遺言書を作成した方がよい事例

遺言書を作成した方がよい事例

遺言書があれば

遺言書があれば

自筆証書遺言書や公正証書遺言書など、法律の規定に従った要式で遺言書を作成しておいた方がよいのは、次の場合などです。
遺言書の作成に当たっては、自筆遺言書作成講座(自分で遺言書を書いてみる)遺言書作成で注意点を参考にしてください。また、遺言書を公正証書で作成した方がよい事例も参考にしてください。

夫婦の間に子供がいない場合

夫婦の間(戸籍上の婚姻関係)に子供(第1順位の相続人)がいない場合、遺言書を残さないときには、法定相続によることになります。法定相続とは、法定相続分による相続のことをいいます。
第2順位の相続人・父母(祖父母)が死亡している場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。
この場合、法定相続によるときは、夫の財産は、妻が4分の3、夫の兄弟姉妹が4分の1の割合で相続します。
妻に財産を全部相続させたいときは、遺言書を書いておくことが必要です。
夫の兄弟姉妹には、遺留分がないので、遺言書を書いておけば、財産を全部、妻に相続させることができます。
この場合、妻に遺産全部を相続させたい場合、遺言書には、次のように記載します。難しいことはありません。
「私は、遺産全部を妻の○○に相続させる。」
この「遺産全部」の中には、不動産、預貯金、株式、車などすべての遺産が含まれます。
ただし、金融機関の貸金庫契約がある場合、妻を遺言執行者として、金融機関との貸金庫契約を解除し、貸金庫を開錠する権限を与える旨を記載しておきます。

夫婦に子がいない場合、できれば、公正証書遺言書で作成するのがベストです。この理由は、次のとおりです。
自筆証書遺言書が自筆証書遺言書保管制度による遺言書でない場合、家庭裁判所の検認手続が必要です。 夫婦に子(孫)がいない場合、父母(祖父母)もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人となりますが、この兄弟姉妹には遺留分がありません。
家庭裁判所の検認手続では、遺留分のない兄弟姉妹も家庭裁判所に呼び出されるからです。兄弟姉妹にも法定相続人として遺言書の検認手続に立ち会う機会を与えられます。

自筆証書遺言書保管制度による遺言書の場合、相続開始後、相続人が法務局に対して「遺言書情報証明書」を発行しますと、法務局は、ほかの相続人に対して遺言書を保管している旨を通知します。
そうしますと、ほかの相続人(遺留分のない兄弟姉妹)などに遺言書が作成されていたことが分かることになります。

なお、夫婦に子がいない場合、お互いに遺言書を作成するとよいでしょう。

内縁の妻がいる場合

長年夫婦として一緒に生活してきても、婚姻届けを出していない場合、内縁の夫婦は法律上の夫婦とはいえず、内縁の妻には相続権がありません。
内縁の妻に遺産(全部または一部)を残したい場合は、遺言書を書いておく必要があります。

内縁の妻の場合、遺言書には、「相続させる。」ではなく、「遺贈する。」と記載します。この理由は、「相続させる。」が「推定相続人(将来、法定相続人となる人)」の場合を言い、「遺贈する。」が「推定相続人以外の人」の場合に言うからです。
内縁の妻を遺言執行者とする旨も必ず記載します。貸金庫がある場合も必ず記載します。

できれば、公正証書遺言書で作成するのがベストです。この理由は、前述のとおりです。

内縁の妻に遺産全部を残したい場合、遺言書に記載する文言は、
「私は、○○に遺産全部を遺贈する。
内縁の妻に遺産の一部を残したい場合、遺言書に記載する文言は、
「私は、○○に次の遺産を遺贈する。」として、遺産の具体的な内容を記載します。
この場合、「別紙」に財産目録として記載することもできます。

内縁の妻に遺贈する場合の登記の方法は、相続登記と内縁の妻に遺贈を参考にしてください。

内縁の妻に遺産を遺贈する場合に注意する遺留分

被相続人の配偶者、第1順位の相続人の子(孫)、第2順位の相続人の父母(祖父母)には、遺留分がありますので、これらの相続人の遺留分を侵害しない範囲内で、内縁の妻に遺贈するのが、ベストです。
しかし、遺留分を侵害することになる場合であっても、遺贈することは可能です。この場合、遺留分を侵害された遺留分権利者(配偶者、子、孫、父母、祖父母)から遺留分侵害額請求権を行使される場合もあります。相続における遺留分と遺言の関係を参考にしてください。

子の妻に財産をあげたいとき

子が亡くなった後、子の妻が亡くなった夫の親の世話をしているような場合に、その妻にも財産をあげたいと思うとき、遺言書を書いておく必要があります。(遺贈)
あるいは、子の妻を養子にする、という方法で、その妻に相続させることもできます。

再婚をして、先妻の子と後妻や後妻の子がいる場合

先妻の子と後妻や後妻の子との間では、感情的になりやすく、遺産争いが起こる確率が高くなるので、少しでも相続人のためになるようにするには遺言書を作成します。

養子に配偶者がいるが、子がいない場合

養子に配偶者がいるが子がいない場合、遺言書を作成した方がよいでしょう。遺言書で「すべての遺産を配偶者に相続させる。」とすれば、この配偶者が遺産すべてを相続することができます。

この場合、養子の推定相続人が、この配偶者、養親の兄弟姉妹と実親の兄弟姉妹の場合、遺言書で「すべての遺産を配偶者に相続させる。」としておかないと、養親の兄弟姉妹、実親の兄弟姉妹も相続人となりますので、遺産分割協議がスムーズに成立しない場合は、面倒なことになります。
遺言書を書いておけば、両方の兄弟姉妹は相続できなくなります。兄弟姉妹に遺留分がありませんので。

相続関係図(被相続人が養子)

農業や個人事業を営んでいる場合

この場合、複数の相続人に財産を分けてしてしまうと、事業の継続が困難となる確率が高くなります。
そこで、家業を特定の者に承継させたい場合には、遺言書を書いておく必要があります。

推定(法定)相続人がいない場合

(推定)相続人がいない場合には、原則、遺産は国庫に帰属します。
このような場合に、お世話になった人に遺贈したいとき、お寺や教会、その他、寄付したいときには、遺言書を書いておく必要があります。

日本に居住する外国人の遺言書作成(遺産は日本)

日本に居住している外国人(外国籍)が、日本に不動産を所有していたり、預貯金の口座などがある場合があります。この外国人の配偶者が日本人ということもあります。
この場合、日本国内の相続手続をスムーズに行うには、遺言書を残しておいた方がよいでしょう。
なぜなら、外国人(例えば、アメリカ人)の場合、被相続人と相続人の関係を証明するなど、必要書類が多くなるからです。
できれば、公正証書遺言書で作成するのがベストです。

日本に居住する台湾人の遺言書作成(遺産は日本)

日本に居住している台湾人(台湾籍)が、日本に不動産を所有していたり、預貯金の口座などがある場合があります。この台湾人の配偶者が日本人ということもあります。
この場合、日本国内の相続手続をスムーズに行うには、遺言書を残しておいた方がよいでしょう。
なぜなら、台湾人の場合、台湾には戸籍制度がありますので、日本人の場合と同様に、基本的に、被相続人の出生から死亡までの戸籍証明書を台湾から取寄せる必要があります。
遺言書がない場合、日本人と同時ように、被相続人と相続人の関係を証明するなど、必要書類が多くなるからです。
できれば、公正証書遺言書で作成するのがベストです。
相続登記と相続人が外国人(台湾の方)