数次相続と相続登記の方法

数次相続と相続登記の方法

事例:次の事例の場合、登記名義人である被相続人父についての名義変更登記をします。

  • 登記上の名義人    被相続人父1名
  • 被相続人の人数    2名(被相続人「父」の死亡後、「母」が死亡)
               相続が連続して開始
  • 不動産の名義人    被相続人所有権全部
  • 法定相続人の人数   3名(子)
               ただし、死亡した母も相続人となる。
  • 相続登記の方法    遺産分割で登記(遺産分割協議書の作成)
  • 取得する相続人    相続人A1名、登記申請件数1件
  • 管轄する登記所    横浜地方法務局厚木支局(平成24年6月1日)
父死亡後に母が死亡した場合、死亡した母も相続人となる。

被相続人についての戸籍の証明書(除籍謄本など)取得の基本

まず、登記名義人の被相続人父について、戸籍の証明書(除籍謄本など)は、出生時から死亡時までの戸籍関係証明書(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を集める必要があります。

この出生時から死亡時までの戸籍関係証明書をすべて用意する理由は、法定相続分での登記申請の当事者または遺産分割協議を行う法定相続人のほかに、法定相続人がいないことを確定、証明するために必要です。

被相続人の出生時から死亡時までの戸籍関係証明書を集めた結果、ほかに法定相続人の存在することが判明した場合は、判明した法定相続人を含めて、法定相続分での登記申請または遺産分割協議をし直さなければならないからです。
その他の必要書類は、相続登記の必要書類で確認してください。

数次相続ではない事例

登記名義人の被相続人父の死亡前に、母が死亡している場合(母死亡→被相続人父死亡)は、数次相続ではありません。
この場合、母死亡後、被相続人父が死亡した場合、この時点での法定相続人は、子3名です。
この場合、被相続人についての戸籍の証明書は、父について、出生時から死亡時までの戸籍関係証明書(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を取得すれば足ります。母の出生からの除籍謄本を取得する必要はありません。

数次相続(相続が連続して開始)の事例

登記名義人の被相続人父の死亡後に、母が死亡している場合(被相続人父死亡→母死亡)は、数次相続となります。父死亡時、母が存命ですから、父死亡時点での法定相続人は、母と子3名です。
父死亡後、母が死亡した場合は、母の法定相続人は、子3名です。

この母の法定相続人が子3名で、ほかに法定相続人のいないことを証明するために、父の場合と同様に、母の出生時から死亡時までの戸籍関係証明書(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を取得する必要があります。

父についての除籍謄本(出生から死亡まで)取得方法(例)出生から死亡まで連続して取得
「死亡時の除籍謄本」(出生まで遡って取得)→「婚姻前の除籍謄本」→「出生時の除籍謄本」
 父死亡時の「住民票の除票(または戸籍の附票)」が必要です。
母についての除籍謄本(出生から死亡まで)取得方法(例)出生から死亡まで連続して取得
「死亡時の除籍謄本」(出生まで遡って取得)→「婚姻前の除籍謄本」→「出生時の除籍謄本」
 登記の方法のうち、後述の「法定相続分での相続登記」をする場合、母死亡時の「住民票の除票(または戸籍の附票)」が必要です。 これは、死亡した母名義でも登記するからです。

被相続人父死亡後、母死亡の場合の登記申請の方法

事例の場合、登記の方法は、二通りあります。①法定相続分での相続登記と②遺産分割による相続登記です。

法定相続分での相続登記

登記名義人の被相続人父についての登記を法定相続分で行うときは、次の2件で登記申請します。
この場合、遺産分割協議書を作成する必要がありません。民法で定められた相続分で登記しますので。
相続人全員の印鑑証明書も必要ありません。遺産分割協議書を作成しませんので。
登記申請書(委任状)に押印する印鑑は、認印で問題ありません。
この場合、住民票は、母を含めて相続人全員のものが必要です。

(第1)
登記の目的 所有権移転
原   因 父の死亡日 相続
相 続 人 (亡)母 持分2分の1
       子A持分6分の1  子B持分6分の1 子C持分6分の1

(第2)
登記の目的 母持分全部移転
原   因 母の死亡日 相続
相 続 人 子A持分6分の1  子B持分6分の1 子C持分6分の1
登録免許税 母持分2分の1に対する評価価格の0・4%です。
(法定相続分での登記では、第2の申請分で余計に登録免許税を納める必要があります。)

このような法定相続分での登記は、通常、相続人間での話し合いが上手くいかない場合や、とりあえず法定相続分での登記をしておこうという場合にします。
この場合、後日、遺産分割が成立した場合、「遺産分割」を登記原因として登記することができます。

