遺産分割協議が整わない場合の遺産分割調停(相続相談)

遺産分割協議が整わない場合の遺産分割調停(相続相談)

【相続相談事例】
被相続人:父
相続人:母と子3人(長女・二女・三女)
相続財産(合計2,400万円):不動産(1,000万円)、預貯金(1,400万円)当初、相続人の遺産分割協議(話し合い)で、次のように遺産分割をする話がまとまっていました。
(1)不動産は、母が相続する。
(2)預貯金は、各相続人の法定相続分で相続する。
   母2分の1、子各6分の1
ところが、遺産分割協議書に署名捺印をする最終段階で、遺産の全部を母が相続したいと言い出しました。長女は、母の主張に賛成し、二女・三女は、これに反対しています。
この場合、どうしたらよいでしょうか。

遺産分割協議がまとまらい例

次のような場合、遺産分割協議がまとまらない可能性があります。

  • 相続人の親子・兄弟姉妹の仲がよくない。
  • 遺産が不動産だけである。
  • 相続人の連絡先(住所など)は分かっているが、話し合いに応じようとしない。
  • 数次相続(一次相続・二次相続・・・)の場合、疎遠な相続人や知らない相続人がいる。
  • 相続人のうちの一人が遺産をすべて相続したいと主張する。

このようなとき、遺言書(できれば、公正証書遺言書)があり、遺留分を考慮した遺言書の内容であれば、問題なく相続登記(不動産名義変更)や相続手続を行うことができます。
前記のような事情で、遺産分割協議がまとまらないことは、往々にしてありますので、遺言書(できれば、公正証書遺言書)を遺しておくのがベストです。

問題は、遺言書がなければ、遺産分割協議(相続人間の話し合い)をして、遺産の分配について決める必要がありますので、前記のような事情があり、遺産分割協議がまとまらなければ、いつまでも、相続登記や相続手続ができないということになってしまいます。(令和6年4月1日から相続登記の義務化が開始されます。)

遺産分割調停

相続相談事例の場合、このような状況(相続人のうちの一人が遺産をすべて相続したいと主張する。)では、いつまでも、相続登記や相続手続ができませんので、遺産分割調停を家庭裁判所に申立て、ここで、再度、調停委員を交えた遺産分割の話し合いから始めることになります。

遺産分割調停の申立人は

申立人が誰になるのか、相手方を誰にするのかは、ケースバイケースです。
事例の場合、母・長女が、母が遺産全部を相続することを主張していますので、例えば、次のどちらかでしょう。

  • 母・長女が申立人となり、二女・三女を相手方とする。
    母が申立人、長女・二女・三女を相手方とする。
  • 二女・三女が申立人となり、母・長女を相手方とする。
    二女が申立人となり、母・長女・三女を相手方とする。

遺産分割調停で、最終的にどういう遺産分割の内容となるのか

相続相談事例の場合、遺産分割調停を申立てた場合、調停・審判では、最終的にどういう遺産分割の内容となるのでしょうか。

民法(遺産の分割の基準)
第九百六条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

民法 | e-Gov法令検索

このように遺産分割の基準が規定されていますが、基本的には法定相続分を基準とします。

特別受益寄与分について

民法(期間経過後の遺産の分割における相続分)
第九百四条の三 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

民法 | e-Gov法令検索

民法には、このように規定されており、遺産分割調停では、申立人、相手方が主張する内容を証明する必要があります。このため、証明できなければ、原則通り、各相続人の法定相続分で分配することになるのが基本です。ただし、調停では、証明できない場合であっても、申立人・相手方の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で相続することができます。
相続開始の時から十年を経過した後にする遺産分割では、特別受益・寄与分が考慮されないのが基本です。

遺産分割調停申立を弁護士に依頼するかどうかを検討

弁護士のイメージ

相続相談事例の場合、遺産総額が2,400万円であるので、遺産分割調停の申立てを弁護士に依頼した場合、どのくらい費用(弁護士報酬)がかかるのかを検討してみます。(以下、一般的な弁護士報酬
ここでは、特別受益、寄与分を考慮しないで計算します。

