相続登記と相続人が外国人(台湾の方の場合)
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
被相続人と相続人が台湾の方の場合、相続証明書は、どのような書類を用意すれば、よいでしょうか。
被相続人が日本に居住していた当時、日本の不動産を購入し、その不動産に居住していた場合があります。この場合、不動産の名義を変更(相続登記)する必要があります。
また、相続人も日本に居住している場合があります。台湾の方が日本人と結婚している場合もあります。相続人の一人がアメリカに居住している場合もあります。このように、被相続人、相続人の居住地によって相続登記に必要な書類が増えることになります。
また、台湾語(中国語)や外国語を日本語訳にする(誰が翻訳しても問題ありません。)必要がありますので、相続人にとっては、大変な作業と費用がかかることになります。
このようなことがありますので、被相続人が日本に居住しているうちに「遺言書(公正証書遺言書)」を残していた方が必要書類を揃えるのにそれほど苦労することはありません。
次を参考にしてください。
相続登記をスムーズ(比較的簡単)に行うための「台湾籍の方の公正証書遺言書作成」
被相続人と相続人が台湾の方の場合の「基本」
台湾籍の方の法定相続人
台湾籍の方が日本の不動産や預貯金の相続手続を行う場合の「法定相続人が誰がなるのか」は、基本的に日本人と同じです。ただし、第4順位の相続人は、祖父母です。

台湾の養子縁組
台湾民法を参照してください
養子縁組
第 1083 條
養子女及收養效力所及之直系血親卑親屬,自收養關係終止時起,回復其本姓,並回復其與本生父母及其親屬間之權利義務。但第三人已取得之權利,不受影響。
(翻訳)
第1083条
養子及び養子縁組の効力の及ぶ直系血族卑属は、養子縁組が終了した時から、その本姓に復し、かつ、その実の父母及びその親族との間の権利義務を回復する。但し、第三者が既に取得した権利は、影響を受けない。
縁組によって他の家の養子となった者は、縁組前血族の相続人となりません。
これは、台湾民法1077条は「養子と養父母の関係は、法律に別段の規定がある場合を除くほか、嫡出子と同一とする。」と規定し、
さらに、台湾民法1083条は「養子は離縁したときから、その本姓を回復し、かつ、その実父母との関係を回復する。但し、第三者が既に取得した権利は、これによって影響を受けない。」と規定しています。
以上のことから、養子は養父母の相続人となりますが、養子縁組後は実方の実父母の相続人とはならないことになります。
日本の養子縁組との違いは、養子の相続を参考にしてください。

(質問)養子が離縁(養子縁組を解消)した場合、養親の戸籍(縦書き、手書き)に離縁の旨が記載されますか。
(回答)離縁(養子縁組の解消)の場合、養子の戸籍にのみ記載され、養親の戸謄(縦書き、手書き)には記載されません。
(以上、台湾地政士に確認)
養子となった、例えば、被相続人実父の子が、現在も離縁(養子縁組を解消)していないかどうかを確認するため、被相続人実父の子(養子)の戸籍証明書を取得する必要があります。
台湾の戸籍制度
台湾では、日本と同様に戸籍制度があります。このため、日本人と同様に、被相続人の出生から死亡までの「除籍・戸籍全部証明書(謄本)(縦書きの紙の戸籍も含めて)」と相続人であることを証明する相続人の「戸籍全部事項証明書(謄本)」が必要となります。登記所においては、この見解です。
台湾戸籍除籍謄本の取得方法を参考にしてください。
中国本土の方の場合、中国本土では、そもそも戸籍制度がありませんので、相続人全員が日本に居住しているのであれば、相続関係を証明する書面1枚を中国大使館で証明してもらうだけで済みます。日本人の相続よりも遥かに簡単です。
台湾の役場で取得する戸籍証明書を3段階で認証してもらうことが必要
台湾の役場で戸籍証明書を取得しましたら、さらに次の3段階の認証が必要となります。
登記の見解は、次のとおりです。
日本と台湾は正式な国交がありませんので、日本政府は台湾を「国」として認めておりません。
そのため、台湾の役所が発行した戸籍証明書を正式な文書として認めておりません。この証明書だけでは足りないということになります。
こういう事情がありますので、登記所としては、基本的に3段階の「認証」を必要とします。
この3段階の認証を得る作業は、面倒な作業となります。
以上が基本です。
