預貯金の相続手続は実際誰がしますか(相続人自身か専門家か)

預貯金の相続手続は実際誰がしますか(相続人自身か専門家か)

(事例)預貯金が合計7個、株式が1個、生命保険が1個、不動産が1か所の遺産相続の場合、これらの相続手続をどの順番でしたらよいでしょうか。
これら全部を専門家に依頼する必要があるでしょうか。

不動産の名義変更登記は、専門家である司法書士が相続人を代理して、登記所という国の役所に手続をします。
その他の預貯金などの手続先、請求先は、民間です。
請求先が民間の場合、どの専門家にも依頼することができます。
基本的には、すべての相続手続を相続人自身で行うこともできます。
相続登記と預貯金相続手続の費用(報酬)は、いくらが適正価格なのか?を参考にしてください。
依頼者に解約払戻金を振り込む方法も参考にしてください。

相続登記と預貯金の相続

手続を全部同時に行う場合

また、相続手続を全部同時に行うこともできれば、順番に行うこともできます。

不動産や預貯金などの相続手続では、通常、全部同時に行うことはほとんどなく、個別に順番に行なうのが普通です。

まず、上記相続手続を全部同時に行うことを考えてみます。
相続手続を行う場合に必要な相続証明書は、次のとおりです。
遺産を相続人の間で、誰がどの遺産を相続取得するかを決める遺産分割の方法で考えてみます。

相続証明書は、次のとおりです。
1 被相続人の書類
(1)被相続人の出生から死亡時まで連続したすべての戸籍証明書(本籍地で取得)(除籍謄本など)
(2)戸籍の附票(本籍地で取得)(住所が記載されております。)または、住民票の除票(本籍・筆頭者が記載されたもの)
2 法定相続人全員(3名の場合)の書類
(1)戸籍証明書(戸籍謄本)
(2)印鑑証明書
(3)住民票
(4)遺産分割協議書

これらの相続証明書一式を揃える必要があります。
これらの証明書取得に係る費用は、いくらになりますか。
実費は、約5,000円です。(1万円以上かかる場合もあります。)

上記事例の相続手続10件を同時に行う場合、上記相続証明書一式1セットを10セット用意する必要があります。そうしますと、実費で8万円かかることになります。

実費だけで8万円かかりますので、通常、同時に手続を行うことはありません。
急いで手続をしたい、現金が欲しい、分けたい場合は、実費だけで、この金額がかかります。

そこで、上記事例の相続手続のように、遺産の種類、数が多い場合は、一つ一つ順番に手続を行うことになります。もっとも、その種類、数が少なくても、順番に手続を行うのが通常です。

どうしても、相続手続を同時に行いたい場合、次の方法があります。

  1. 上記被相続人と相続人の戸籍証明書類を各1通取得します。
  2. 法務局(登記所)で法定相続情報証明書を必要な通数分取得します。これは法定相続情報証明でご確認ください。
  3. 相続人の印鑑証明書と遺産分割協議書は、必要な通数分用意します。

こうすれば、同時に相続手続を行うことができます。

次を参考にしてください。
預貯金(預金・貯金)の相続手続の方法(主な金融機関ごと)
預貯金(預金・貯金)の相続手続に必要な書類

手続を個別に順番に行う場合、手続を行う遺産の順番

相続手続を順番に行う場合、早く現金が欲しい、分けたい場合は、預貯金から手続を行います。

現金を急いで分ける必要がない場合は、まず、不動産の名義変更登記から行うのがよいでしょう。
この手続を行うのが、相続人を代理して申請する司法書士です。
相続人ご自身で行うこともできます。ご自身で行う場合は、自分で相続登記申請を参考にしてみてください。

不動産の名義変更登記を司法書士に依頼するメリット

不動産の名義変更登記を司法書士に依頼するメリットは、次のとおりです。

  • 上記相続証明書一式のうち、取得するのが難しい被相続人の戸籍証明書を取得してくれます。
  • 遺産分割協議書を作成してくれます。
     不動産のほかに預貯金などがある場合、この協議書には、基本的に、遺産の明細をすべて記載します。もっとも、一部の遺産について遺産分割協議書を作成することも可能です。
     誰が何を相続取得するのかを記載します。
  • 相続証明書一式を登記所という国の役所に提出し、その登記が完了すれば、相続証明書一式は返却されます。別の相続手続で使用することができます。法定相続情報証明が必要であれば、登記申請と一緒に手続をしてくれます。
  • 相続証明書一式を登記所という国の役所で審査を受けることによって、相続証明書一式の過不足がないことがわかります。
  • 相続関係説明図も完璧なものを作成してくれます。
     この相続関係説明図を相続証明書一式につけて、預貯金などの手続に使用できます。
  • 遺産分割協議書があれば、預貯金などの手続先(金融機関など)から解約払い戻し名義変更の請求書(相続取得する相続人のみ署名、実印の押印)を取得するだけで、改めて、個別の手続先に提出する「誰が内を相続取得する内容の書面」(遺産の分配方法の書面)に相続人全員が署名、実印の押印をする必要がありません。

個別に順番に手続を行う場合、専門家に依頼するメリットは

預貯金など個別に順番に手続を行う場合、専門家に依頼するメリットは、基本的にありません。
ただし、身体的な事情で金融機関などの手続ができない場合は、専門家に依頼することもあるかもしれません。

預貯金など個別に順番に手続を行う場合、それぞれの手続が完了した後、別の手続を行っていきますので、上記事例のように遺産の種類や数が多い場合は、どうしても相当な時間がかかります。
これを専門家に依頼したからといって、すべての手続が早く完了するわけではありません。
相続人ご自身で行っても、同じくらいの時間がかかります。

専門家に依頼する場合の費用については、手続先ごとに1件ごとの金額(報酬)がありますので、そのすべてを専門家に依頼する場合は、相当な金額(報酬)を支払うことになります。
信託銀行では通常、遺産総額の2%、他の相続手続代行者では通常、遺産総額の1%かかります。
例えば、遺産総額が5,000万円であれば100万円(2%の場合)、50万円(1%の場合)かかることになります。
当司法書士事務所の場合は、不動産の名義変更の依頼がある場合、金融機関1か所当たり33,000円(税込み)です。遺産総額が5,000万円で金融機関が5か所であれば、165,000円(税込み)です。

ですから、預貯金など民間での相続手続は、基本的には相続人ご自身で行うのがよいでしょう。

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