- 相続登記で「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」が必要な場合と必要としない場合
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相続登記で「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」が必要な場合と必要としない場合
相続登記・遺産相続手続の相談内容
相談内容:現在、自分で被相続人妻の○○ドットコムの遺産について、公正証書遺言書で相続手続をしているところです。本日、担当者から連絡があり、戸籍(除籍)謄本については、被相続人妻の改製原戸籍・除籍謄本が必要とのことで、死亡時の戸籍謄本だけではなく、被相続人妻の「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」の提出が必要と連絡を受けました。この「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」が必要なのでしょうか。
公正証書遺言書で相続手続を行う場合、被相続人妻の「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」が必要でしょうか。
不動産の相続登記や預貯金などの遺産相続手続では、相続手続の必要書類として「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を各手続先に提出しなければ手続が完了しない場合があります。
この書類がどういう場合に必要で、どういう場合に必要でないかを解説します。
「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要とする場合とその理由
(1)法定相続(分)で相続登記・遺産相続手続を行う場合に必ず必要
法定相続(分)で相続登記・遺産相続手続を行う場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必ず必要とします。
法定相続(分)で相続登記・遺産相続手続を行う場合とは、民法に規定されている法定相続人名義で手続を行う場合のことをいいます。
法定相続人が複数いる場合は、民法に規定されている法定相続分で手続を行います。
この場合、遺産分割協議書を作成する必要はありません。これは、あくまでも民法の規定にしたがって手続を行うからです。
相続人が配偶者(例えば、妻)のみである場合に必要な戸籍除籍謄本は、次のとおりです。
「被相続人配偶者(例えば、夫)の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、子がいなかったこと(あるいは、すでに死亡している)を証明します。
これは、第1順位の相続人である子(孫)がいないことを証明します。
次に、第1順位の相続人である子(孫)がいないことで、第2順位の両親(祖父母)が相続人となります。
この場合、第2順位の両親(祖父母)が死亡していることの記載のある除籍謄本で、第2順位の両親(祖父母)がいないことを証明します。
さらに、第2順位の両親(祖父母)がいないことで、第3順位の兄弟姉妹(甥姪)が相続人となります。
この場合、「両親の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、兄弟姉妹(甥姪)がいなかったこと(あるいは、すでに死亡している)を証明します。
相続人が配偶者と子である場合に必要な戸籍除籍謄本は、次のとおりです。
「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、子が誰と誰であるか証明します。
相続人が子のみである場合に必要な戸籍除籍謄本は、次のとおりです。
「被相続人父の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、子が誰と誰であるかと、配偶者母が死亡または離婚していたことを証明します。
相続人が被相続人の両親(祖父母→・・・)である場合に必要な戸籍除籍謄本は、次のとおりです。
被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、子がいなかったこと(あるいは、すでに死亡している)を証明します。
これは、第1順位の相続人である子(孫)がいないことを証明します。
次に、第1順位の相続人である子(孫)がいないことで、第2順位の両親(祖父母)が相続人となります。両親(祖父母)の戸籍謄本が必要です。
相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合に必要な戸籍除籍謄本は、次のとおりです。
「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、子がいなかったこと(あるいは、すでに死亡している)を証明します。
これは、第1順位の相続人である子(孫)がいないことを証明します。
次に、第1順位の相続人である子(孫)がいないことで、第2順位の両親(祖父母)が相続人となります。
この場合、第2順位の両親(祖父母)が死亡していることの記載のある除籍謄本で、第2順位の両親(祖父母)がいないことを証明します。
さらに、第2順位の両親(祖父母)がいないことで、第3順位の兄弟姉妹(甥姪)が相続人となります。
この場合、「両親の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人の兄弟姉妹(甥姪)が誰と誰であるか証明します。兄弟姉妹(甥姪)の戸籍謄本が必要です。
(2)遺産分割協議書で相続登記・遺産相続手続を行う場合に必ず必要
遺産分割協議書で相続登記・遺産相続手続を行う場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必ず必要とします。
遺産分割協議書で相続登記・遺産相続手続を行う場合とは、民法に規定されている法定相続人全員(相続放棄者などを除く)で遺産分割について協議をする場合のことをいいます。