ただし、当事務所では、過去、依頼者が持参した「3段階の認証がない戸籍証明書」で登記をしたことがあります。「3段階の認証」を要求するかどうかは、実際、管轄の登記官の判断に委ねられます。

金融機関での預貯金の相続手続では、この3段階の認証を要求されることはないようです。
ゆうちょ銀行・みずほ銀行・横浜銀行・三菱UFJ銀行では3段階の認証なしで相続手続が完了しています。(2019年)
この「3段階の認証」が必要かどうかを、事前に登記所に確認できれば、問題ありませんが、この確認を事前に登記所にした場合、登記官は、「3段階の認証」が必要です、と言います。理由は、「3段階の認証」が基本だからです。
そこで、相続人本人が台湾の役場に出向いて「戸籍証明書」を取得するか、あるいは、台湾の親族または専門職に「戸籍証明書」の取得を依頼した場合(日本にある台北駐日経済文化代表処で委任状を認証してもらう)、この「3段階の認証」のうち①②の認証をしていただきます。
もし、この「3段階の認証」の①②ができないのであれば、やむを得ず、そのまま送っていただいてください。
前述のとおり、登記所では「3段階の認証」を基本としていますが、「3段階の認証」のない「戸籍証明書」で登記申請した場合、登記所が申請を通してくれるかどうかは、登記官の判断に委ねられることになります。
もし、登記官がどうしても「3段階の認証」が必要だということになりましたら、「3段階の認証」を取得していただくことになります。

● 台湾で戸籍除籍謄本の公証手続を行う際、裁判所公認の公証人から次のように言われることもあります。
「これまで日本向けの謄本資料については、公証に加えてさらに外交部の認証が必要だとされた事例は聞いたことがない。公証された資料だけで日本側が承認しているため、外交部の認証は不要であり、無駄な費用をかける必要はない」
↓
この点については、日本の手続先の法務局・金融機関で対応(運用の仕方)が異なります。事前に、公証人・外交部の認証が必要かどうかを法務局・金融機関に確認すれば、必要だと言われます。(当司法書士事務所では、過去、事前に確認したことがありません。)
金融機関の手続案内文では、3段階の認証が必要だと記載している金融機関もあります。
実際、過去の手続で、必要だと言われたことがあります。この時は、他の法務局では、認証なしで手続が完了した旨を伝えたところ、手続が完了しております。
そもそも、日本と台湾とでは、正式な国交がありませんので、公証人・外交部の認証を受けるのが基本であると、法務局・金融機関は認識しています。
さらに、日本にある台北経済文化代表処で、認証を受ける必要があります。
つまり、台湾の戸籍除籍謄本など公文書については、3段階の認証を受けるのが基本です。
このような基本原則がありますので、当司法書士事務所では、手続において間違いのない方法を選択しています。
手続中に、公証人・外交部の認証が必要だと言われた場合、その後、公証人・外交部の認証をしてもらうことは、さらに時間がかかってしまうことになるからです。
しかし、最近は、これらの認証がなくても、おおむね、手続が完了しています。
日本から台湾の親戚の方に、戸籍除籍謄本を取得してもらう場合もあります。この場合、ほとんどすべて認証がありません。(なぜなら、当司法書士事務所に相談する前に戸籍除籍謄本を取得しているからです。)
ただ、だからと言って、専門家の司法書士が、これらの認証は必要ないと、断言できない理由は、前述のとおりです。(法務局・金融機関が必要だと認識している。)
本来、3段階の認証が必要だということと、実際に、手続が完了していることとは、別問題です。
裁判所公証人が、一般の人から認証を求められない理由は、一般の人が、3段階の認証が必要だということを知らないからです。知らないので、公証人が認証を求められたことがないということになります。
裁判所公証人が、外交部の認証は必要ないと言っていることは、日本と台湾との正式な国交がない場合の公文書の取り扱いを知らない可能性があります。
当司法書士事務所では、過去、このようなことを言われたこと(外交部の認証は必要ない)は、一度もありません。
今回の遺産調査では、市役所・金融機関には、外交部の認証がない書類を提出しています。これで問題なく審査を通っています。
また、外交部の認証文を提出することは、その翻訳文も提出する必要がありますので、手間がかかります。過去、この翻訳文も提出したことがあります。
