相続財産の遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議書の基本的な作成方法は、遺産分割協議書の書き方を参考にしてください。
相続財産の遺産分割の方法は、法定相続人全員が参加して遺産分割の協議をします。法定相続人の中に家庭裁判所での相続放棄をした人がいる場合は、この人を除いて他の法定相続人全員(これを共同相続人といいます。)で遺産分割を協議します。
法定相続人の中に家庭裁判所での相続放棄をした人がいる場合、不動産の相続登記(名義変更)で、法務局(登記所)に書類を提出するときは、相続放棄をした人の書類として次の書類を提出します。
(1)相続放棄した人の戸籍謄本(戸籍抄本でも問題ありません。)
放棄した人も法定相続人であることを証明する必要があります。
この人が相続放棄したので、これを証明するために次の通知書が必要です。
この人が遺産分割協議書に署名捺印しない理由を証明します。
(2)家庭裁判所発行の「相続放棄申述受理通知書」
あえて、相続放棄申述受理証明書を取得する必要はありません。
戸籍謄本と戸籍抄本の違い
「戸籍謄本」の呼び方については、役所でも一般の人のでも、通常「戸籍謄本(こせきとうほん)」と言っています。
現在、日本全国の役所では、戸籍情報のすべてがコンピューターで管理されています。戸籍情報がコンピューターで管理されていなかった昔は、紙で管理されていましたので、「戸籍謄本」と言っていました。現在、戸籍情報はコンピューターで管理されていますので、正確には「戸籍全部事項証明書」という呼び方になります。が、今でも、「戸籍謄本」という言い方が一般的です。
「戸籍謄本」は、戸籍の全部の内容が記載されたものです。「戸籍抄本(こせきしょうほん)」は、戸籍の一部の内容が記載されたものです。この二つは必要に応じて使い分けることができます。
遺産分割協議の方法
法定相続人の一部の人だけで、遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成しても、その遺産分割協議は無効となります。必ず、法定相続人全員が協議に参加する必要があります。
遺産分割協議が成立するには、法定相続人全員の参加と協議の内容に同意することが必要です。
遺産の分け方
- 遺産のうち、誰々が何を、誰々が何を、というように、相続人それぞれが取得する(債務を負担する)遺産を書く方法
- 遺産のうち、誰々が何を取得する(債務を負担する)と書く方法
この場合、何も取得しない相続人には、「何も取得しない。」と通常、記載しません。
遺産分割協議書に署名・実印の押印
法定相続人全員が同意して遺産分割協議が成立したときは、確かに協議が成立したことを証明するために遺産分割協議書を作成し、法定相続人全員が、署名、実印を押印します。
法定相続人全員の印鑑証明書も必要となります。
市区町村役場に印鑑(実印)の登録をしていない法定相続人は、印鑑の登録をして印鑑証明書を取得します。
相続登記(不動産名義変更)では、これらの書類を相続登記の必要書類(登記原因証明情報)の一部として法務局に提出します。
不動産の相続登記(名義変更)で、法務局(登記所)に書類を提出するときは、遺産分割協議書に署名、実印を押印した相続人全員の印鑑証明書を提出するのが基本です。
ただし、次の場合は印鑑証明書を提出しないこともできます。提出してもしなくても問題ありません。
例えば、相続人がAとBで、不動産をAが取得し、Bは不動産を取得しないという場合です。この場合は、不動産を取得しないBの印鑑証明書は必要ですが、不動産を取得するAの印鑑証明書を提出しなくても問題ありません。
この理由は、BがAの不動産の取得に同意する(Bは権利を失う)ことから、Bは印鑑証明書が必要で、Aは不動産を取得する(権利を得る)ので、特に印鑑証明書を提出しなくてもよい、という理由です。
ただし、金融機関での相続手続では、預貯金を取得する相続人の印鑑証明書も必要です。
結局、相続登記の厳密な申請方法に拘ることなく、相続人全員の印鑑証明書を用意します。
遺産分割協議書に記載する遺産の内容
遺産分割協議書は、一枚の用紙に法定相続人全員が連署するのが基本ですが、遠方その他の事情によって連署できないときは、同じ内容の遺産分割協議書を作成して、個別に、署名、実印を押印することもできます。
遺産分割協議書に押印する実印は、実印の上下を確認して、印鑑証明書の印鑑と同じ向きで押印します。
また、遺産分割協議書に押印された実印と印鑑証明書の印鑑が明確に照合できるように、実印は鮮明に押印します。鮮明に押印されていない場合は、再度、押印し直すことになります。
相続財産の一部の遺産分割
遺産分割の基本は、遺産である相続財産すべてについて、法定相続人の間で遺産分割の協議をします。
ですが、なんらかの事情で、相続財産の一部について遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作成して相続手続きを行うことができます。
例えば、不動産の名義変更登記用として不動産のみを記載する遺産分割協議書、預貯金の相続手続用として預貯金のみを記載する遺産分割協議書、など別々に作成しても問題ありません。
遺産分割の協議の対象とならなかった相続財産について、別途、協議をして遺産分割協議書を作成して相続手続きを行うことができます。また、協議の対象とならなかった遺産について、例えば、「遺産分割協議書に記載されていない遺産ついては、相続人の誰々がすべて取得する。」とすることもできます。
「遺産分割協議書に記載されていない遺産ついては、相続人の誰々がすべて取得する。」 が必要な場合
「遺産分割協議書に記載されていない遺産ついては、相続人の誰々がすべて取得する。」 という文言を記載する必要がある場合があります。
それは、遺産の種類が多く、例えば、不動産が多数あり、預貯金や株式など遺産が多数ある場合です。
判明しているこれらの遺産について分割協議をしたが、後日になって、別の遺産があることが判明した場合、基本的に追加で遺産分割協議をし、これについての遺産分割協議書を改めて作成して、相続人全員が署名・実印の押印をする必要があります。
具体的には、不動産について、固定資産税が非課税の私道(または極小さい面積の土地)があった場合です。私道は非課税であるため、固定資産税納税通知書の課税明細書や名寄帳に記載されていません。したがって、この私道を見落としやすく、遺産分割協議の対象としないことはよくありがちです。
次を参考にしてください。
相続不動産の特定の方法(土地)
相続不動産の特定方法(マンション)
相続登記をした後、登記漏れの不動産を発見したときの登記の方法
意外と重要な「相続登記申請前の不動産の確認」と「相続登記完了後の登記内容の確認」方法