戸建ての相続登記の方法:私道・ゴミ置場の持分があるとき
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
【相続登記相談】
(質問)被相続人父名義の戸建ての相続登記を相続人の子A名義にしようとしていますが、敷地と建物のほかに、私道(20分の1)とゴミ置場(30分の1)の持分があります。この場合の相続登記の方法を教えてください。

登記簿(登記記録)












相続登記する不動産の特定
例えば、開発業者が分譲した土地の場合、私道やゴミ置場として、敷地以外に持分として登記されている場合があります。分譲地内にゴミ置場があるときは、敷地だけではなく、ゴミ置場なども持分として登記されているかどうかも確認した方がよいでしょう。
これは、次の方法で確認します。
- 権利証(登記済権利証または登記識別情報通知)で確認します。
権利証の「不動産の表示」に私道やゴミ置場が記載されていれば、相続登記する必要性があると考えます。ただし、私道は、取得した後に、市役所などに譲渡される場合があります(公道となる)。 - 公図を(法務局で)取得します。
- 私道については、敷地の前面道路の所有者を調べます。私道の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得します。なお、この際、一応、「共同担保目録付き」で請求します。
- 敷地の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得します。この際、「共同担保目録付き」で請求・取得します。
抵当権など担保権が、現在・過去において登記されている(いた)のであれば、現在、担保権が抹消登記されている場合であっても、「共同担保目録付き」で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することができます。
この「共同担保目録」で、どのような不動産(敷地・建物・私道持分・ゴミ置場持分)に、担保権の登記がされていたのかが分かります。
もし、敷地に、過去、担保権の登記がされていない場合は、周辺の敷地を調べることにより、分譲地内の私道とゴミ置場を特定できることになります。
次を参考にしてください。
相続不動産の特定の方法(土地)
相続登記をした後、登記漏れの不動産を発見したときの登記の方法
意外と重要な「相続登記申請前の不動産の確認」と「相続登記完了後の登記内容の確認」方法
相続登記(不動産名義変更)で不動産の特定と内容を確認する方法
相続登記の不動産を特定する方法(不動産が正確に分からないとき)
事例の場合の相続登記の方法
事例の相続登記の場合、通常、次の申請書3件で登記申請します。
登記申請書(1):敷地と建物
登記申請書(2):私道持分20分の1
登記申請書(3):ゴミ置場持分30分の1
1件で申請書を作成する場合
登記申請書(1)・(2)・(3)をまとめて1件で申請することも可能です。
複数の不動産をまとめて1件で申請する場合、「登記の目的」・「登記の原因」・「申請当事者」が同じであることが必要です。
事例の場合、「登記の目的」・「登記の原因」・「申請当事者」は、次のとおりです。
「登記の目的」:所有権移転(父持分全部移転)
「登記の原因」:〇年〇月〇日相続
「申請当事者」:(被相続人 父)
相続人A
ただし、事例の場合、不動産(敷地・建物、私道、ゴミ置場)で、「登記の目的」が多少異なりますので、「不動産の表示」で、「登記の目的」を「所有権移転」、「父持分全部移転」とそれぞれ、区別して記載することになります。
また、私道、ゴミ置場では「持分」を登記することになりますので、これも、区別して記載することになります。
「不動産の表示」に「登記の目的」と「持分」を記載する
次のように記載します。
登記の目的 所有権移転(ただし、不動産の表示に記載のとおり)
原 因 〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父)
持分は、不動産の表示に記載のとおり
相続人A
不動産の表示
(敷地)
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 宅地
地 積 ○○・○○平方メートル
登記の目的 所有権移転
この価格 金○○円
(建物)
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目 〇番地〇
家屋番号 〇町〇丁目 〇番〇の〇
種 類 居宅
構 造 木造スレートぶき2階建
床 面 積 1階 ○○・○○平方メートル
2階 ○○・○○平方メートル
登記の目的 所有権移転
この価格 金○○円
(私道)
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 公衆用道路
地 積 ○○〇平方メートル
登記の目的 父持分全部移転
持分 20分の1
この持分の価格 金○○円
(ゴミ置場)
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 雑種地
地 積 ○・○○平方メートル
登記の目的 父持分全部移転
持分 30分の1
この持分の価格 金○○円
3件で申請書を作成する場合:戸建ての相続登記の方法:私道・ゴミ置場の持分があるとき