3段階の認証
「3段階の認証」は次のとおりです。台湾の役場で「戸籍証明書」を取得した後、
① 台湾にある公証人役場で、戸籍の認証を受けます。
② 台湾にある外交部で、「公証人の認証を受けた戸籍証明書」に認証文を付けてもらいます。
日本に郵送された後
③ 日本の台北駐日経済文化代表処で、「①②の認証文の付いた戸籍証明書」に認証文を付けてもらいます。
この代表処には相続人本人が出向いていただくことになります。出向く場合は、事前の予約が必要です。
当職も依頼者と一緒に出向いたことがありますが、窓口の担当者によって、対応の仕方が異なります。日本語(会話)でも問題ありませんが、親切に対応してくれる人と不親切な対応の人がいます。不親切な人の対応の場合、手続がなかなか進みません。
東京在住の方は、
台北駐日経済文化代表処
東京の住所・電話番号
業務内容
戸籍証明書の認証
台湾で発行された戸籍証明書で被相続人の相続人全員を確定できない場合
前述のとおり、台湾の方の場合、日本人の相続の場合と同様に、被相続人の出生から死亡までの「戸籍証明書」と相続人の「戸籍証明書」が必要となります。
もし、被相続人の出生から死亡までの連続性を証明できない場合は、次のような書面を登記所に提出します。
(1)被相続人の「外国人登録原票写しの証明書」
(2)相続人の「外国人登録原票写しの証明書」
(3)上申書
登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する
「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことは、日本人の相続登記の場合であっても同じです。日本人の場合、住民票の除票でこれを証明できれば問題ありません。
「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことは重要です。
これを証明できないのであれば、相続登記そのものができません。登記名義人とは別の被相続人の可能性があるからです。登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明することによって登記がなされます。登記名義人と被相続人が同一人物であることは、基本的に「住所と氏名」で特定します。
そのため、日本人の場合は、被相続人の死亡時の「住民票の除票(または戸籍の附票)」に登記上の住所が記載されていることが必要となるわけです。日本人の場合であっても、死亡時の「住民票の除票(または戸籍の附票)」を取得できない場合があります。これは、被相続人の死亡時から5年を経過している場合です。(役所は、法律の規定により5年でこれらのデータを破棄処分する取り扱いです。)
このような「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことができない場合は、どうしたらよいでしょうか。
この場合、被相続人が不動産を取得したときに登記所から発行された「権利証(登記済権利証または登記識別情報通知)」があれば問題ありません。
なぜなら、このような「権利証」を持っている人は、通常、登記名義人といえるからです。登記名義人でなければ「権利証」を持っていないからです。したがって、相続における登記名義人は、「権利証」を持っていた「被相続人」といえるからです。

よく相続登記では「権利証」は必要ないと言われます。これは、登記申請における必須の書類ではないからです。しかし、前述のとおり、相続登記においても、別の登記においても、「登記名義人と被相続人(別の登記では申請人)とが同一人物であることを証明すること」は登記において最重要事項です。これが登記手続きを進める上での前提条件となります。
ですから、相続登記だからと言って、「権利証」は不要です、とは軽々しく言えないことになります。もし、この権利証がない場合は、別の方法(上申書など)をとることになります。登記所としては、別の方法(上申書など)よりも「権利証」を提出してくれれば安心してくれます。
被相続人が台湾の方の場合、日本で死亡したのではなく、台湾で死亡した場合(あるいは別の外国で)は、日本における「最後の住所」と「登記上の住所」を関連付けることで「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことができません。
このような場合、前述しましたとおり「権利証」があれば問題ないことになります。
