疎遠な・面識のない相続人が多数のため複雑かつ困難な数次相続登記の方法は?費用は?:相続登記相談
【相続登記相談】 被相続人:(相談者の)祖父、父、姉 相続財産:祖父 地方の土地10筆(評価価格:50万円) 父 地方の土地5筆(評価価格:50万円)(土地5筆に昔の抵当権が登記されている。) 姉 預貯金3金融機関 合計:100万円 相続人 20名(相談者を含む。疎遠な・面識のない相続人19名) このような相続財産、相続人の場合、どういう手順で相続登記や預貯金の相続手続を行い、手続完了までの日数と、依頼した場合の費用を教えてください。法定相続情報一覧図の証明書も取得したいと考えています。相続財産が少ないので、できるだけ手続にかかる費用を抑えたい。預貯金の相続手続は、自分で行います。
相続関係図
相続登記、預貯金相続手続完了までの問題点
相続人が20名いるので、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票を取得するのに時間がかかる。
土地5筆に昔の抵当権が登記されているので、現在の抵当権者がを調査する。どの段階で抹消登記をするのか。
疎遠な・面識のない相続人が19名いるので、どのようなアプローチ(手続の協力要請)をしたらよいのか。
法定相続情報一覧図の証明書は、被相続人全員か、それとも一部でよいのか。
被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票の取得にかかる日数
相続人が20名いるので、被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票を取得するのに時間がかかります。
「できるだけ手続にかかる費用を抑えたい。」ということですので、普通郵便での郵送請求をすることになります。
相続人が20名いるので、相続人すべてを確定するのに2か月はかかると思われます。
昔に登記された抵当権の抹消
土地5筆に昔の抵当権が登記されているので、現在の抵当権者がを調査する。どの段階で抹消登記をするのか。
昔の抵当権は、現在、効力のないものであっても、これを抹消登記しなければ、登記簿(登記記録)に登記されたままの状態となりますので、これを抹消登記します。ただし、現在の抵当権者が誰なのかによっては、抹消登記することが難しい場合があります。(抵当権者の相続人が多数で裁判をしなければ抹消登記ができないとき。費用もかかる。)
昔の抵当権を抹消登記するタイミングは、一連の相続登記が完了し、相続人名義にしてから、抹消登記をします。
疎遠な・面識のない相続人に対する協力要請
疎遠な・面識のない相続人が19名いるので、どのようなアプローチ(手続の協力要請)をしたらよいのか。
面識のない相続人に対しては、段階を踏んで、手続の協力要請をすることになります。
相談事例の場合、面識のない相続人に関係する相続財産の総額が少ないので(祖父・父の相続財産:100万円、姉の相続財産:100万円)、相続登記の協力金を支払うことになるでしょう。(協力金名目で支払った方が協力してくれる可能性が高くなります。)
法定相続情報一覧図の証明書の取得
法定相続情報一覧図の証明書は、被相続人全員か、それとも一部でよいのか。
祖父・父名義の不動産は、相続登記をしますので、法定相続情報一覧図の証明書を取得する必要がありません。姉の預貯金は3金融機関ありますので、法定相続情報一覧図の証明書を取得すれば、除籍・戸籍謄本を提出する必要がないため、法定相続情報一覧図の証明書を取得した方がよいでしょう。
数次相続と「法定相続情報一覧図の写しの証明書(法定相続情報証明)」の取得方法を参考にしてください。
相続登記・預貯金の相続手続の手順
被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票の取得
相続人を確定するため、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票を取得します。戸籍の附票には、住所が記載されていますので、相続人の住所が分かれば、相続人に対して手続の協力要請が可能となります。
まずは、相続人を確定することから始めますので、相続人確定までの期間は、約2か月と考えた方がよいでしょう。
疎遠な・面識のない相続人への協力要請
知っている相続人に対しては、まずは、電話などで事情を説明すれば、それほど難しくはなく、協力要請に応じてくれるでしょう。知っている相続人が親子の関係であれば、親から子に対して事情を説明してもらいます。
その次に、第2段階の協力要請の手紙を知っている相続人全員に郵送します。第2段階の手紙文には、遺産分割協議書を一緒に郵送することになります。
面識のない相続人に対しては、そもそも電話番号も知らないので、まずは、第1段階の協力要請の手紙を知らない疎遠な相続人全員に郵送します。
第1段階の協力要請で協力してくれることを確認しましたら、その次に、第2段階の協力要請の手紙を知らない疎遠な相続人全員に郵送します。第2段階の手紙文には、遺産分割協議書を一緒に郵送することになります。
疎遠な・面識のない・知らない相続人への相続登記等の協力要請文書(手紙文例)を参考にしてください。