遺産分割協議が成立するには、法定相続人全員(相続放棄者などを除く)で協議したことが必要です。
「遺産分割協議書に署名・実印を押印した人」が遺産分割協議をした法定相続人全員(相続放棄者などを除く)であることを証明するため、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」が必要となります。
相続人が誰かによって「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」が必要となるかは、前述の法定相続(分)で相続登記・遺産相続手続を行う場合と同じです。
(3)遺言書で相続登記・遺産相続手続を行う場合
遺言書で「相続する」場合の遺言書は、公正証書遺言書、自筆証書遺言書(家庭裁判所の検認が必要な自筆証書遺言書、登記所保管制度を利用した自筆証書遺言書)などに共通しています(同じです)。
遺言書では、「相続人○○に相続させる。」と記載され、この○○が法定相続人である場合です。
しかし、遺言書に「相続人○○に相続させる。」と記載されているが、この○○が法定相続人ではない場合、不動産の相続登記では、登記の原因を「相続」で登記することができません。
登記の原因を「相続」で登記する場合、名義人となる人は法定相続人であることが必要だからです。
したがって、名義人となる人が法定相続人であることを証明するための被相続人と相続人の関係を証明する戸籍除籍謄本が、まずは、必要となります。
遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の両親・祖父母(→・・・)である場合に必ず必要。
相続人が、被相続人の両親・祖父母(→・・・)である場合、両親・祖父母(→・・・)は、第2順位の相続人であるので、第1順位の子がいなかったこと(あるいは、すでに死亡している)を証明するため、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」が必ず必要となります。
遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の兄弟姉妹・甥姪である場合に必ず必要。
相続人が、被相続人の兄弟姉妹・甥姪である場合、兄弟姉妹・甥姪は、第3順位の相続人であるので、第1順位の子がいなかったこと(あるいは、すでに死亡している)を証明するため、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」が必ず必要となります。また、第2順位の両親・祖父母(→・・・)が死亡していることを証明するため、両親・祖父母(→・・・)の死亡の記載のある除籍謄本が必要となります。
法定相続(分)による手続や遺産分割協議書による手続のように、「両親の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」によって、被相続人には、兄弟姉妹(甥姪)が誰と誰であるかを証明する必要はありません。
相続人が、被相続人の兄弟姉妹・甥姪である場合は、被相続人と相続人が兄弟姉妹(甥姪)の関係であったことを証明すればよいからです。
遺言書では、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要とする場合と必要としない場合がある。
遺言書で相続登記・遺産相続手続を行う場合、前述のように、「相続」する相続人が被相続人の両親(祖父母)や兄弟姉妹(甥姪)の場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要としますが、これ以外の場合で必要とする場合と必要としない場合があります。
(1)遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の配偶者である場合、必要としない。
遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の配偶者である場合、配偶者は、常に最初の法定相続人であるので、ほかの順位の相続人がいたとしても、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要としません。
被相続人と相続人配偶者が婚姻をしていたことを証明する戸籍謄本があれば問題ありません。
(2)遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の子である場合、必要としない。
遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の子である場合、子は、第1順位の法定相続人であるので、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要としません。
子が被相続人の子であることを証明する戸籍謄本があれば問題ありません。
(3)遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の両親(祖父母)である場合に必ず必要。
遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の両親(祖父母)である場合、両親(祖父母)は第2順位の相続人であるので、第2順位の相続人であることを証明するため、第1順位の相続人である子がいなかったこと(あるいは、死亡していたこと)を証明する必要があります。
したがって、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要とします。
(4)遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の兄弟姉妹(甥姪)である場合に必ず必要。
遺言書で「相続する」相続人が、被相続人の兄弟姉妹(甥姪)である場合、兄弟姉妹(甥姪)は第3順位の相続人であるので、第3順位の相続人であることを証明するため、第1順位の相続人である子がいなかったこと(あるいは、死亡していたこと)を証明する必要があります。