相続人が用意する書類(遺産分割協議で1名の名義とする場合)
相続人が台湾籍の場合で、日本に居住している場合
- 台湾の戸籍証明書(相続人であることを証明)
- 住民票
- 印鑑証明書
- 遺産分割協議書に署名・実印を押印
相続人が台湾籍の場合で、台湾に居住している場合
- 台湾の戸籍証明書(相続人であることを証明)
- 印鑑証明書(台湾の役所で発行したもの)
- 遺産分割協議書に署名・実印を押印
相続人が日本国籍(帰化した場合)で、日本に居住している場合
- 日本の戸籍証明書(相続人であることを証明)
- 住民票
- 印鑑証明書
- 遺産分割協議書に署名・実印を押印
相続人が台湾籍で、日本に居住していない場合(例えば、アメリカに在住の場合)
- 台湾の戸籍証明書(相続人であることを証明)
- 遺産分割協議書をアメリカの公証人の面前で供述宣誓し、公証人が作成した遺産分割協議の供述宣誓書(日本語訳にする。)
被相続人が日本人で、相続人が台湾の方の場合
被相続人が日本人(日本国籍)で、相続人が外国人(外国籍)の場合、相続証明書は、どのような書類を用意すれば、よいでしょうか。
これは、特に、被相続人日本人の相続人が外国人の配偶者の場合です。
相続人が外国人配偶者の場合
外国人の配偶者は、日本人の配偶者の戸籍に記載されません(ただし、日本人の戸籍事項に記載されます。)。日本人の戸籍に記載されれば配偶者であること、相続権があることを証明できます。しかし、外国人は日本人と同じように結婚したからと言って日本人の配偶者の隣に記載されることはありません。もっとも、被相続人の婚姻関係にある子は日本人であるので、被相続人の戸籍に記載されます。
外国人の配偶者は、日本人の配偶者の戸籍事項に記載されるだけです。例えば、日本人の「○○は、○○(外国名)の○○(氏名)と年月日婚姻した。」と記載されるだけです。これをもって、外国人の配偶者が被相続人日本人の相続権があると証明する書類(相続証明書:日本人であれば戸籍謄本)とはなりません。

例えば、日本人の「○○は、○○(外国名)の○○(氏名)と年月日婚姻した。」と記載されていることは、その当時に婚姻したということを証明するだけで、これをもって、被相続人の死亡時まで外国人の配偶者と婚姻関係にあったということを証明できないからです。婚姻後、外国人の配偶者が離婚または死亡している場合があります。(配偶者の離婚または死亡を届け出なければ記載されません。)この場合、外国人の配偶者に相続権がありません。また、外国人の配偶者が被相続人と婚姻関係にあったことを証明する書類は、被相続人の死亡後に取得したものであることが必要となります。
被相続人については、日本人(日本国籍)であるので、通常どおり被相続人の出生時から死亡時までの戸籍の証明書が必要です。
相続人については、外国人(外国籍)の場合、その外国に、日本のような戸籍制度があれば、日本人が相続人の場合と同様に、戸籍証明書が必要です。
その外国に、日本のような戸籍制度がなければ、戸籍証明書を用意することが不可能なので、そもそも戸籍証明書を取得することができません。
この場合、日本に居住している外国人の場合は、日本にある外国の大使館で、被相続人と相続人との関係を陳述した書面に、外国の大使館の証明書(認証文)を付けてもらい、その外国文書を日本文に翻訳したものを用意します。
外国に居住する外国人の場合は、その外国の公証人の面前で相続人であることを陳述した書面に、公証人の認証文を付けてもらい、その外国文書を日本文に翻訳したものを用意します。
相続人が台湾の配偶者の場合
相続人が台湾の方の場合は、どうでしょうか。
台湾には、日本と同様に戸籍制度がありますので、戸籍の証明書を取得することが可能です。登記所では、この解釈ですので、相続人が台湾の方の場合、台湾の戸籍証明書を求めます。
台湾の証明機関(役場)で、戸籍証明書を取得し、これを日本文に翻訳したものを用意します。
ところで、台湾の方が、長年月、日本に居住し、永住権もあり、本国の戸籍証明書を取得することが困難な場合(事実上取得できない場合)は、どうしたらよいでしょうか。例えば、第二次世界大戦の終戦の頃に日本で生まれた台湾の方の場合です。
この場合、本国に戸籍制度があるので戸籍証明書を取得しなさい、ということにこだわると、どうしても取得できない場合、永久に、相続登記ができなくなってしまいます。
そこで、登記所の対応は、次のとおりです。(横浜地方法務局川崎支局と大和出張所)
