相続土地の相続登記と共有物分割方法:3パターン

相続土地の相続登記と共有物分割方法:3パターン

【事例】
被相続人:父
法定相続人:兄(長男)、弟(二男)、姉(長女)、妹(二女)の4名(母は、すでに他界)

遺産
土地(更地):600㎡ ➡登記上6筆に分かれている。
評価価格 土地:6,000万円

この相続した土地を兄弟姉妹4名で分ける方法について検討します。次の3パターンがあります。

パターンA:よくあるパターン(まだ何も登記していない。
相続した土地を兄弟姉妹で4等分して、それぞれが取得したい。

パターンB:兄弟姉妹の持分を各4分の1(法定相続分)で、土地の相続登記だけを先に完了している。
相続した土地を兄弟姉妹で4等分して、それぞれが取得したい。

パターンC:遺産分割(遺産分割協議)で兄、弟の持分を各2分の1とし、土地の相続登記だけを先に完了している。姉と妹は、相続しなかった。
相続した土地を兄弟で2等分して、それぞれが取得したい。

パターンA:相続登記と共有物分割方法(まだ何も登記していない。)

相続した土地を兄弟姉妹で4等分して、それぞれが取得したい。
次の順番で手続をします。

(1)合筆、分筆の登記

まず、現在、600㎡の土地が、登記上6筆(ひつ)に分かれていますので、これを一つにまとめて1筆(ぴつ)とします。これを合筆(ごうひつ)登記といいます。
この合筆登記と同時に、土地を4つに分ける分筆(ぶんぴつ)登記をします。

点線の部分は、合筆によって消滅しています。

合筆、分筆の登記の専門家は、土地家屋調査士です。司法書士は、この登記ができません。司法書士が登記を代行できるのは、不動産の「権利に関する登記」だからです。
土地家屋調査士は、不動産の「表示に関する登記」を代行できます。

合筆登記ができる条件

合筆登記をする前提として、6筆の土地を合筆できる条件があります。

  1. 土地の地目」(ちもく)が同じであること
    例えば、A土地が宅地で、B土地が畑の場合、地目が異なりますので、このままでは合筆できません。合筆する前に、畑を宅地に地目変更できれば合筆できます。
  2. 権利関係が同じであること
    例えば、A土地には抵当権が登記されているが、B土地には抵当権が登記されていない場合、権利関係が異なりますので、このままでは合筆できません。
    合筆する前に、A土地の抵当権を抹消登記できれば合筆できます。

これらの点について、合筆登記ができるかどうかは、合筆・分筆登記をする前に、土地家屋調査士が確認します。

分筆登記ができる条件

分筆登記ができる条件には、次のようなものがあります。

  1. 分筆登記をする際は、隣接所有者の同意書を得るのが基本です(不要の場合もあります)。
  2. 公道に面した土地では、分筆登記の前に、道路査定が行われていることが前提となります。
    分筆する際に、道路査定が行われていない場合は、道路査定をします。これは、土地家屋調査士が役所と打ち合わせをして、役所が道路査定を行います。
合筆・分筆登記にかかる費用

合筆・分筆登記にかかる費用は、土地家屋調査士によって異なります。
合筆登記にかかる費用は、数万円ですが、分筆登記にかかる費用は、土地の面積や形状により異なります。数十万円から50万円はかかると思われます。
分筆登記にかかる費用が高額となる理由は、土地の測量と図面作成が、極めて専門的な作業となるからです。

登記を前提とした測量や図面作成は、土地家屋調査士に依頼します。登記を代行していない測量会社や測量士には依頼しません。
なぜなら、測量と図面作成ができたとしても、登記ができなければ意味がないからです。

このように、土地の合筆、分筆では、クリアすべきことが多々あり、また、費用もかかることから、合筆、分筆の必要性を考えてから行うようにします。

これから説明しますことは、分筆、合筆をすることができることを前提に解説します。
ここでは、合筆、分筆の条件をクリアして、土地を4つに分筆できたとします。

(2)遺産分割協議による相続登記

土地を4つに分筆できたので、兄弟姉妹それぞれの名義で登記します。
4つの土地が兄弟姉妹それぞれ単独名義となります。

この登記では、兄弟姉妹それぞれの名義とする登記ですので、相続の仕方としては、遺産分割協議による登記(登記の原因は「相続」)をします。

相続登記に基本的に必要な書類は、相続登記の必要書類を参考にしてください。
申請書は、相続登記申請書の書き方を参考にしてください。

遺産分割協議書には、次の内容を記載します。

相続人兄は、A土地を相続取得する。
相続人弟は、B土地を相続取得する。
相続人姉は、C土地を相続取得する。
相続人妹は、D土地を相続取得する。

相続登記の申請は、実際に相続取得する兄弟姉妹4名別々に申請書を作成して、4件連件で申請します。これは、登記の目的(所有権移転)と相続の原因(〇年〇月〇日相続)が同じであっても、名義人となる申請人(相続人)が異なるからです。

「まだ何も登記していない」パターンA:相続登記と共有物分割方法は、
(1)合筆、分筆登記をする。
(2)遺産分割協議による相続登記で、各相続人単独名義とする。

それほど複雑な登記ではありません。

登録免許税

課税価格   金11,250,000円
登録免許税  金45,000円

課税価格は、
事例の場合、土地の評価価格が6,000万円
土地を4つに分筆したので、1筆当たり1,500万円
課税価格は、1,500万円

登録免許税は、登記原因が「相続」の場合、0・4%。
1,500万円×0・4%=60,000円。

相続登記4件合計で、登録免許税は、60,000円×4=240,000円

相続登記費用の司法書士報酬

以上の遺産分割(登記原因は「相続」)による相続登記で、相続登記費用のうち当司法書士事務所の司法書士報酬は、60,500円(税込み)です。

次の登記の方法もあります。

「まだ何も登記していない」パターンA:相続登記と共有物分割方法では、次の方法もあります。前述した方法でもどちらでも登記は可能です。相続人の実情に応じて行えばよいでしょう。

(1)合筆、分筆の図面を作成します。(測量が完了していることが前提)
(2)遺産分割協議をします。相続人の誰がどの土地を単独所有とするかを決めます。
(3)遺産分割協議書を作成します。
この遺産分割協議書には、分筆図面を付けて、相続人の誰がどの土地を相続