被相続人祖父(疎遠な・面識のない・知らない相続人がいる)・父名義の数次相続登記(相続登記相談)

被相続人祖父(疎遠な・面識のない・知らない相続人がいる)・父名義の数次相続登記(相続登記相談)

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

【相続登記相談】
建物所有者:被相続人 祖父
 祖父の相続人は、亡父を含めて7名、さらに、亡父の子(亡母)の夫・(ひ孫)長女と二女もいる。)
 亡父の兄弟姉妹とは、現在、付き合いがない。(疎遠な・面識のない・知らない相続人がいる。)
土地所有者:被相続人 父
 父の子(亡母)は、父死亡の後に死亡
 父の相続人:亡母の夫、長女と二女
評価価格
 建物:100万円
 土地:1,500万円
祖父名義の建物と父名義の土地を長女と二女の共有名義(各2分の1)としたい。
この場合、どういう方法で相続登記をしたらよいですか。相続登記費用もどのくらいかかるのかを教えてください。
相続で遺産分割する土地建物
相続で遺産分割する土地建物
相続関係図:祖父の相続人、父の相続人
相続関係図:祖父の相続人、父の相続人

相続登記の手順

相続登記の手順は、次のとおりです。

登記記録情報の入手

建物と土地の登記記録情報を入手し、名義人を確認します。
このため、固定資産税納税通知書・課税明細書が必要です。
権利証があれば、権利証も用意します。

祖父の相続人の調査

祖父の相続人、父母の相続人を確定・証明するために、除籍謄本・戸籍謄本・戸籍の附票を入手します。
祖父については、出生から死亡までの除籍謄本・戸籍の附票(保存期間の経過により取得できないかもしれない。)、祖父の相続人全員の戸籍謄本・戸籍の附票を入手します。

父についての出生から死亡までの除籍謄本・戸籍の附票(保存期間の経過により取得できないかもしれない。)を入手します。
亡母は父死亡後に死亡していますので、被相続人父の相続については、その子亡母が相続人となります。

まずは、亡母の除籍謄本(実際は戸籍謄本)・戸籍の附票を入手します。
この取得後、被相続人祖父・その相続人・父の除籍謄本・戸籍謄本・戸籍の附票を入手し、相続人の調査・確定します。祖父の子の住所などを特定します。

亡母の夫・長女・二女は、次の書類を入手します。
① 戸籍謄本
② 住民票
③ 印鑑証明書

祖父名義の建物の相続登記の方法:祖父の相続人全員への相続登記の協力要請

第一段階として、建物所有者が祖父ですので、相続人調査をした後、相続人全員に相続登記の協力要請(相続登記に協力してくれるのかどうかを打診)をします。
協力要請文書には、相続登記の協力金(数千円から)を支払う旨を記載します。協力金については、一応、建物の評価価格を基準にします。協力金(場合によっては代償金)をいくらにするのかを検討します。
協力要請の文書は、差出人を相続人の亡母の夫・長女・二女とします。
第一段階の協力要請の文書は、第一段階の通知方法・通知文書(手紙文)を参考にしてください。

第二段階として、祖父の相続人全員から相続登記の協力を得られた場合、相続人全員宛に、遺産分割協議書を郵送します。
この遺産分割協議書では、祖父の建物を亡父が相続取得することにします。ただし、長女・二女が持分各2分の1を相続取得するでも問題ありません。数次相続登記を参考にしてください。
次に、祖父の相続人全員から遺産分割協議書(実印で押印)と印鑑証明書1通を郵送してもらいます。
第二段階の遺産分割協議書を送付する文書は、第二段階の通知方法・通知文書(手紙文)(遺産分割の内容について検討)を参考にしてください。

父名義の土地の相続登記について

土地私有者が父(その子亡母は、その後に死亡)ですので、相続人は、まず、亡母、次に、亡母の夫・長女・二女です。
長女・二女の共有名義(各2分の1)にすることになりますので、遺産分割協議書を作成しての相続登記となります。
亡母の夫・長女・二女の3名(亡母の相続人として)で、遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書で長女・二女が各2分の1を相続取得することにします。

遺産分割協議書の作成

祖父と父についての遺産分割協議書は、別々に作成します。

祖父についての遺産分割協議書
   遺産分割協議書(一部省略)
被相続人(祖父)○○(大正〇年〇月〇日生)の昭和50年〇月〇日死亡による相続が開始したため、相続人全員において遺産分割協議をした結果、次のとおり決定した。
なお、相続人は、○○、○○・・・である。
相続人亡父○○は、次の不動産を取得する。
不動産の表示(建物省略)
(個別に署名捺印したものでも問題ありません。)
父の相続は、(亡母)が法定相続