外国人の本国に、戸籍制度がある場合、戸籍証明書を取得するのが基本です。
戸籍証明書を取得することが困難な場合、これに代わり、補完する証明書を提出します。
被相続人の除籍謄本には、被相続人と外国人の配偶者の婚姻事項が記載されていますので、
A:(外国人の)登録原票に家族事項を追記したものの証明書を取得します。
家族事項の記載には、
〇相続人である外国人の生年月日、国籍、婚姻の年月日
〇被相続人との関係、被相続人の氏名、生年月日、死亡日、配偶者の旨、日本国籍の旨
〇子がある場合は、子の氏名、生年月日、日本国籍の旨
B:他に相続人のいないことの上申書
以上の取り扱いを認める理由は、被相続人の除籍謄本と家族事項の記載のある(外国人の)登録原票記載事項証明書により、実質的に、外国人(台湾の方)が、被相続人の配偶者であったことを確認でき、相続人であることを認めることができるからです。
ところが、以上の内容は例外の取り扱いなので、横浜地方法務局栄出張所のように、登記所によっては、外国人の本国に戸籍制度がある以上、外国機関発行の戸籍証明書を提出を求める登記所もありますので、申請する登記所と打ち合わせるのがよいでしょう。

相続登記の場合でいえば、基本的に必要な書類(被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄本など)が決められています。もし、必要な書類が現実的に用意できない場合、これを補完する書類を用意するしかありません。補完できないのであれば登記ができないことになります。補完書類を用意する理由は、相続関係が確かであると登記所の登記官が納得できるほどのものであることが必要です。登記所の登記官が納得できるほどの書類をできるだけ用意すれば登記は可能となります。
被相続人が台湾の方の相続登記(戸籍証明書がない場合)も参考にしてください。

現在、外国人登録原票の写しまたは外国人登録原票記載事項証明書を取得できるのは、基本的に、死亡した外国人の配偶者、直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹です。
兄弟姉妹の甥姪は、これを取得できません。配偶者、直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹が死亡している場合、兄弟姉妹が全員亡くなっている場合、甥姪がいても、これを取得できません。結果、誰も取得できないことになります。
出入国在留管理庁総務課情報システム管理室出入国情報開示係に電話確認済み。
以上の点については、出入国在留管理庁のホームページを参照してください。
日本在住の被相続人が台湾籍、相続人も台湾籍の方の「除籍・戸籍全部事項証明書(謄本)」が必要な理由
【質問】 現在、台湾では、家族全員の謄本を取るのはできないそうです。本人のものだけしか取れないそうです。
現在、別の台湾の方の相続登記をしておりますが、戸籍(除籍)全部事項証明書(謄本)を取得できております。その戸籍に記載されている人全員が記載されている証明書(謄本)です。
現在、台湾では、本人1名のみの戸籍一部証明書(抄本)しか発行しないのが原則であることを、当職も理解しております。
ですが、特別の事情があれば、実際には、戸籍(除籍)全部事項証明書を発行してもらえます。
この場合、特別の事情を役所の担当者に説明する必要があります。
特別の事情は、次の内容です。このことを役所の担当者に説明してください。
(1)被相続人の父について
日本の相続手続では、被相続人(父)の生まれたときから死亡したときまでの戸籍が全部必要です。戸籍の記載証明書は、その戸籍に記載されている人全員が記載されたもの(謄本・全部事項)が必要です。
「その戸籍に記載されている人全員が記載されたもの」で、父の子供が誰と誰であるのか、ほかに子供がいないことを証明します。
ですので、父のほかの人全員が記載されたもので、ほかに子供がいないことを確認、証明することができます。
父一人の戸籍(抄本・一部証明書)では、父の子供が誰と誰であるのかを確認すること、証明することができないからです。
(2)相続人の母について(台湾戸籍には、父と結婚した記載がない。)
相続人の母が、父の配偶者であることを台湾戸籍で証明する必要があります。
ゆうちょ銀行の説明文では、
母が父の戸籍に記載されていない場合は、母に関する除籍・戸籍謄本を16歳からのものすべてを提出するように記載されています。
