相続登記の必要書類:必要な理由

相続登記の必要書類:必要な理由

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

相続関係図:母・子3名
相続関係図:母・子3名
【相続登記相談】
被相続人父名義を子の相続人私名義とするため、相続登記を司法書士に依頼した際、登記申請書を含め、次の書類を司法書士に見せました。子の相続人は、母と、私を含めて子が3名(相続人全員4名)います。
① 被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本
② 遺産分割協議書:母と子の相続人3名が実印で押印
③ 相続人子私の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書
④ 母の印鑑証明書
⑤ 他の相続人子の印鑑証明書
⑥ 固定資産税納税通知書・課税明細書

以上の書類で、必要な書類が全部揃ったと思っていましたが、意外なことに、依頼した司法書士から、次の書類が不足していることを指摘されました。
⑦ 被相続人の死亡時の住民票除票(本籍筆頭者記載)
⑧ 被相続人の登記上の住所と死亡時の住所の経過を証明する書類
⑨ 他の相続人子2名の戸籍謄本
⑩ 不動産の権利証原本

【質問】相続登記で、なぜ、これらの書類が必要となるのでしょうか。教えてください。

相続登記の必要書類(預貯金など相続手続でも一部共通して必要な書類):必要な理由

相続登記で必要となる書類の要点は、次のとおりです。
以下の必要書類は、基本的には、法務局に提出する書類は、原本が必要です。コピーで代用することができません。
【被相続人の死亡を証明】
被相続人が死亡したことを証明します。

【相続人を証明】
相続人が誰であるのかを証明します。

【誰が相続名義人となるのか(相続名義人を証明)】
遺産分割協議で遺産の取得者を決める場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で、各自が署名し実印で押印する必要があります。

【被相続人と登記名義人は同一人物か】
被相続人の「登記上の住所」と「死亡時の住所」との関連(住所変更の経過)を証明することで、被相続人と登記名義人が同一人物であることを証明できます。

【相続名義人は実在の人物か】
相続登記の名義人が実在の人物であることを証明します。

【登録免許税を計算する基準】
相続登記では、登記申請の際、法務局に対し、登録免許税を納めます。この登録免許税を計算するために、固定資産税の評価価格(評価額)を証明する必要があります。

【相続名義変更する不動産は何か(不動産を特定)】
不動産の権利証に記載されている「不動産の表示」を参考にすることで、相続名義変更する不動産を特定する必要があります。
被相続人の「登記上の住所(登記されている住所)」と「死亡時の住所」との関連(住所変更の経過)を証明できない場合、不動産の権利証を添付書面として法務局に提出することで、被相続人と登記名義人が同一人物であることを証明できます。

相続登記で、実際に用意する書類(事例の場合)は

以上のことを証明するため、事例(被相続人が父、相続人が母、子3名)の場合、次の書類を用意する必要があります。

【被相続人の死亡を証明】と【相続人を証明】
被相続人が死亡したことを証明します。相続人が誰であるかを証明します。
事例の場合で、必要書類
① 被相続人父の出生から死亡までの除籍戸籍謄本
③⑨ 相続人全員(母、子3名)の戸籍謄本(ただし、母は父の戸籍に記載されているため不要)

【誰が相続名義人となるのか(相続名義人を証明)
遺産分割協議で遺産の取得者を決める場合は、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で、各自が署名し実印で押印する必要があります。
事例の場合で、必要書類
② 遺産分割協議書:相続人全員が署名、実印で押印
③④⑤ 印鑑証明書

【被相続人と登記名義人は同一人物か】
被相続人の登記上の住所(登記されている住所)と死亡時の住所との関連(住所変更の経過)を証明します。
事例の場合で、必要書類
⑦⑧ 被相続人の住民票除票(本籍筆頭者記載)、戸籍の附票、戸籍の附票除票
⑩ これらで証明できないときは、不動産の権利証を法務局に提出します。(事例の場合、被相続人の住民票除票(本籍筆頭者記載)、戸籍の附票、戸籍の附票除票で、住所変更の経過を証明できない。)

【相続名義人は実在の人物か】
相続登記の名義人が実在の人物であることを証明します。
事例の場合で、必要書類
③ 相続人子の住民票(印鑑証明書で代用することも可)