したがって、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要とします。
また、第2順位の相続人である両親(祖父母)が死亡していることを証明するため、両親(祖父母)の除籍謄本が必要です。
(5)遺言書で「遺贈を受ける」人が、相続人以外の人である場合、必要としない。
遺言書で「遺贈を受ける」人が、相続人以外の人である場合とは、遺言書には、「○○に遺贈する。」と記載されている場合です。
この場合、○○は法定相続人ではないので、法定相続人がいたとしても「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要としません。
被相続人が死亡したことの記載のある除籍謄本のみで問題ありません。遺贈を受ける人(受遺者)の戸籍謄本も必要ありません。
遺贈による登記は、通常の相続登記の方法と異なります。通常の相続登記は、相続人が単独で登記できますが、遺贈による登記では、受遺者が単独で登記申請できず、受遺者と遺言執行者(または法定相続人全員)との共同申請の方法となります。
遺贈による登記の方法は、次を参考にしてください。
遺贈の登記(遺言書がある場合の遺贈の登記)
公正証書遺言書による遺贈登記:必要書類、申請方法、費用
特殊な場合:遺言書で「遺贈を受ける」人が、法定相続人である場合
遺言書で「遺贈を受ける」人が、法定相続人である場合とは、法定相続人が遺言書で遺産を譲り受ける場合、ほとんどの場合は、「(例えば、妻)○○に相続させる。」と記載されます。
これが、「(例えば、妻)○○に遺贈する。(贈与する。)」と記載されている場合、不動産の相続登記では、登記の原因を「相続」とすることができず、「遺贈」を登記原因として登記しなければなりません。
この場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」を必要としませんが、被相続人と相続人配偶者の関係を証明するため、戸籍謄本が必要となります。
これは、子の場合も同じです、。「(例えば、長男)○○に遺贈する。(贈与する。)」と遺言書に記載されていれば、被相続人父と子の戸籍謄本で戸籍上の親子関係を証明する必要があります。
以上の点は、相続手続上の書類として必要なのではなく、不動産の相続登記を申請する際の登録免許税の計算で必要となるからです。
登記の原因を「遺贈」とする場合、登録免許税の税率は、2%ですが、法定相続人が受遺者となる場合は、「相続」を登記原因とする場合と同じで、税率が0・4%で計算することになるからです。
したがって、配偶者の関係または親子の関係を証明する戸籍謄本を法務局に提出しない場合、登録免許税の税率を2%で計算し、登録免許税を納めることになります。
この理由から、遺言書で「遺贈を受ける」人(受遺者)が被相続人の両親(祖父母)や兄弟姉妹(甥姪)の場合、「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」で第1順位の子がいないこと(あるいは、死亡していること)を証明し、兄弟姉妹(甥姪)が受遺者となる場合、第2順位の相続人である両親(祖父母)が死亡していることを証明するため、両親(祖父母)の除籍謄本が必要です。
したがって、受遺者が被相続人の両親(祖父母)や兄弟姉妹(甥姪)の場合は、登録免許税の関係から「被相続人の出生から死亡までの戸籍除籍謄本」と両親(祖父母)の除籍謄本が必要となります。
遺言書で「遺贈を受ける」人(受遺者)が被相続人の両親(祖父母)や兄弟姉妹(甥姪)の場合、これらの人が「法定相続人」であることを証明することによって、登録免許税の税率を「相続」の場合と同様に0・4%とすることができます。
相続登記・遺産相続手続の相談内容の回答
相談内容:現在、自分で被相続人妻の○○ドットコムの遺産について、公正証書遺言書で相続手続をしているところです。本日、担当者から連絡があり、戸籍(除籍)謄本については、被相続人妻の改製原戸籍・除籍謄本が必要とのことで、死亡時の戸籍謄本だけではなく、被相続人妻の「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」の提出が必要と連絡を受けました。この「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」が必要なのでしょうか。
今回の不動産の相続登記や金融機関の預貯金の相続手続は、公正証書遺言書で行っていますので、被相続人奥様の「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」は必要ありません。 現に、不動産の相続登記の法務局の手続では、登記が完了しています。(2022年横浜地方法務局港北出張所で登記完了) 被相続人奥様の「出生から結婚までの改製原戸籍・除籍謄本」が必要でない理由は、次のとおりです。 遺言書で相続手続をする場合、配偶者の夫と被相続人奥様の死亡記載のある戸籍謄本で、相続人である配偶者の夫が奥様の配偶者であったことを証明できれば問題ありません。配偶者は、常に最初の相続人であるからです。 奥様に子がいた場合であっても、奥様の子がいたかどうかを証明する必要がありません。 遺言書で、配偶者の夫に相続させると記載されていますので、子がいたとしても、相続手続で子の同意は必要ありません。当然に、遺言書で相続手続を行うことができます。子がいたかどうかは問題ありません。 特に、手続を行う金融機関がそのこと、子がいたかどうかを問題にする必要がありません。 もし、子がいたとすれば、「遺留分」の問題がありますが、遺留分の問題は、金融機関と相続人の問題ではなく、相続人同士での問題だからです。金融機関が遺留分の問題に介入する法律上の権利義務はありません。 以上の内容から、○○ドットコムの担当者は、この辺の知識がないと思われます。
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