母の台湾戸籍には、父と結婚した記載がないからといって、母の戸籍全部事項証明書が不要ということにはなりません。
母が父と結婚した記載がない場合であっても、母の台湾戸籍が必要です。
この場合、母に関する除籍・戸籍謄本(全部事項証明書)を16歳から現在まですべて取得する必要があります。
なぜなら、ほかの誰とも結婚していなかったことを証明する必要があるからです。
このことを確認、証明する意味でも、その戸籍に全員が記載されている除籍・戸籍謄本(全部事項証明書)を取得する必要があります。
(3)父:除籍・戸籍謄本(全部事項証明書)の取得方法
① 父が生まれたときの除籍謄本(全員が記載されたもの)
② 戸主が本籍を変更しているときは、変更後の本籍の除籍謄本(全員が記載されたもの)
③ 戸主が別の人になったときは、変更後の戸主の除籍謄本(全員が記載されたもの)
④ 戸主が本籍を変更しているときは、変更後の本籍の除籍謄本(全員が記載されたもの)
・
・
というように本籍や戸主が変更していれば、これらの連続したものが必要です。
⑤ 父の現在の除籍事項全部証明書(戸籍謄本)
(4)母:除籍・戸籍謄本(全部事項証明書)の取得方法
① 母が16歳のときの除籍謄本(全員が記載されたもの)
② 戸主が本籍を変更しているときは、変更後の本籍の除籍謄本(全員が記載されたもの)
③ 戸主が別の人になったときは、変更後の戸主の除籍謄本(全員が記載されたもの)
④ 戸主が本籍を変更しているときは、変更後の本籍の除籍謄本(全員が記載されたもの)
・
・
というように本籍や戸主が変更していれば、これらの連続したものが必要です。
⑤ 母の現在の戸籍事項全部証明書(戸籍謄本)
次を参考にしてください。
被相続人と相続人の全員が台湾在住で台湾籍の方の相続登記(不動産名義変更)の方法(手順・必要書類・登記費用)
被相続人について必要な「出生から死亡まですべての除籍謄本」
日本人が被相続人の場合、「出生から死亡まですべての除籍謄本」を日本の役所で取得することができます。
(ただし、役所の火災などで焼失している、保存期間の経過などで取得できない例外はある。)
台湾籍の方が、被相続人の場合、日本と同様に、台湾にも戸籍制度があるので、日本の法務局も、台湾籍の被相続人についても「出生から死亡まですべての除籍謄本」を提出すべきとの認識です。
ところが、現在、台湾では個人情報の扱いが日本以上に厳しいため、除籍謄本ではなく、相続関係とは無関係の人を除いた除籍抄本(一部の証明)を発行するのが基本です。場合によっては、除籍謄本で発行してくれる役所(戸政事務所)もあるようです。
このような事情から、必ずしも、被相続人の「出生から死亡まですべての除籍謄本」を取得できるとは限りません。
以上のことから、次のような除籍戸籍証明書しか取得できない場合があります。台湾での相続は、これで手続ができます。
被相続人母についての除籍証明書を取得する場合
① 婚姻前の除籍証明書は、被相続人母に子がいなければ、母のみ記載の除籍抄本
→ 婚姻前に母に子がいたかどうかを確認できない。
この場合であっても、母のみ記載の除籍抄本を取得します。
母のみ記載の除籍抄本だから取得する必要はないと、自己判断してはいけません。
日本の法務局では、可能な限り、すべての戸籍証明書を取得するように言われます。
② 婚姻後に子ができた場合、父母、子の記載のある除籍謄本
台湾の税務署が発行する「遺産税免税証明書」
台湾の税務署では、相続税の申告があった場合、次のような内容の証明書を発行しています。
財政部台北国税局
遺産税免税証明書
発行機関:財政部台北国税局○○税務署
本証明書は、相続人の身分及び財産権を証明するために使用するものではなく、権利移転登記を主管機関に申請する際のみに使用するもの。
遺産税納税義務者 (氏名)○○ ○○
被相続人 (氏名)○○ ○○の遺産について申告が行われ、・・・
被相続人死亡年月日 〇年〇月〇日
相続人(または受贈者):計〇人 (氏名)○○ ○○
(以下、省略)
この証明書は、台湾の役所でのみ通用するもので、被相続人の「出生から死亡まですべての除籍謄本」がない場合、日本の法務局では通用しません。この証明書があるからといって、日本の法務局が相続証明書と認めるものではありません。(2025年 千葉地方法務局 いすみ出張所に提出)
相続人が海外に居住している外国人の宣誓供述書
