必要書類

固定資産税納税通知書・課税明細書(または、評価証明書、名寄帳)

相続関係説明図の作成

次の順番で相続関係説明図を作成し、それぞれの相続登記申請書の「登記原因証明情報」の一部とします。

(1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
(2)被相続人二男について二女名義とする相続登記

(1)相続関係説明図:被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
相続関係説明図(相続放棄):被相続人長女
相続関係説明図(相続放棄):被相続人長女
(2)相続関係説明図:被相続人二男について二女名義とする相続登記
相続関係説明図(相続放棄):被相続人二男
相続関係説明図(相続放棄):被相続人二男

登記申請書の作成:数次相続の法定相続分で登記

次の順番で登記申請書を作成し、この順番で法務局に必要書類を揃えて提出します。
(1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記
(2)被相続人二男について二女名義とする相続登記

(1)被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記

被相続人長女について二女・(亡)二男名義とする相続登記では、二女が申請人となり、自分の持分2分の1と(亡)二男の持分2分の1の申請をします。
民法252条5項の保存行為による他の共有名義人のための相続登記は、各共有者が単独で申請することができます。

民法(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
(中略)
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

民法 | e-Gov 法令検索
 (1/2)登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原   因 令和3年〇月〇日(長女の死亡日)相続
相 続 人 (被相続人 長女氏名○○)
     (住所)○○
      持分2分の1
申請人)(二女氏名)○○ 登記識別情報の発行を希望する。
     (住所)○○
      持分2分の1
  (亡)(二男氏名)○○
添付情報
 登記原因証明情報 住所証明情報 代理権限証明情報 評価証明情報
課税価格  金600万円
登録免許税 金24,000円
      土地持分2分の1につき租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税
不動産の表示(省略)

土地の相続登記で、令和7年(2025年)3月31日までに登記申請する場合、登録免許税が非課税となる場合があります。登記名義人の1次相続人が死亡している場合(土地の所有権移転登記)を参考にしてください。

登録免許税の計算方法
評価価格 土地:800万円
     建物:200万円
土地:800万円のうち
 (亡)二男1/2は非課税
400万円+200万円=600万円(課税価格)
600万円×0・4%=24,000円(登録免許税)
(亡)二男:2分の1は、死者名義での登記のため、租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税となります。
「登記識別情報」の発行について
「登記識別情報」は、登記名義人の所有権を証明する書類(権利証)として重要です。相続登記が完了しましたら、登記識別情報(タイトル:登記識別情報通知)を法務局から受け取るようにします。この登記識別情報は、今後、不動産を売却するときや抵当権を設定登記するときなどに使用します。
死者名義で登記された二男については、二女が保存行為として単独で申請していますので、登記された二男の登記識別情報は発行されません。
最終的に二女の登記識別情報は、
(1)(2)の相続登記で発行される登記識別情報の全部を併せて、不動産全体の権利証となります。
(2)登記申請書:被相続人二男について二女名義とする相続登記
 (2/2)登記申請書(一部省略)
登記の目的 二男持分全部移転
原   因 令和5年〇月〇日(二男の死亡日)相続
相 続 人 (被相続人 二男氏名○○)
     (住所)○○
      持分2分の1
     (二女氏名)○○ 登記識別情報の発行を希望する。
添付情報
 登記原因証明情報(一部前件添付) 住所証明情報(前件添付) 代理権限証明情報
 評価証明情報(前件添付)
移転した持分の課税価格 金500万円
登録免許税 金20,000円
不動産の表示(省略)
登録免許税の計算方法
評価価格 土地:800万円
     建物:200万円
1,000万円×1/2(二男持分)=500万円(課税価格)
500万円×0・4%=20,000円(登録免許税)

相続登記完了後の登記記録(登記簿)

事例の場合、(1)(2)の相続登記をすることで、登記記録(登記簿)には、次のように登記されます。

登記記録(登記簿):数次相続(相続放棄)
登記記録(登記簿):数次相続(相続放棄)

(以上、2024年千葉地方法務局成田出張所で登記完了)

当司法書士事務所の登記費用:相続登記費用

相続登記(数次相続登記)にかかる費用
相続登記費用
司法書士報酬:約80,000円
登録免許税・証明書:約50,000円
合計:約130,000円

まとめ:相続放棄があったときの法定相続登記(兄弟姉妹)の方法

この事例は、被相続人長女の死亡後、長男が相続放棄をし、さたに、二男が死亡し、二男の配偶者と子が、長男も相続放棄。以下は、その手順と必要書類の概要です。

  1. 相続人の法定相続分の確定
    被相続人長女の相続分:二女1/2、(亡)二男1/2
    被相続人(亡)二男の相続分:二女1/2
    二女の所有権が1(全部)となることを確認
  2. 必要書類の取得
    除籍謄本、住民票の除票、戸籍謄本、評価証明書、相続放棄申述受理証明書などが必要。
  3. 相続関係説明図の作成
    被相続人長女、二男それぞれの相続関係説明図を作成し、登記申請書に添付。
  4. 登記申請書の作成
    被相続人長女、二男それぞれの相続登記申請書を作成し、最終的に二女名義とする。
  5. 相続登記の完了
    登記完了後、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、正しく登記されていることを確認。
  6. 費用の確認
    登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかる。

この手順にしたがうことで、姉名義の土地・建物を二女名義とする相続登記が完了します。

相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成については、当司法書士事務所にご相談ください。

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相続登記相談風景(イメージ)
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