法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が届いた場合の相続登記の方法
「特定所有者不明土地」について土地を管轄する法務局から「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が届いた場合、相続登記(名義変更)をする方法について解説します。
「特定所有者不明土地」については、法務省の次のサイトでご確認ください。この通知は、法定相続人が複数いる場合、任意の一人に通知されます。
相続登記の必要性
相続開始により不動産の取得を知った日から3年以内に登記しなければならなくなります。
施行日 (令和6年) の前に不動産の相続取得を知った場合、施行日から3年以内に登記しなければなりません。
相続登記をしない場合、10万円以下の過料に処せられます。(正当な理由がある場合を除く。)
早めに登記した方がよいでしょう。
相続登記する不動産は土地
相続登記する不動産は土地に限られます。「特定所有者不明土地」であるので土地のみです。
「特定所有者不明土地」とは、所有者不明土地のうち、現に建築物(物置その他の政令で定める簡易な構造の建築物で政令で定める規模未満のもの(以下「簡易建築物」という。)を除く。)が存せず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地のことをいいます。(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法第2条第2項)
「長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)」が届いた場合の相続登記の手順
その1:土地を管轄する法務局で次の内容を確認、証明書を取得します。
(1)土地の登記事項証明書を取得します。
「所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨」の登記がなされますので、これが登記されていることを確認します。
相続登記をすれば、「この旨の登記」は抹消登記されます。
(2)法定相続人情報を閲覧して内容を確認します。法務局に出向きます。
この閲覧を司法書士に依頼(委任)することができます。
法定相続人情報を閲覧するには次の書類と印鑑が必要です。
① 通知書(司法書士に「閲覧」を委任する場合、「法定相続人情報の作成番号」を委任状に記載します。)
② 認印
③ 身分証明書(運転免許証など写真付きのもの)
または
実印・印鑑証明書
「法定相続人情報」には、次の内容が記載されています。(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令第1条2項)
1 被相続人である所有権の登記名義人の
氏名、出生の年月日、最後の住所、登記簿上の住所及び本籍並びに死亡の年月日
2 (前号の)登記名義人の相続人(被相続人又はその相続人の戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書により確認することができる相続人となり得る者)の
氏名、出生の年月日、住所及び当該登記名義人との続柄(当該相続人が死亡しているときにあっては、氏名、出生の年月日、当該登記名義人との続柄及び死亡の年月日)
3 (第一号の)登記名義人の相続人(「第一次相続人」)が死亡している場合には、第一次相続人の相続人(次号において「第二次相続人」という。)の
氏名、出生の年月日、住所及び第一次相続人との続柄(当該相続人が死亡しているときにあっては、氏名、出生の年月日、当該第一次相続人との続柄及び死亡の年月日)
4 第二次相続人が死亡しているときは、第二次相続人を第一次相続人と、第二次相続人を第一次相続人の相続人とみなして、前号の規定を適用する。当該相続人(その相続人を含む。)が死亡しているときも、同様とする。
5 相続人の全部又は一部が判明しないときは、その旨
6 作成番号
7 作成の年月日
その2:相続登記の方法
相続登記に必要な書類は、次のとおりです。(固定資産税評価証明書は省きます。)
法定相続分で登記するのか遺産分割協議書で登記するのかを選択します。
法定相続分で登記する方法
法定相続分で登記する場合、法定相続人全員の住所・(持分)・氏名で登記します。
したがって、登録免許税を法定相続人全員分を納める必要があります。
法定相続分で登記する場合は、法定相続人の一部の人だけを登記することができません。(家庭裁判所の相続放棄した人を除く。)
法定相続分で登記の必要書類
登記申請書の添付情報(登記原因証明情報)として、「法務局からの通知書」に記載されている「法定相続人情報の作成番号」を登記申請書に記載します。この記載があれば、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係書類(除籍謄本など)と相続人全員の戸籍謄本を法務局に提出する必要がありません。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特例に関する省令 | e-Gov法令検索
(添付情報の省略)
第八条 表題部所有者又は登記名義人の相続人が登記の申請をする場合において、当該表題部所有者又は登記名義人に係る法定相続人情報の作成番号(法定相続人情報に第一条第二項第五号に規定する事項の記録がないものに限る。)を提供したときは、当該作成番号の提供をもって、相続があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。次項において同じ。)その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。
2 表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記の申請をする場合又は登記名義人の相続人が相続による権利の移転の登記の申請をする場合において、法定相続人情報の作成番号(法定相続人情報に当該相続人の住所が記録されている場合に限る。)を提供したときは、当該作成番号の提供をもって、登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。
被相続人の死亡時の「住所を証明する書類」:住民票除票または戸籍の附票
相続人全員の「住所を証明する書類」:住民票または戸籍の附票
→ 申請人となる相続人の住所証明書は添付省略できます。(?)(大阪法務局回答)
登記申請書は、相続登記申請書の書き方を参考にしてください。
遺産分割協議書で登記する方法
法定相続人全員で通知書に記載の土地を誰がどれを取得するのかを協議して、遺産分割協議書を作成します。これに相続人全員が署名・実印を押印します。(家庭裁判所の相続放棄した人を除く。)
遺産分割協議書で登記の必要書類
登記申請書の添付情報(登記原因証明情報)として、「法務局からの通知書」に記載されている「法定相続人情報の作成番号」を登記申請書に記載します。この記載があれば、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係書類(除籍謄本など)と相続人全員の戸籍謄本を法務局に提出する必要がありません。
被相続人の死亡時の「住所を証明する書類」:住民票除票または戸籍の附票
相続人全員の「住所を証明する書類」:住民票または戸籍の附票
→ 申請人となる相続人の住所証明書は添付省略できます。(?)(大阪法務局回答)
その他
遺産分割協議書:法定相続人全員が署名・実印を押印
法定相続人全員の印鑑証明書
登記申請書は、相続登記申請書の書き方を参考にしてください。
相続人が複数いるが遺産分割協議書を作成できないときの相続登記の方法
相続人が複数いて遺産分割協議が成立するまで時間がかかる場合があります。そうしますと、相続人全員の遺産分割協議書に署名・実印を押印してもらい、印鑑証明書を用意してもらうのに時間がかかることになります。
特に、令和6年から相続登記の義務化が開始され、この日から3年以内に登記されない場合は、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。(正当な理由がある場合を除く。)
このような場合、とりあえず法定相続分での登記をするという選択も考えられます。
その後、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書に基づいて登記をすれば問題がないことになります。
この場合の登記の方法は、法定相続登記後に遺産分割協議(調停)が成立した時の登記の方法を参考にしてください。