横浜市金沢区の相続登記(相談):相続人の中に未成年者がいるときの相続登記の方法
【事例】
横浜市金沢区のマンションの名義人は、被相続人の夫とその妻(相談者・依頼者)で共有名義、各持分2分の1。
相続人は、妻と、子が2名いますが、長女が被相続人の前に死亡していますので、その子2名(相談者・依頼者からみて孫)の4名です。孫の一人は、未成年者です。
相談者・依頼者は、横浜市金沢区のマンションに夫とこれまで居住しており、今後もこのマンションに居住することから、夫の持分を妻が相続して、単独所有としたいと考えています。
また、マンションには、住宅ローンの借入れによる抵当権が設定登記されています。
【遺産】
横浜市金沢区のマンション(敷地権付き)
預貯金合計:1,000万円
住宅ローン残債務:1,000万円
マンションの登記記録(登記簿)は、次のとおりです(表題部は省略)。
相続人の中に未成年者がいますので、どういう方法で相続登記をしたらよいでしょうか。
相続登記の手順
法定相続人が誰になるのかを確定
これは、マンション(横浜市金沢区)の夫の共有持分を妻が相続することになりますので、遺産分割協議を相続人全員で行う必要があります。
そこで、この遺産分割協議に参加できる相続人を確定させる必要があります。
この相続関係図から、法定相続人は次のとおりです。
- 被相続人の配偶者妻
- 子長女が被相続人の前に死亡しているので、代襲相続人としてその子(孫)2名
- 子長男
相続人の中に未成年者がいる時の遺産分割協議は
相続人が未成年者の場合、まずは、未成年者の法定代理人として親権者が遺産分割協議に参加できるかどうかを考えます。
未成年者とは、2022年4月1日から満18歳未満と定められました。
親権者も相続人の場合、親権者が未成年者の法定代理人として参加することは、親権者と未成年者との利益相反行為(りえきそうはんこうい)となりますので、この場合は、家庭裁判所に未成年者特別代理人の選任申立てをします。家庭裁判所で選任された特別代理人が未成年者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。
今回のケースでは、未成年者には父がいます。母が被相続人の前に死亡している場合、父は相続人となれず、その子(未成年者を含めて)が代襲相続人として相続権があります。このため、父が親権者として未成年者の子を代理しても利益相反行為とはなりません。
したがいまして、今回のケースでは、父が未成年者の法定代理人として遺産分割協議に参加し、父が遺産分割協議書に署名・実印を押印(印鑑証明書付き)することになります。
未成年者特別代理人の選任申立をしなければならない場合は、後述します。
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書の署名押印欄には、未成年者の父が次のよう記入します。
相続人(未成年者)○○の親権者○○ (住所) (氏名) (実印を押印)
相続登記に必要な戸籍除籍謄本・住民票(除票)・遺産分割協議書
相続登記に基本的に必要な書類は、相続登記の必要書類を参考にしてください。
夫名義の相続登記(遺産分割協議書)で必要な書類は、次のとおりです。
(1)被相続人夫の出生から死亡までの除籍謄本・戸籍の附票(本籍地を記載)
➡ 妻と婚姻したことと子が全部で何人いるかを証明します。
(2)長女の出生から死亡までの除籍謄本
➡ 被相続人の前に長女が死亡していますので、子が全部で何人いるかを証明します。
(1)の除籍謄本で長女が記載されている場合は、別途、取得する必要がありません。
(3)配偶者妻と長男、代襲相続人孫2名の戸籍謄本
➡ (1)(2)と同じ戸籍に記載されている場合は、別途、取得する必要がありません。
(4)配偶者妻の住民票
➡ 名義人となる人は、住所を証する書面(住民票)が必要です。
(5)印鑑証明書
➡ 配偶者妻、長男、孫の一人、親権者
(6)未成年者の孫と親権者が記載されている戸籍謄本
➡ 親権者が未成年者の法定代理人であることを証明します。
(2)(3)と同じ戸籍に記載されている場合は、別途、取得する必要がありません。
(7)遺産分割協議書
➡ 配偶者妻、長男、孫の一人、親権者が署名・実印を押印します。
相続登記申請の内容
登記の目的 夫持分全部移転
原因 〇年〇月〇日(夫の死亡日)相続
相続人(被相続人 夫)
持分○分の○ 住所 氏名(妻)
その他、登記申請書の内容は、相続登記申請書の書き方を参考にしてください。
登記完了後の妻の権利証について
今回の相続登記で、妻は、マンションを購入した時の持分2分の1と、今回の相続で取得した持分2分の1を合わせて、単独所有となりました。
今回の登記で、妻には、権利証として「登記識別情報通知」が発行されます。
この登記識別情報通知は、今回、妻が取得した持分2分の1についての権利証ということになります。
一般の方が、誤解を招きやすいことは、事例のように、持分を取得し単独所有となったことから、今回発行された登記識別情報通知が、マンション一部屋全体の新たな権利証と思いがちのところがあります。
今回発行された登記識別情報通知は、あくまでも新たに取得した持分2分の1についてのみの権利証です。
この「登記識別情報通知」は権利証として、将来、妻が、今回相続したマンション(横浜市金沢区)を売却などして第三者に名義変更(所有権移転)をする際に必要なものとなります。
大切に保管する必要があります。
権利証として必要なもう一つの権利証
妻は、被相続人の夫と、今回相続したマンション(横浜市金沢区)を購入し、平成10年に登記しています。
