代償分割による相続登記

代償分割による相続登記

代償分割とは

相続の遺産分割で、ある相続人が、例えば、不動産を相続取得する代わりに、その代償として金銭その他の財産を他の相続人に支払う遺産分割方法のことを代償分割といいます。

遺産分割協議書に記載する代償分割の内容は、例えば、相続人A(兄)が不動産、預貯金、車など遺産の全てを相続取得する代わりに、代償金として、相続人B(弟)に金○○円を支払う、という記載内容です。

この代償金額は、不動産、預貯金と車を合計した金額に対して、相続財産全体の金額の範囲内であれば、いくらでもかまいません。税法上の問題は発生しません。
ただし、代償金額が、相続財産全体の金額を上回る場合には、上回った金額は贈与税の対象となります。
相続人B(弟)が受け取る代償金額が、相続財産全体の金額より多いときは、その差額に対して相続人B(弟)に贈与税がかかることになります。

相続財産全部の合計金額が、例えば、5千万円で、相続人Bに支払う金額が、2千万円だとしても、この金額で相続人Bが納得すれば、税法上問題ありません。

遺産分割協議による代償分割(相続人○○に代償金として金○○円を支払う。)の方法の場合、基本的に税法(贈与税)上、相続財産の範囲内であれば、問題ありませんが、遺産分割協議で代償分割をしないで(ほかの相続人に対する代償金を記載しないで)、相続人の一人に相続取得させ、後日、ほかの相続人に金銭で分配する方法とすることは、ほかの相続人に贈与税の問題が生じますので注意が必要です。

代償分割の場合の遺産分割協議書の書き方については、次を参考にしてください。

代償分割の場合の遺産分割協議書の書き方

                遺産分割協議書(例)

被相続人:横浜右衛門(昭和〇年〇月〇日生)の令和〇年〇月〇日死亡により開始した相続につき、同人の相続人全員において遺産分割協議を行った結果、下記のとおり決定した。
(次の事項を記載してもしなくても問題ありません。)
被相続人の最後の本籍・最後の住所、相続人の氏名
 → 被相続人と相続人の相続関係が、遺産分割協議書全体の内容から特定、すなわち判明できるからです。

1.相続人:横浜太郎は、次の遺産を相続取得する。(「相続」という言葉を記載してもしなくても問題ありません。相続により取得することが明らかだからです。)

  【不動産】
   (土地の場合の記載方法:基本は登記事項に記載されているとおりに記載します。固定資産税の課税台帳登録事項証明書に記載されている内容で記載しても問題ありません。不動産が特定できれば問題ありません。)
   所  在  横浜市中区関内
   地  番  100番1
   地  目  宅地
   地  積  100・00平方メートル

   (建物(家屋)の場合の記載方法:基本は登記事項に記載されているとおりに記載します。固定資産税の課税台帳登録事項証明書に記載されている内容で記載しても問題ありません。不動産が特定できれば問題ありません。)
   所  在  横浜市中区関内 100番地1
   家屋番号  100番1
   種  類  居宅
   構  造  木造スレート葺2階建
   床 面 積  1階 50・00平方メートル
         2階 40・00平方メートル
 
   (マンション(敷地権付きマンション)の場合の記載方法:基本は登記事項に記載されているとおりに記載します。固定資産税の課税台帳登録事項証明書に記載されている内容で記載しても問題ありません。 不動産が特定できれば問題ありません。 )
   一棟の建物の表示
    所   在  横浜市中区関内 100番地1
    建物の名称  横浜みなとみらいマンション
    専有部分の建物の表示
    家屋番号   関内 100番1の101
    建物の名称  101
    種   類  居宅
    構   造  鉄筋コンクリート造1階建
    床 面 積  1階部分 80・00平方メートル
   敷地権の表示
    符   号  1
    所在及び地番  横浜市中区関内100番1
    地   目  宅 地
    地   積  1000・21平方メートル
    敷地権の種類 所有権
    敷地権の割合 1万分の100

2.相続人:横浜太郎は、預金・貯金のすべてを取得する。
 (預金・貯金のすべてを取得する場合、預貯金の金融機関名・口座番号などを記載してもしなくても問題ありません。)

3.相続人:横浜太郎は、次の保険に係る保険金を取得する。
 保険会社 :
 保険の名称:
 保険証書記号番号:
 保険金額 :金〇〇万円

4.横浜太郎は、横浜次郎に対し、代償金として金1,000万円を支払う。
5.その他の遺産があった場合は、横浜太郎がすべてを取得する。
  (あるいは、その他の遺産があった場合、相続人が協議して決定する。)

6.横浜次郎は、横浜太郎が相続手続きを行うことに協力し、手続きに必要な書類及び必要な書類に署名・捺印し、横浜太郎に交付する。
  また、横浜次郎は、横浜太郎が行う相続手続きが上記代償金の支払いに優先して(と同時に)行われることに同意する。

上記の協議が成立したことを証するため、この協議書を作成し、各自署名捺印する。

令和〇年〇月〇日

相続人 (住所)神奈川県横浜市中区関内10番1号  
    (氏名) 横浜太郎(署名)   ㊞ (実印を鮮明に押印)                     相続人 (住所)神奈川県横浜市中区関内10番1号      
    (氏名) 横浜次郎(署名)   ㊞ (実印を鮮明に押印)

(相続人の氏名の記入は、記名ではなく(パソコンで入力・印刷することなく)極力、本人の自署がよいでしょう。住所の記入も同様です。後日のトラブルを避ける意味があります。また、住所の記入方法は、印鑑証明書に記載されたとおりに住所を記入するのが基本ですが、番・号や番地を省略して、-(ハイフン)で記入しても問題ありません。-(ハイフン)で記入することは、日常的に普通、行われているからです。(運転免許証の住所は、-(ハイフン)で記載されています。)

相続税における代償分割が行われた場合の課税価格の計算

次の国税庁のサイト「第11条の2《相続税の課税価格》関係」を参考にしてください。(相続税については、税理士または税務署でご確認ください。)

(代償分割が行われた場合の課税価格の計算)
11の2-9 代償分割の方法により相続財産の全部又は一部の分割が行われた場合における法第11条の2第1項又は第2項の規定による相続税の課税価格の計算は、次に掲げる者の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによるものとする。(平4課資2-231追加)
(1) 代償財産の交付を受けた者 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた代償財産の価額との合計額
(2) 代償財産の交付をした者 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から交付をした代償財産の価額を控除した金額
(注)「代償分割」とは、共同相続人又は包括受遺者のうち1人又は数人が相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して債務を負担する分割の方法をいうのであるから留意する。

第11条の2《相続税の課税価格》関係|国税庁 (nta.go.jp)

最初の例で言えば、遺産全体の価格を2,000万円とすれば、 代償分割が行われた場合の課税価格の計算は、次のとおりです。(控除なしとして計算します。)
(1) 代償財産の交付を受けた者(弟B)
   「相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額(例えば、0円)」
  +「交付を受けた代償財産の価額との合計額(例えば、1,000万円)」
  =課税価格(1,000万円)
(2) 代償財産の交付をした者(兄A)
   「相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額 (例えば、2,000万円) 」
  -「交付をした代償財産の価額を控除した金額 (例えば、1,000万円) 」
  =課税価格 (1,000万円)

なお、相続不動産の換価分割については、不動産売却のための換価分割と代償分割(相続相談:登記の方法)を参考にしてください。
居住用相続不動産の売却については、 居住用相続不動産を売却する場合、代償分割か換価分割かの選択(相続登記)と売却方法を参考にしてください。

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