土地の相続登記、建物滅失登記、建物表題登記をする必要がある場合、登記の方法

土地の相続登記、建物滅失登記、建物表題登記をする必要がある場合、登記の方法

【相続登記相談】
被相続人:(相談者の)祖父(昭和20年〇月〇日死亡)、父(平成20年〇月〇日死亡)
相続人:父の子3名(相続取得する人は長男)
相続財産
① 祖父名義の土地と建物:建物(昭和5年建築、昭和50年取り壊し)は、すでに取り壊されているが、登記されたままとなっている。
② 父名義の建物:すでに取り壊されている祖父名義の建物の後に、建築された建物(昭和50年建築)が存在するが、登記されていない(未登記)。将来、取り壊す予定である。
このような相続財産、相続人の場合、どういう方法で相続登記を行えばよいでしょうか。

【相続関係図】

【相続不動産】

相続登記の方法

すでに取り壊された建物(祖父名義)と父名義の未登記の建物がありますので、これらの登記を中心に説明します。
相続の取り壊された建物と未登記建物の登記については、次を参考にしてください。
未登記建物と相続登記(基本説明:未登記建物とは)
相続不動産に「登記されていない建物(未登記建物)」があるとき(相続登記相談)

祖父名義の土地の相続登記

祖父名義の土地は、昭和20年〇月〇日家督相続で父が相続し、これを子3名の遺産分割協議で、長男名義とする遺産分割協議書を作成します。(数次相続となる。)
また、父名義の建物(未登記)も、長男が取得することになりますので、これを含めて遺産分割協議書を作成することになります。

相続登記に必要な書類

遺産分割協議書による相続登記を参考にしてください。

  1. 被相続人祖父:祖父の最後の除籍謄本、祖父の最後の住所(本籍地と一致すれば、これで証明する。)
  2. 被相続人父
    父の出生から死亡までの除籍謄本
    父の死亡時の住民票除票(または戸籍の附票)
    固定資産税納税通知書・課税明細書
    (父名義の建物は、未登記であるため、課税明細書には、家屋番号の記載がないことを確認します。)
  3. 相続人子3名
    戸籍謄本
    住民票(名義人となる長男)
    印鑑証明書
    遺産分割協議書に署名・実印押印

【遺産分割協議書を作成】

遺産分割協議書(見本・一部省略)

被相続人:○○(昭和〇年〇月〇日生)の平成20年〇月〇日死亡により開始した相続につき、同人の相続人全員において遺産分割協議を行った結果、下記のとおり決定した。

         記
相続人長男○○は、次の不動産を相続取得する。

所  在  〇市〇町
地  番  〇番〇
地  目  宅 地
地  積  100・00平方メートル

所  在  〇市〇町〇番地〇
家屋番号  (未登記)
種  類  居宅
構  造  木造瓦葺2階建
床 面 積   1階 50・00平方メートル
      2階 50・00平方メートル

以上、遺産分割協議が成立したことを証するため、この協議書を作成して各自署名・捺印する。

【相続関係説明図を作成】

【登記申請書】祖父名義の土地の相続登記

      登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原   因 昭和20年〇月〇日家督相続平成20年〇月〇日相続                    
相 続 人 (被相続人 祖父)
      (長男の住所)○○○○
      (長男の氏名)○○○○
添付情報
  登記原因証明情報   住所証明情報   評価証明情報

祖父名義の取り壊した建物と父名義の未登記建物

① 祖父名義の建物(昭和5年建築、昭和50年取り壊し)は、すでに取り壊されているが、登記されたままとなっている。
② 父名義の建物:すでに取り壊されている祖父名義の建物の後に、建築された建物(昭和50年建築)が存在するが、登記されていない(未登記)。将来、取り壊す予定である。

① 祖父名義の建物(昭和5年建築、昭和50年取り壊し
すでに、取り壊されているので、建物滅失登記をする必要がある。
② 父名義の建物:すでに取り壊されている祖父名義の建物の後に、建築された建物(昭和50年建築)が存在するが、登記されていない(未登記)
未登記であるため、基本的には、これを登記する必要がある。この場合の登記は、建物表題登記と所有権保存登記

祖父名義の建物(昭和5年建築、昭和50年取り壊し)
建物滅失登記の方法

この登記を専門家に依頼する場合、土地家屋調査士という国家資格登録者に依頼します。(土地家屋調査士に支払う手数料(報酬を含む。):約5万円)