遺産分割調停を弁護士に依頼すれば、申立人(相手方)は、家庭裁判所に出向くことなく、弁護士がすべて行ってくれます。(弁護士が代理人となります。)
司法書士に遺産分割調停の申立てを依頼する場合、司法書士ができることは、遺産分割調停申立書の作成と提出です。家庭裁判所での調停委員・相手方とのやり取りは、申立人が行うことになります。(司法書士は代理人となれません。)

母・長女が申立人(または相手方)となる場合

母・長女が申立人(または相手方)となる場合、弁護士に依頼すれば、次の弁護士報酬を支払うことになります(実費を除く)。
母・長女が主張する経済的利益:遺産全部2,400万円
着手金:2,400万円×5%+9万円=129万円
成功報酬
 母(1/2)・長女(1/6)合計4/6の法定相続分に相当する遺産の額
 2,400万円×4/6=1,600万円
 1,600万円×10%+18万円=178万円
着手金+成功報酬=307万円

以上の計算から、母・長女が弁護士に依頼する場合、1,600万円分を取得する代わりに、弁護士報酬として307万円を支払うことになります。(差し引き・取り分:1,293万円)

二女・三女が申立人(または相手方)となる場合

二女・三女が申立人(または相手方)となる場合、弁護士に依頼すれば、次の弁護士報酬を支払うことになります(実費を除く)。
二女・三女が主張する経済的利益(遺産分割調停では法定相続分を主張)
 2,400万円×(1/6+1/6)=800万円
着手金:800万円×5%+9万円=49万円
成功報酬
 二女・三女合計2/6の法定相続分に相当する遺産の額:800万円
 800万円×10%+18万円=98万円
着手金+成功報酬=147万円

以上の計算から、二女・三女が弁護士に依頼する場合、800万円(一人当たり400万円)分を取得する代わりに、弁護士報酬として147万円を支払うことになります。(差し引き・取り分:653万円。一人当たり3,265,000円)

相続相談事例の場合、弁護士に依頼する必要があるのか

前述のように、遺産分割調停を弁護士に依頼する場合、上記の弁護士報酬がかかります。
そこで、遺産分割調停を申立てる場合、弁護士に依頼した方がよいのかを検討します。

二女・三女は、基本的に法定相続分を主張しますので、相手方が、特別受益・寄与分を証明できなければ、法定相続分で遺産分割が決まります。このため、弁護士に依頼しなくても、特に問題はないと考えます。

母・長女は、遺産全部を母が相続することを主張しますので、特別受益・寄与分を証明する必要があります。
弁護士に依頼しなければ、基本的には法定相続分での遺産分割となります。このため、母・長女があくまでも遺産全部の相続を主張するのであれば、弁護士に依頼した方がよいでしょう。

遺産分割調停が不成立となれば、審判に移行

遺産分割調停で申立人・相手方の話し合いがまとまらなければ、自動的に審判に移行します。

家事事件手続法(調停の不成立の場合の事件の終了)
第二百七十二条 調停委員会は、当事者間に合意(第二百七十七条第一項第一号の合意を含む。)が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停が成立しないものとして、家事調停事件を終了させることができる。ただし、家庭裁判所が第二百八十四条第一項の規定による調停に代わる審判をしたときは、この限りでない。
4 第一項の規定により別表第二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす。
(別表第二、十二:遺産の分割)

家事事件手続法 | e-Gov法令検索

まとめ:遺産分割協議が整わない場合の遺産分割調停

遺産分割協議でどうしても話し合いがまとまらない場合、遺産分割調停を申立てることになります。調停が不成立であれば、審判に移行します。審判で最終的に決着しますが、ここまで長引いてしまいますと、精神的にも負担となることもありますので、できるだけ欲張らずに解決するのがよいでしょう。

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