前述のように記載することで1件で申請することも可能ですが、事例の場合、通常、次の申請書3件で登記申請します。法務局も3件で申請することを推奨しています。なぜなら、1件で申請があった場合、登記簿(登記記録)への記載(入力)を誤記しないように、より慎重に行う必要があるからです。
そこで、ここでは、事例の場合、申請書3件で登記申請することとします。。
次の申請書を3件作成し、この順番で申請(法務局に提出)します。
(1/3)登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原 因 令和〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父(氏名)○○)
(住所)○○
子(氏名)○○
氏名ふりがな ○○ ○○
生年月日 〇年〇月〇日
メールアドレス ○○@○○(メールアドレスの申出は任意)
添付情報
登記原因証明情報 住所証明情報 検索用情報証明情報
評価証明情報
令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局 ○○出張所・支局 御中
課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円(課税価格の0・4%)
不動産の表示
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 宅地
地 積 ○○・○○平方メートル
この価格 金○○○円
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目 〇番地〇
家屋番号 〇町〇丁目 〇番〇の〇
種 類 居宅
構 造 木造スレートぶき2階建
床 面 積 1階 ○○・○○平方メートル
2階 ○○・○○平方メートル
この価格 金○○○円
(2/3)登記申請書(一部省略)
登記の目的 父(氏名)○○持分全部移転
原 因 令和〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父(氏名)○○)
(住所)○○
持分20分の1
子(氏名)○○
氏名ふりがな ○○ ○○
生年月日 〇年〇月〇日
メールアドレス ○○@○○(メールアドレスの申出は任意)
添付情報
登記原因証明情報(前件添付) 住所証明情報(前件添付)
検索用情報証明情報(前件添付) 評価証明情報
令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局 ○○出張所・支局 御中
移転した持分の
課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円(課税価格の0・4%)
不動産の表示
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 公衆用道路
地 積 ○○〇平方メートル
(3/3)登記申請書(一部省略)
登記の目的 父(氏名)○○持分全部移転
原 因 令和〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父(氏名)○○)
(住所)○○
持分30分の1
子(氏名)○○
氏名ふりがな ○○ ○○
生年月日 〇年〇月〇日
メールアドレス ○○@○○(メールアドレスの申出は任意)
添付情報
登記原因証明情報(前件添付) 住所証明情報(前件添付)
検索用情報証明情報(前件添付) 評価証明情報
令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局 ○○出張所・支局 御中
移転した持分の
課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円(課税価格の0・4%)
不動産の表示
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 雑種地
地 積 ○・○○平方メートル
登記申請書の「氏名ふりがな」、「生年月日」、「メールアドレス(メールアドレスの申出は任意)」については、現在、記載することが必須となっています。次を参考にしてください(令和7年4月21日から申出開始)。登記申請をするときの検索用情報の申出方法:検索用情報を登記申請書に記載する方法で申出る。
移転した持分の
課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円(課税価格の0・4%)について
移転した持分の課税価格が、100万円以下の場合、令和9年(2027年)3月31日までは、登録免許税が非課税となります。
この場合は、次のように記載します。
移転した持分の
課税価格 金0円
登録免許税 金0円
租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税
まとめ:戸建ての相続登記の方法:私道・ゴミ置場の持分があるとき
(回答)戸建ての相続登記では、敷地のほかに、私道やゴミ置場の持分があるときは、持分の違いに応じて、申請書3件(場合によっては4件以上)で作成し申請します。
複数の不動産をまとめて1件で申請する場合、「登記の目的」・「登記の原因」・「申請当事者」が同じであるかどうかをよく確認することが必要です。
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