相続人が子一人の相続登記と預貯金相続手続の方法
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
【相続登記相談】
被相続人は母で、父は、すでに死亡しています。相続人は娘の私一人です。
相続財産は、母が住んでいた母名義の土地・建物と預貯金金融機関3か所です。
土地・建物は、私が住んでいる横浜市神奈川区とは別の場所(川崎市川崎区)にあります。固定資産評価価格は、土地が1,000万円、建物が200万円です。
預貯金(合計:1,500万円)は、ゆうちょ銀行が500万円、ほかの銀行が2か所あり、それぞれ500万円です。
母の死亡時の住所・本籍地:川崎市川崎区
娘の住所・本籍地:横浜市神奈川区
この場合、どういう手順で手続を進めれば、素人の私でも、不動産の相続登記と預貯金の相続手続をスムーズに行うことができますか。詳しく教えてください。
また、もし、これらの手続を司法書士に依頼した場合、費用がいくらかかるかということも教えてください。
手順:相続人が子一人の相続登記と預貯金相続手続
事例の場合、相続人が娘一人なので、相続人が誰で、法定相続分がいくつかを考える必要がありません。そこで、次の手順に従って手続を進めていくことになります。
(1)必要書類(相続登記と預貯金相続手続)の取得・準備
(2)相続登記の申請、同時に、法定相続情報証明書の申出
(3)ゆうちょ銀行を含めて銀行3か所の預貯金相続手続(解約払戻し)
(1)必要書類(相続登記と預貯金相続手続)の取得・準備
被相続人母と相続人娘の、不動産の相続登記と預貯金相続手続に必要な書類を取得・準備します。
被相続人母と相続人娘の戸籍関係書類のほか、次の書類を取得・準備します。
被相続人母の必要書類
① 母の除籍謄本(出生から死亡まで全部)各1通
② 母の住民票除票(本籍地記載必須) 1通
相続人娘の必要書類
③ 戸籍謄本 1通
④ 住民票 1通
⑤ 印鑑証明書 1通(銀行の相続手続で使用します。発行日から有効期間6カ月)
不動産の相続登記で使用する書類の準備・取得
⑥ 不動産の権利証
⑦ 固定資産税納税通知書・課税明細書原本
⑧ 土地建物の登記事項証明書(登記簿謄本)と公図
必要書類(相続登記と預貯金相続手続)の具体的な取得方法
戸籍謄本・除籍謄本・住民票・印鑑証明書の取得方法
事例の場合、まず、娘が、住所地の横浜市神奈川区役所に出向きます。
持参する物は、次のとおりです。
① 運転免許証・マイナンバーカードなど写真付き身分証明書
② 認印
③ 母についての情報:氏名・本籍・生年月日・死亡日
過去の戸籍謄本があれば参考に持参する。
④ 印鑑カード(印鑑証明書を取得するために必要)
先に、娘が、自分の次の書類を取得します。
③ 戸籍謄本 1通
④ 住民票 1通
⑤ 印鑑証明書 1通
→ 預貯金の金融機関が3か所ある場合、後述の法定相続情報証明書を3通、印鑑証明書を3通取得すれば、金融機関の手続を同時に行うことができます。手続完了までの時間を短縮できます。
次に、同じ横浜市神奈川区役所の窓口で、母の除籍謄本を「戸籍証明書等の広域交付」で請求する旨を伝えます。
① 母の除籍謄本(出生から死亡まで全部)各1通を取得します。
母の出生から死亡までの除籍謄本は、本籍が川崎市川崎区など娘の住所地以外の場合であっても、「戸籍証明書等の広域交付」の方法で全部取得することができます。
取得方法は、「戸籍証明書等の広域交付」のページでご確認ください。
広域交付で取得する除籍謄本は、3時間くらいかかる場合があります。あるいは、翌日交付となります。
その後、川崎市川崎区役所で
② 母の住民票除票(本籍地記載必須)1通を取得します。
母の住民票除票を川崎市川崎区役所で、直接、取得するか、郵送請求します。
直接、取得する場合は、次の書類などを持参します。
① 母の除籍謄本
② 娘の戸籍謄本
③ 身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
④ 認印
郵送請求する場合は、次の書類などを郵送します。
① 母の除籍謄本コピー
② 娘の戸籍謄本コピー
③ 身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)コピー
④ 住民票除票請求書(川崎市川崎区のホームページからダウンロード・プリントアウト)
⑤ 定額小為替(料金は、川崎市川崎区のホームページで確認)
⑥ 返信用封筒
⑧土地建物の登記事項証明書(登記簿謄本)と公図
横浜地方法務局神奈川出張所(日本全国どこの法務局でも取得可能)で、土地建物の登記事項証明書を取得します。
この取得は、権利証に記載されている「不動産の表示」や「固定資産税納税通知書・課税明細書」に記載されている「不動産」で確認します。
取得する理由は、次のとおりです。
① 相続登記する不動産(が何か)を特定する。
② 公図で、敷地のほかに、私道などがあるかどうかを確認する。敷地の周辺の地番で確認する。
不動産の特定方法については、次のページを参考にしてください。
相続不動産の特定の方法(土地)
相続不動産の特定方法(マンション)
相続登記をした後、登記漏れの不動産を発見したときの登記の方法
意外と重要な「相続登記申請前の不動産の確認」と「相続登記完了後の登記内容の確認」方法
相続登記(不動産名義変更)で不動産の特定と内容を確認する方法
③ 現在の名義人を確認する。
母名義であることを確認する。「登記されている母の住所」を確認する。
母の住民票除票(本籍地記載必須)に「登記されている母の住所」が記載されていることを確認する。
もし、記載されていない場合は、過去の住所地の住民票除票(本籍地記載必須)や戸籍の附票を取得する。
それでも、住所のつながりが証明できないときは、「権利証原本」を法務局に提出(原本還付)する。
被相続人の最後の住所証明書を取得する理由を参考にしてください。
⑦固定資産税納税通知書・課税明細書原本
課税明細書に記載されている「評価価格:価格・評価額」で登録免許税を計算します。
登録免許税=評価価格×0・4%
事例の場合、
1,000万円(土地)+200万円(建物)=1,200万円
1,200万円×0・4%=48,000円(登録免許税)
(2)相続登記の申請、同時に、法定相続情報証明書の申出の方法
法定相続情報証明書の取得は、必ずしも必要ありませんが、この証明書があった方が、預貯金の相続手続をスムーズに行うことができます。預貯金の金融機関が3か所ある場合、法定相続情報証明書を3通(何通取得しても無料)、印鑑証明書を3通取得すれば、金融機関の手続を同時に行うことができます。手続完了までの時間を短縮できます。
次の