その時には、登記済権利証というものが発行されています。この登記済権利証には、名義人の夫が持分2分の1、妻が持分2分の1と記載されています。
妻にとっては、この登記済権利証が持分2分の1の権利証ということになります。
妻が、今回相続したマンション(横浜市金沢区)を売却などして第三者に名義変更(所有権移転)をする際には、この登記済権利証も必要となります。
妻の権利証としては、今回相続で発行された登記識別情報通知(持分2分の1)とマンション購入時に発行された登記済権利証(持分2分の1)を合わせて、所有権全部(マンション一部屋全体)の権利証ということになります。
住宅ローンの借入れによる抵当権の抹消
マンションは、妻の自己資金と夫の住宅ローンの借入れで購入しましたので、登記記録(登記簿)に債務者夫の抵当権が設定登記されています。
住宅ローンの借入れをした場合、団体生命保険に加入するのが通常ですから、住宅ローンの債務者が死亡した場合は、この団体生命保険金でローンを返済し、ローンが消滅することになります。
そうしますと、登記されている抵当権の効力も合わせて消滅します。(これを抵当権の付従性といいます。)
したがいまして、抵当権を抹消登記することができます。
この場合、住宅ローンの金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類を受取り、抹消登記をします。
住宅ローンの完済にともなって債務が消滅し、抵当権の効力も消滅したからといって、これを抹消登記しなければ、半永久的に登記記録(登記簿)に記載されたままとなります。
将来、このマンションを売却する場合、抵当権が登記されたままですと、不動産仲介業者から「抵当権が登記されていますね。住宅ローンを完済する必要があります。」と誤解されます。また、この抵当権を抹消登記することが、売却して買主に名義変更(所有権移転)することの条件となりますので、事前に抹消登記をしておく必要があります。抵当権抹消登記の必要性を参考にしてください。
抵当権抹消登記の方法は、こちらを参考にしてください。
相続登記と抵当権抹消登記にかかった費用
相続登記費用
司法書士報酬:約70,000円(抵当権抹消登記費用を含む)
登録免許税・証明書:約30,000円
合計:約100,000円
未成年者特別代理人の選任申立をしなければならない場合
事例の場合、親権者と未成年者とで利益相反行為となりませんでしたので、家庭裁判所に未成年者時別代理人選任の申立てをする必要がありませんでした。ところが、次のような相続関係の場合は、未成年者特別代理人選任の申立てが必要となります。
事例では、長女が被相続人の父より前に死亡していたことで、長女の子(孫)が代襲相続人となりました。長女の夫は、相続人になれませんでした。
長女が、被相続人の父の後に死亡していた場合(数次相続)は、相続人は、長女の夫と長女の子2名(孫)です。数次相続の場合は、長女の夫も相続人となります。
この場合、遺産分割協議は、長女の夫も相続人として協議に参加することになります。
そうしますと、親権者と未成年者とで利益相反行為となりますので、家庭裁判所に未成年者時別代理人の選任を申立てる必要があります。
選任された特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に参加することになります。遺産分割協議書には、選任された特別代理人が署名・実印を押印(印鑑証明書付き)します。
相続登記では、「未成年者特別代理人選任審判書」を法務局に提出します。
なお、特別代理人となる人は、司法書士など専門家を「候補者(申立書に記載)」とすることもできますが、相続人ではない親戚の方を候補者(申立書に記載)とすることができます。通常は、親戚の方がいる場合は、親戚の方に協力してもらった方がよいでしょう。
この場合、家庭裁判所は、すんなり親戚の方を特別代理人に選任してくれます。
事例で、長女の長女(孫)も未成年者で、未成年者が二人いるときは、未成年者それぞれについて特別代理人の選任を申立てる必要があります。
未成年者特別代理人が選任された場合の遺産分割協議書の内容
事例の場合、相続人の妻が遺産全部を相続することにしました。これは、親権者と未成年者とで利益相反行為にならないことからできたことです。
ところが、親権者と未成年者とで利益相反行為となり、未成年者特別代理人が選任された場合、相続人の妻が遺産全部を相続することの遺産分割協議は、家庭裁判所が現在認めておりません。
未成年者特別代理人選任の申立てをする際、家庭裁判所には、遺産分割協議書(案)を提出して、遺産分割協議書の内容で問題がないかどうかを家庭裁判所が審査します。
このため、事例のように妻が遺産全部を相続することで、未成年者が何も相続しないことは、家庭裁判所が認めておりません。
このように、未成年者が何も相続しないことの遺産分割協議の内容では、特別代理人を選任して、遺産分割協議をすることが意味のないものとなってしまうからです。
最低限、未成年者の法定相続分に相当する遺産を未成年者が相続するという遺産分割協議の内容にします。
ただし、被相続人に債務があり、これを含めて相続する場合、未成年者が不利とならない場合、例えば、妻が遺産全部を相続するが、債務も相続して、プラスマイナス0円となるような場合は、家庭裁判所は、これを認めます。
横浜市金沢区の相続登記や相続については、当司法書士事務所にご相談ください。
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