被相続人が日本人で、相続人が日本人で海外で居住し、その外国の国籍を取得していて、もはや在外日本の大使館や領事館で、証明書を取得できないときは、どうすればよいでしょうか。相続人が海外に居住している外国人の場合も同じです。
このような場合は、外国の法律制度によって異なります。
例えば、アメリカの場合は、公証人がいますので、相続人が公証人のところに出向き、遺産分割の内容が、そのとおりであることを陳述して、公証人の認証のある証明書(宣誓供述書)を作成してもらいます。この証明書(宣誓供述書)を相続手続きに使用します。
特に、不動産の相続登記では、アメリカの公証人の作成した証明書は、英文なので、これを日本語に翻訳する必要があります。日本語に翻訳するときの翻訳者は、誰でも構いません。翻訳の資格のある人でなくても翻訳することができます。
ところで、海外に居住している相続人が、公証人の面前で陳述する内容は、そもそも、どのような内容のものを公証人に陳述すればよいのか、わからないのが普通です。たとえ公証人の証明書を用意したとしても、これが相続登記(不動産名義変更)に使用できなければ意味がありません。
そこで、海外に居住している相続人に、あらかじめ、こういう内容で公証人に陳述してください、という文章を送り、そのとおりに陳述してもらいます。
この文章は、遺産分割協議の内容であれば、これの日本文と英文を用意して、海外に居住している相続人に送ります。そうずれば、ほぼ間違いのない文章で、公証人が作成できます。

過去事例
遺産分割協議証明書(日本語)を外国に居住している「日本国籍離脱した元日本人(アメリカ国籍)」がアメリカ公証役場に持参し、公証人の面前で、この遺産分割協議証明書に署名したことを公証人が証明した「別紙の証明文(日本語に翻訳)」を付けて、法務局に提出したところ、相続登記が完了しました。(2023年、東京法務局立川出張所)
遺産分割協議証明書 被相続人○○(生年月日:昭和〇年(西暦○年)〇月〇日)が、平成〇年(西暦〇年)〇月〇日死亡したので、その相続につき、同人の相続人全員において遺産分割協議を行った。その結果は、下記のとおりである。 記 相続人 ○○ ○○は、次の遺産を取得する。 所 在 日本国東京都○○ 地 番 ○○番〇 地 目 宅地 地 積 ○○・○○平方メートル 被相続人○○の登記されている住所:○○と最後の住所の経過を証明することができませんが、被相続人○○がこの土地の名義人であることに相違ありません。 令和〇年(西暦〇年)〇月〇日 被相続人○○の相続人(日本国籍離脱前の氏名:○○) (住所)アメリカ合衆国○○ (氏名)(署名) 生年月日:昭和〇年(西暦〇年)〇月〇日 (別紙で、公証人の認証文を付けてもらう。)
また、日本にいるけれども、日本人と同じように、住民票と印鑑証明書が取れない人がいます。
例えば、日本にあるアメリカ軍の基地で軍属として働いている人です。
この人の場合は、アメリカ軍基地の中の権限のある部署で、同じように証明書を作成してもらいます。
実例:被相続人・相続人が台湾の方の相続登記
(1)2023年
被相続人 台湾籍
相続人 配偶者:台湾籍、長男・二男:台湾籍、長女:日本国籍(帰化)
台湾戸籍:3段階の認証がない
台湾戸籍の一部がない:上申書で対応
取得できるものを揃えて、登記完了(東京法務局・豊島出張所、練馬出張所)
(2)2023年
被相続人 台湾籍
相続人 配偶者:台湾籍、長男:台湾籍、二男・長女:日本国籍(帰化)
台湾戸籍:3段階の認証がある
台湾戸籍の一部がない:上申書で対応
取得できるものを揃えて、登記完了(さいたま地方法務局越谷支局・青森地方法務局むつ支局)
預貯金相続手続:埼玉りそな銀行・みずほ銀行・ゆうちょ銀行
次を参考にしてください。
台湾籍の方の相続:金融機関から「念書」や「誓約書」の提出を求められたとき
被相続人・相続人が台湾籍の相続登記・相続手続:実績
被相続人・相続人が台湾籍の方、その他外国国籍の方の相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成については、当司法書士事務所にご相談ください。
相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成について、当司法書士事務所にお気軽にお問い合わせください。
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