【必要書類】

  • 建物取り壊し証明書:取り壊し業者が発行します。昭和50年取り壊したため、取り壊し証明書がない場合は、上申書(印鑑証明書付き)を作成します。
  • 被相続人祖父:祖父の最後の除籍謄本、祖父の最後の住所(本籍地と一致すれば、これで証明する。)
  • 被相続人父:死亡時の除籍謄本
  • 父の死亡時の住民票除票(または戸籍の附票)
  • 相続人子1名(建物滅失登記は、相続人の一名が申請人となることができる。)
    戸籍謄本
    住民票(名義人となる長男)
父名義の未登記建物

父名義の建物:すでに取り壊されている祖父名義の建物の後に、建築された建物(昭和50年建築)が存在するが、登記されていない(未登記)。
この登記を専門家に依頼する場合、土地家屋調査士という国家資格登録者に依頼します。(土地家屋調査士に支払う手数料(報酬を含む。):約10万円)

子長男名義で建物表題登記

【必要書類】

  1. 建築確認済証(検査済証):ない場合は、これに代わる建築課の証明書
  2. 建築業者の工事完了引渡し証明書:ない場合は、相続人の上申書を作成、その他の書類を用意
  3. 被相続人父
    父の出生から死亡までの除籍謄本
    父の死亡時の住民票除票(または戸籍の附票)
    固定資産税納税通知書・課税明細書
  4. 相続人子3名
    戸籍謄本
    住民票(名義人となる長男)
    印鑑証明書
    遺産分割協議書に署名・実印押印
    相続関係説明図作成
    建物図面・各階平面図作成

建物表題登記が完了すると、次のような登記記録(登記簿)・表題部が作成されます。

所有権保存登記

建物表題登記完了後、子長男名義で所有権保存登記

【登記申請書】

      登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権保存
所 有 者 (長男の住所)○○○○
      (長男の氏名)○○○○
添付情報
  住所証明情報   評価証明情報

所有権保存登記が完了すると、次のように、「権利部(甲区)(所有権に関する事項)」が追加されます。

建物滅失登記と建物表題登記をした方がよいのか

前述しましたとおり、すでに取り壊されている祖父名義の建物滅失登記と、未登記の父名義の建物表題登記をするには、必要書類も多く、土地家屋調査士に支払う手数料(報酬を含む。)も高くなります。(合計約15万円)

そこで、これらの登記については、次の二通りの選択肢があります。

  1. 建物滅失登記と建物表題登記、その後、所有権保存登記をする。
    未登記の父名義の建物を、今後も使用する予定であれば、建物滅失登記と建物表題登記(その後、所有権保存登記)をする必要があります。
  2. 建物滅失登記のみをする。建物表題登記は(所有権保存登記も)しない。
建物滅失登記のみをする。建物表題登記は(所有権保存登記も)しない場合
未登記の父名義の建物を取り壊したタイミングで、祖父名義の建物滅失登記をする。

未登記の父名義の建物を、今後、使用する予定がなく、将来、取り壊す場合、
相談者は、未登記の父名義の建物を、今後、使用する予定がなく、将来、取り壊すつもりであることから、未登記の父名義の建物を取り壊したタイミングで、すでに取り壊されている祖父名義の建物の滅失登記をします。
ただし、未登記の父名義の建物を取り壊す時期を、相続登記の義務化が開始する令和6年4月1日から3年以内に取り壊す必要があります。3年以内に取り壊さない場合、相続登記をしていなかったという理由で、「過料」に処せられる可能性があるからです。

未登記の父名義の建物を取り壊す前に、祖父名義の建物滅失登記をすると・・・

未登記の父名義の建物を取り壊す前に、すでに取り壊されている祖父名義の建物の滅失登記のみをする場合、法務局の担当官は、建物が取り壊されていることを確認するため、現地に出向いて、建物が取り壊されていることを確認します。
この場合、現地には、建物(父名義の未登記建物)が存在していますので、法務局の担当官が建物が取り壊されていないと判断する可能性があります。
建物が存在する事情(父名義の未登記建物であること)を説明した場合、法務局の担当官から、建物表題登記をするように言われる可能性があります。そうしますと、結果として、建物表題登記(その後の所有権保存登記)をしなければならなくなります。

まとめ:建物滅失登記、建物表題登記をするかしないか

結論的には、未登記の父名義の建物を取り壊す前に、建物滅失登記のみするという選択肢はないと考えます。
建物滅失登記と建物表題登記(その後の所有権保存登記)を一緒にするか、両方とも、現時点では、登記しないということがよろしいかと思います。
両方とも、現時点では、登記しない場合は、建物滅失登記をするタイミングを、相続登記の義務化が開始する令和6年4月1日から3年以内に未登記の父名義の建物を取り壊した後に、建物滅失登記をするのがよいでしょう。

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