数次相続では、基本的に、相続ごとに(第1の相続→第2の相続→第3の相続→・・・)1件ずつ申請書を作成します。この場合、相続人の中に、すでに死亡している人がいる場合であっても、この死者を含めて(死者名義)、1件ずつ申請書を作成します。
例外的に、中間の相続の相続人が1名の場合は、中間の相続登記を省略することができます。これは、法定相続分での登記も遺産分割による登記の場合も同じです。

登記申請書1件で作成するか、2件・3件・・・で申請書を作成するかは、次の登記の大原則があるからです。
登記申請書1件で作成できるのは、「登記の目的」、「原因」と「申請人(相続人)」が同じであることが条件です。これらが異なれば、1件で申請書を作成することができず、2件・3件・・・で申請書を作成しなければなりません。

もう一つ、登記の大原則があります。

それは、登記をする「事実(または法律行為)」ごとにすべて登記をする、というのがあります。

したがいまして、中間の事実(または法律行為)を省略して、最後の事実(または法律行為)だけで登記ができないということになります。

「相続」の場合に限らず、売買の場合も同じです。

例えば、所有者AがBに売却し、BがCに売却して最終的にDが買主となった場合は、「AからBへの所有権移転登記」、「BからCへの所有権移転登記」、「CからDへの所有権移転登記」の3件で登記しなければなりません。

これを1件で「AからDへの所有権移転登記」をすることができません。

このことは、登記の大原則とは別に、税金にも関係します。

例えば、売買の場合、売主には譲渡所得税の問題があり、買主には不動産取得税(と固定資産税)の問題があります。

登記がされますと、その登記情報は、税務署、県税事務所、市区町村役場に通知されます。

このことは、それぞれの役所に登記情報が通知されることによって、「税金」について各役所が課税するかどうかを検討することになります。

売買の先の事例で、「AからDへの所有権移転登記」1件で登記することができることになってしまいますと、

BとCには譲渡所得税と不動産取得税が課税されないことになってしまいます。

これと同様に「相続」の場合も同じです。もっとも、相続税に関しては、税務署は登記とは関係なく調査しているとは思いますが。

「相続」という事実が数回あった場合、中間の相続(という事実)を省略しないで、全ての相続(という事実)で、登記しなければならないということになります。

中間の相続(という事実)を省略して登記することができるとすれば、売買の場合と同じように、相続では相続税が最後の相続人のみに課税されることになってしまいます。(実際、税務署は財産を把握していますので、このようなことはないとは思いますが。)

「相続」の場合、例外的に中間の相続を省略できるのは、「実際に不動産を取得した(亡)相続人A」が一人の場合だけです。

このことは、法定相続分での登記はもちろん、遺産分割(協議・調停)で「実際に不動産を取得した(亡)相続人A一人」とする場合にも中間の相続を省略することができます。

この場合、不動産を取得した「(亡)相続人A」が中間で「相続したという事実」を登記上に表す必要があるため、「年月日A相続、年月日相続(最後)」という記載の方法となります。

中間の相続を省略できる場合であっても、中間の相続という事実があったことを登記上に表す必要があるからです。

遺産分割協議での相続登記

登記名義人の被相続人父についての登記を遺産分割協議で行う場合(子Aが名義人となる場合)、次の1件で登記申請します。通常、子が2人以上の場合、遺産分割協議で登記します。
この場合、遺産分割協議書を作成して、相続人全員で署名・実印を押印します。
子3名は、自分自身が相続人として、及び死亡した母の相続人として署名捺印します。

登記の目的 所有権移転
原   因 父の死亡日 相続
相 続 人 子A(所有権全部)

このように、数次相続の場合、相続人間での話し合いが問題なくできる場合は、法定相続分での登記ではなく、遺産分割協議書を作成して登記を1件で申請します。その方が登記費用が安く済みます。

上記の事例で、相続人の子A1名の場合、従前は、遺産分割決定書を子Aが自分で作成して、自分のみが署名・実印を押印したもので登記1件で申請することができましたが、これについては、申請する登記所に確認してください。遺産分割決定書と数次相続を参考にしてください。

より複雑な数次相続の事例は、数次相続の遺産分割協議書・相続関係説明図の作成方法と登記の方法で確認してください。

数次相続で、母が死亡したことで前夫との子がいる場合

父死亡後に、母が死亡した場合、数次相続となりますので、母に前夫との間に子がいれば、その子も相続人(母の相続人)となります。より相続関係が複雑になります。

この場合、子AとB、前夫との間の子CとDの相続持分は、次のとおりです。
まず、被相続人父に関する相続分の割合は、
(亡)母:持分2分の1
子A:持分4分の1(8分の2)
子B:持分4分の1(8分の2)
次に、母(2分の1)に関する相続分の割合は、
子A:持分8分の1
子B:持分8分の1
子C:持分8分の1
子D:持分8分の1  

最終的に子A・B・C・Dの相続分の割合は、
子A:持分8分の3
子B:持分8分の3
子C:持分8分の1
子D:持分8分の1

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