疎遠な・面識のない相続人への協力要請を弁護士に依頼する場合
疎遠な・面識のない相続人への協力要請を弁護士に依頼したい場合は、弁護士報酬を支払うことになりますので、「相続に関すること」について、弁護士に依頼する?依頼しない?弁護士の「報酬」はいくらなのか?を参考にしてください。
遺産分割協議が整わない場合、遺産分割調停をすることになりますが、これを含めて弁護士に依頼する場合は、遺産分割協議が整わない場合の遺産分割調停を参考にしてください。
相談事例の場合、相続財産が200万円(祖父・父:100万円、姉:100万円)と少ないため、まずは、弁護士に依頼しないで、ご自分で遺産分割協議が成立するようにした方がよいでしょう。
相続登記と預貯金の相続手続にかかる実費(主なもの)
被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票の取得にかかる実費
被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票の取得は、相続人が20名いますので、除籍・戸籍謄本、戸籍の附票の手数料(役所)と郵送料で、5万円はかかると思われます。
手続に協力してもらうためにかかる費用
知っている相続人全員・知らない疎遠な相続人全員に対して、手紙文・遺産分割協議書を個別に郵送することになりますので、郵送料がかかります。また、協力金も支払うことになりますので(印鑑証明書を取得してもらう。)、これら全員にかかる費用も、それなりの金額となります。
今回、面識のない疎遠な相続人に協力してもらう被相続人の祖父・父の不動産の評価価格が100万円のため、例えば、協力金を2,000円から5,000円で設定します。(合計:2万円から5万円)
この10名への送金料として、500円×10名=5,000円
さらに、この10名に手紙文を第1段階、第2段階の2階に分けて郵送します。この手紙文の郵送料として、(140円+370円)×2×2×10=20,400円
知っている相続人には、第2段階の手紙文を郵送します。この手紙文の郵送料として、(140円+370円)×2×19=9,180円
相続登記の登録免許税
不動産の評価価格は、土地1筆当たり100万円以下の場合は、非課税となりますので、相続登記の登録免許税がかからないことになります。
昔の抵当権を抹消する場合の登録免許税
抵当権を抹消登記する場合、抹消する土地1筆について1,000円です。
抹消する土地が5筆ありますので、5,000円かかります。
登記簿(登記記録)の確認と、完了後の登記事項証明書の取得費用
登記簿(登記記録)の確認に、332円×15筆=4,980円。
完了後の登記事項証明書の取得に、480円×15筆=7,200円。
昔の抵当権を抹消する場合、抵当権者へ登記事項証明書を渡す必要性がありますので、480円×5筆=2,400円。
司法書士に依頼した場合の費用(相続登記費用)は?
司法書士報酬(円) | 実費(円) | |
除籍・戸籍謄本など取得 (手数料・郵送料) | 30,000 | 50,000 |
手続協力にかかる費用 | ||
【面識のない相続人】 | ||
①協力金+送金料 | 10,000 | 55,000 |
②第1・第2手紙文郵送料 | 20,000 | 20,400 |
【知っている相続人】 | ||
①第2手紙文郵送料 | 10,000 | 9,180 |
法定相続情報一覧図取得 | 10,000 | 0 |
相続登記 基本報酬:55,000 追加報酬 ① 5物件:10,000 ② 数次相続2件 20,000×2 | 105,000 | 0 |
抵当権抹消 | 10,000 | 5,000 |
登記記録情報確認 | 4,980 | |
登記事項証明書(完了) | 7,200 | |
抹消用・登記事項証明書 | 2,400 | |
小計 | 195,000 消費税:19,500 | 154,160 |
合計:368,660円 |
疎遠な・面識のない相続人の相続登記完了までの日数
- 被相続人の除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、戸籍の附票の取得:約2か月
- 疎遠な・面識のない相続人への協力要請
(1)第1段階の面識のない相続人への手紙文郵送・返信:1か月
(2)第2段階の面識のない相続人と知っている相続人への手紙文(遺産分割協議書)郵送・返信:1か月 - 相続登記:1か月
- 抵当権抹消登記:1か月
以上、疎遠な・面識のない相続人の相続登記完了までの日数は、手紙文の作成などを含めますと、早くとも6か月はかかると思われます。(2023年、前橋地方法務局富岡支局で手続完了)
数次相続登記の方法は?
数次相続登記の方法は、次を参考にしてください。
数次相続登記の方法(基本)
数次相続と1件申請による相続登記の方法
数次相続と遺産分割調停書記載事項
数次相続登記(遺産分割協議が2回必要な場合)
数次相続と相続登記の方法
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