【登録免許税を計算する基準】
相続登記では、登記申請の際、法務局に対し、登録免許税を納めます。この登録免許税を計算するために、固定資産税の評価価格(評価額)を証明する必要があります。
事例の場合で、必要書類
⑥ 固定資産税納税通知書・課税明細書(または、名寄帳、評価証明書)

相続登記の必要書類が必要な理由

上記のように、相続登記をするには、クリアすべき点がいくつかあります。
そこで、具体的な書類について、事例の場合で、必要な理由を解説します。

被相続人の出生時から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本):必要な理由

必要な理由:第1順位の相続人子3名のほかに子(実子・養子)がいないことを証明するため、被相続人の戸籍関係の書類を出生時から死亡時まで連続したものが必要です。。
取得方法は、次を参考にしてください。
(1)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して、「被相続人の出生から死亡までの」戸籍関係書類の取得方法(令和6年3月1日から)

遺言書で相続登記を行うとき

相続手続に使用できる公正証書遺言書自筆証書遺言書がある場合、遺言者の親が子に「相続させる。」というときは、被相続人と相続人との関係(親子関係)がわかる戸籍の証明書(被相続人親の除籍謄本と相続人子の戸籍謄本)で足り、被相続人親の出生まで遡って証明する書類は必要はありません。

これが、遺言書であっても、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合(被相続人が兄弟姉妹、相続人も兄弟姉妹)は、兄弟姉妹の被相続人の出生まで遡って証明する書類が必要です。この理由は、兄弟姉妹の被相続人に子がいないこと、親がいないこと(すでに死亡していること)を証明する必要があります。兄弟姉妹の被相続人に子(第1順位の相続人)と親(第2順位の相続人)がいないことによって、兄弟姉妹(第3順位の相続人)が相続人となり、登記の原因を「相続」とする必要があるからです。
登記の原因を「相続」とすることで、登録免許税を「固定資産評価価格」の0・4%で計算します。

被相続人の住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または「除かれた戸籍の附票」:必要な理由

必要な理由:登記記録(登記簿)に記載された「被相続人の登記名義である住所・氏名」と「住民票に記載された住所・氏名」を一致させるため。被相続人の住民票の除票には、本籍・筆頭者の記載が必要です。(相続人の住民票には、本籍・筆頭者の記載は不要です。)

被相続人の(除かれた)「戸籍の附票」を住民票除票に代えて使用する場合
令和4年1月11日より、原則(特別の請求がない限り)「戸籍の附票」には、本籍・筆頭者が記載されないことになりました。
そこで、同日以降、(除かれた)「戸籍の附票」を使用する場合、市区町村役場に対して、「本籍・筆頭者」も記載するよう、特別の請求をして、(除かれた)「戸籍の附票」を取得する必要があります。

これらを一致させることによって、登記された名義人が今回相続登記申請する被相続人と同一人物であることを証明します。

相続人の戸籍謄本(戸籍・全部事項証明書)(法定相続人全員):必要な理由

必要な理由:被相続人の法定相続人(全員)であることを証明するため。
相続関係説明図を提出することで、相続人の戸籍証明書のコピーを提出する必要がありません。

相続人の戸籍証明書(戸籍謄本)は、被相続人の死亡後に取得する必要があります。
これは、被相続人の死亡後において、相続人が生存していることを証明するために必要です。
ですので、戸籍証明書に有効期限の定めがないからといって、被相続人の死亡前に取得した相続人の戸籍証明書は使用できないことになります。
もっとも、被相続人の死亡後に取得した相続人の戸籍証明書であれば、有効期限の定めはありません。

家庭裁判所の相続放棄をした人からは、「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄申述受理証明書」をもらいます。これを登記所に提出します。

相続人の住民票(実際に相続で不動産を取得した相続人):必要な理由

必要な理由:「実際に相続により不動産を取得した相続人」として登記記録(登記簿)に記載するため、実在の人物であることを証明する必要があります。相続人の住民票には、本籍・筆頭者の記載は不要です。(マイナンバーカードの番号も不要)原本還付の手続で住民票を返却してもらいます。
法定相続情報証明書で相続登記をする場合、この証明書に、相続人の住所が記載されている場合は、この記載を援用することができますので、別途、住民票の提出は不要となります。
海外在住の日本人(日本国籍)・外国人(外国籍)が不動産を取得したときは、「国内連絡先(日本国内における連絡先となる人)」の登記が必要です。これについては、「日本国内における連絡先となる人」の登記の方法(令和6年4月1日施行)を参考にしてください。
外国人(外国籍)が不動産を取得したときは、外国人が所有権の登記をするときの氏名:ローマ字で氏名を併記する(令和6年4月1日から)を参考にしてください。