父の相続人は、その子(亡母)が一人であるため、その子(亡母)が単独で相続します(法定相続)。

父の子(亡母)についての遺産分割協議書
   遺産分割協議書(一部省略)
被相続人(亡母)○○(昭和〇年〇月〇日生)の平成30年〇月〇日死亡による相続が開始したため、相続人全員において遺産分割協議をした結果、次のとおり決定した。
なお、相続人は、○○、○○・・・である。
相続人長女○○、二女○○は、次の不動産を各2分の1取得する。
不動産の表示(土地・建物省略)
(土地については、亡父からその子(亡母)が相続取得(法定相続)したものを、長女・二女が相続取得します。)
(夫・長女・二女が個別に署名捺印したものでも問題ありません。)

相続登記申請書の作成

事例の場合、建物と土地の「登記上の名義人」が異なりますので、建物と土地について相続登記申請書を別々に作成して、2件連件で申請します。

相続登記の場合、中間の相続人が一人の場合(事例の場合、亡父・その子亡母)、中間の相続登記を省略することができます。

1件目:祖父の相続登記申請書(建物)
(1/2)登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原   因 昭和50年〇月〇日(亡父)氏名相続平成20年〇年〇月〇日(亡母)氏名相続平成30年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 祖父)
      (住所)○○
      持分2分の1
      長女(氏名)○○ (登記識別情報の発行を希望します。)
      (住所)○○
      持分2分の1
      二女(氏名)○○ (登記識別情報の発行を希望します。)
添付情報
 登記原因証明情報 住所証明情報  評価証明情報
課税価格  金100万円
登録免許税 金4,000円(評価価格の0・4%)
不動産の表示(建物 省略)

相続関係説明図:①祖父についての相続関係説明図、②父についての相続関係説明図、③亡母についての相続関係説明図を3枚作成し、登記原因証明情報として添付します。

祖父の相続関係説明図
祖父の相続関係説明図
父の相続関係説明図
父の相続関係説明図
亡母の相続関係説明図
亡母の相続関係説明図

登録免許税の計算方法
評価価格 建物:100万円
登録免許税は「評価価格」の100万円に0・4%(税率)を乗じた税額で納めることになります。
100万円×0・4%=4,000円

2件目:父の相続登記申請書(土地)
 (2/2)登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原   因 平成20年〇年〇月〇日(亡母)氏名相続平成30年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父)
      (住所)○○
      持分2分の1
      長女(氏名)○○ (登記識別情報の発行を希望します。)
      (住所)○○
      持分2分の1
      二女(氏名)○○ (登記識別情報の発行を希望します。)
添付情報
 登記原因証明情報(一部前件添付) 住所証明情報(前件添付)  評価証明情報
課税価格  金1,500万円
登録免許税 金60,000円(評価価格の0・4%)
不動産の表示(土地 省略)

登録免許税の計算方法
評価価格 土地:1,500万円
登録免許税は「評価価格」の1,500万円に0・4%(税率)を乗じた税額で納めることになります。
1,500万円×0・4%=60,000円

相続登記完了後の書類

事例では、次の書類が登記完了書類です。

  1. 登記識別情報通知権利証となるもの
    長女・二女には、土地・建物の登記識別情報通知が各2通発行されます。
    相続登記の完了後に発行される登記識別情報とは、どういうものですか。を参考にしてください。
  2. 登記完了証:特に重要書類ではありません。
  3. 登記事項証明書:完了後、法務局の証明係で取得して、確かに相続登記が完了していること(長女・二女が名義人として登記されていること)を確認します。

相続登記にかかる費用

相続登記費用
司法書士報酬:約150,000円(税抜き)
①祖父基本報酬/建物:55,000円
 追加報酬
  相続人の数×10,000円(6名以上)
  父相続追加報酬:20,000円
  祖父相続人への手紙文作成・郵送:20,000円
②父所有権移転/土地:30,000円
登録免許税・証明書・祖父の相続人全員郵送料:約90,000円
合計:約250,000円

まとめ:被相続人祖父(疎遠な・面識のない・知らない相続人がいる)・父名義の数次相続登記

疎遠な・面識のない・知らない相続人がいる場合の相続登記については、まず、これらの人の戸籍謄本と戸籍の附票を取得して、連絡先の住所・氏名を特定します。
次に、第一段階として、相続登記に協力してくれるかどうかの打診をします。文書で事情を説明します。相続人が相続登記に協力をしてくれる場合、第二段階として、遺産分割協議書を郵送します。

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相続登記相談風景(イメージ)
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