遺言書での相続登記の方法
不動産の名義変更(相続登記)(ほかの預貯金などの相続手続)では、まず最初に、被相続人が遺した遺言書があるのかどうかを確認します。もし、遺言書があれば、ほかの相続方法(遺産分割協議での登記、法定相続分での登記)に優先して遺言書の内容に基づいて相続手続を行います。この場合、ほかの相続人の有する遺留分の問題については後回しにして、遺言書で相続登記をするのが基本です。
ただし、遺言書の内容によっては、不都合な状態となる場合や相続税の問題などがあり、遺言書の内容によらない相続方法がよいと判断し、「相続人全員の合意」があれば、遺言書の内容に従わずに、別の相続方法(遺産分割協議での登記、法定相続分での登記)を選択することもできます。
遺言書が作成された方式を確認
遺言書の内容に基づいて、相続登記を行う場合、その遺言書がどういう方式で作成されたのかを確認します。なぜなら、遺言書の作成方式によっては、すぐに相続登記ができるものもあれば、別の手続をした後でなければ相続登記ができない場合があるからです。次の3種類について説明します。
- 公正証書遺言書
公正証書遺言書は、公証人役場という所で、被相続人である遺言者が生前、公証人に作成してもらったものです。公正証書で作成された遺言書のことを公正証書遺言書といいます。
公正証書で遺言書作成を参考にしてください。
この公正証書遺言書があれば、被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄本などを用意すれば、比較的スムーズに相続登記を行うことができます。 - 自筆証書遺言書で法務局(登記所)に保管されたもの(自筆証書遺言書保管制度)
登記所の保管制度を利用した自筆証書遺言書は、相続開始(被相続人の死亡)後、登記所で「遺言書情報証明書」を発行してもらいます。遺言書情報証明書が遺言書と同じ扱いとなります。
遺言書情報証明書を登記所で取得するには、次の書類を登記所に提出する必要があります。これらの書類を用意するのに時間がかかると思われます。(約1か月)
(1)遺言者(被相続人)の出生時から死亡時までのすべての戸籍・除籍謄本
(2)法定相続人全員の戸籍謄本
(3)法定相続人全員の住民票 - 自筆証書遺言書:登記所の保管制度を利用しない自筆証書遺言書
この遺言書で相続登記(ほかの預貯金などの相続手続)を行うためには、家庭裁判所の検認手続が必要となります。次の書類を家庭裁判所に提出する必要があります。これらの書類を用意し、家庭裁判所の手続が完了するまでに時間がかかると思われます。(約2か月)
(1)遺言者(被相続人)の出生時から死亡時までのすべての戸籍・除籍謄本
(2)被相続人の最後の住民票除票(本籍地記載のもの)
(3)法定相続人全員の戸籍謄本
(4)法定相続人全員の住民票(申立書に法定相続人の住所を正確に記載します。)
(5)遺言書
自筆証書遺言書で法務局(登記所)に保管されたものは、
登記所の保管制度を利用しない自筆証書遺言書は、
遺言書の内容で相続登記ができるのかどうかを確認
遺言書があったからといって必ずしも、それで相続登記ができるとは限りません。
特に、自筆証書遺言書では、民法の規定に従った方式で作成されていることが必要ですので、遺言書で相続登記ができるかどうかを司法書士など専門家に確認した方がよいでしょう。
遺言書作成講座や遺言書作成の注意点を参考にしてください。
遺言書に条件が付加されていた時の相続登記の方法を参考にしてください。
相続人に「相続させる。」という内容の遺言書での相続登記の方法
相続人が被相続人の配偶者、子、親、兄弟姉妹の場合で必要書類が異なります。遺言執行者がいる場合といない場合とで登記の方法が異なります。
被相続人と相続人が、親子(配偶者)の関係であるとき(子は第1順位の相続人)
必要書類
(評価証明書などほかの書類については、相続登記の必要書類を参考にしてください。)
被相続人の必要書類
(1)被相続人の除籍謄本(死亡の記載のあるもの)
→ 出生時までの戸籍関係書類を集める必要はありません。
(2)住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または除かれた戸籍の附票(本籍地記載が必要)
(3)遺言書
子(配偶者)が相続人の必要書類
(1)戸籍証明書(戸籍謄本)
(2)住民票
→ 子は第1順位の相続人であるので、親子(配偶者は婚姻)関係を証明できればよい。
被相続人と相続人が、子親の関係であるとき(親は第2順位の相続人)
必要書類
(評価証明書などほかの書類については、相続登記の必要書類を参考にしてください。)
被相続人の必要書類
(1)出生から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
被相続人に子がいないことを証明するため。
(2)住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または除かれた戸籍の附票(本籍地記載が必要)
(3)遺言書
「親が相続人」の必要書類
親の戸籍証明書(戸籍謄本)・住民票
被相続人と相続人が、兄弟姉妹の関係であるとき(兄弟姉妹は第3順位の相続人)
必要書類
(評価証明書などほかの書類については、相続登記の必要書類を参考にしてください。)
被相続人の必要書類
(1)出生から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
被相続人に子がいないことを証明するため。
(2)住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または除かれた戸籍の附票(本籍地記載が必要)
(3)被相続人の「両親・祖父母の死亡」の記載のある除籍謄本
→ 兄弟姉妹は第3順位の相続人であるので、
被相続人の「両親・祖父母の死亡」の記載のある除籍謄本が必要です。
(4)遺言書
「兄弟姉妹が相続人」の必要書類
兄弟姉妹の戸籍証明書(戸籍謄本)・住民票