相続人の遺産分割協議書:必要な理由

必要な理由:遺産分割協議により法定相続分とは異なる相続割合・方法を選択した場合に、これが間違いないことを証明するため遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、法定相続人全員(家庭裁判所の相続放棄をした人は除く)の実印を押印します。
遺産分割協議書には相続人全員の印鑑証明書を付けます。原本還付の手続で遺産分割協議書・印鑑証明書を返却してもらいます。

遺言書で相続登記を行うとき

相続登記に使用できる公正証書遺言書自筆証書遺言書がある場合、原本還付の手続で遺言書を返却してもらいます。

相続人の印鑑証明書(法定相続人全員)(家庭裁判所で相続放棄した人を除く):必要な理由

必要な理由:遺産分割協議により法定相続分と異なる相続割合・方法を選択した場合に、これが間違いないことを証明するため、遺産分割協議書に押印された実印の印影(鮮明に押印)と印鑑証明書の登録印鑑とを一致させるため。原本還付の手続で印鑑証明書を返却してもらいます。
預貯金など金融機関で相続手続を行う際にも必要となります。

不動産の固定資産税評価証明書(東京23区の場合は都税事務所の評価証明書):必要な理由

必要な理由:相続登記申請の際、登録免許税を法務局(登記所)に納付します。
この登録免許税を計算する基準となるのが、固定資産税評価証明書(市区町村・都税事務所)に記載された「評価価格(評価額)」です。
「評価証明書(評価額)」のタイトルは各市区町村役場で異なります。横浜市の区役所では、「課税台帳登録事項証明書」というタイトルで発行されます。
タイトルが、「課税台帳記載事項証明書」、「固定資産評価証明書」という役所もあります。「評価価格(評価額)」のほかに、「固定資産税」が記載されている「固定資産公課証明書」でも使用できます。また、「名寄帳(不動産全部が記載されているもの)」でも使用できます。
役所に対しては「評価証明書」という言い方で通用します。
評価証明書を取得する役所の部署は、固定資産税課証明係です。

相続人の委任状(必要があるとき):必要な理由

必要な理由:相続登記の申請を司法書士(または、他の相続人)に依頼する場合、委任状が必要です。(この場合、不動産を取得した人が、司法書士の作成した委任状に署名・捺印が必要です。)また、登記する相続人が2人以上いる場合、実際に申請を行う相続人を決めたときにも、他の相続人から「実際に登記申請を行う相続人」への委任状が必要です。

例えば、相続人2名(AとB)の共有名義で登記する場合、BがAに登記の申請を委任する場合(実際の申請をAが行う)は、BがAを代理人とする委任状を作成して、Bが署名認印を押印します。
そうすることで、登記完了後に発行される登記識別情報通知をAがBの代わりに受け取ることができます。この場合、委任状には「登記識別情報を受領する権限を委任する。」も記載する必要があります。

まとめ:相続登記の必要書類:必要な理由

【回答】事例(被相続人が父、相続人が母、子3名)の場合、司法書士が指摘した書類の必要性は、前記の理由から次の書類も必要となります。

⑦ 被相続人の死亡時の住民票除票(本籍筆頭者記載)
 ↓
「登記名義人」と「登記申請する被相続人」が同一人物であることを証明するために、「被相続人の死亡時の住民票除票(本籍筆頭者記載)」が必要となります。

被相続人名義の「登記上の住所(登記されている住所)」と「死亡時の住所」が一致していれば(同じであれば)、「登記申請する被相続人」と「登記名義人」が同一人物であると証明できることになります。
⑧ 被相続人の登記上の住所と死亡時の住所の経過を証明する書類
⑨ 他の相続人子2名の戸籍謄本
⑩ 不動産の権利証原本

被相続人が誰で、相続人が誰になるのか、相続名義人が誰になるのか、相続の仕方(法定相続、遺産分割調停、遺言書)によっても、被相続人・相続人が外国人の場合によっても、相続登記に必要な書類が異なりますので、それぞれの事案に応じて、相続登記の必要書類を用意することになります。

相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成については、当司法書士事務所にご相談ください。

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相続登記相談風景(イメージ)
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